(完結)猫嫌いの貴方とはさようなら。猫が足りないから婚約破棄してみせるわ

コーヒーブレイク

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 どこにでもいる伯爵令嬢の一人である私に、第一王子、ワオンとの婚約の話が出たときはおどろいた。
 こういう婚約者って幼少の頃から決まっているものだとばかり思っていたから。

 父も母も大喜び。ワオンは次期国王が約束されているも同然。やったー、って感じだった。
 私もやったー、って感じだった。ワオンは威張ってなくて優しいし、頭もいいし、顔もいい。王妃になった未来の自分を想像して、よし、よし! ってガッツポーズまでした。
 自分で言うのもなんだけど、私の見た目は悪くない。求婚されたのも初めてじゃないけれど、実家で飼ってる猫に夢中だったから断っていた。だって私、まだ十六だもの。

 ワオンは二十一歳。私から見れば大人の男性だった。
 だから婚約者として初めて王宮に住むことになったとき、

「猫を飼いたい」

 ってお願いした。そうしたら、ワオンは

「ね、ねねねねねねねねねねね猫おおおおお!?」

 と言って、今までの爽やかな笑顔を引っ込め、一転して険しい顔になり「猫はだめだ」と言い放ったのだ。

「どうしてですか。犬は王宮内を自由に動き回っているのに、なぜ、猫はだめなのですか? 可愛いからですか」

「ニーナ、僕は猫嫌いなんだ。猫アレルギーでもある。ほら、ねこ、というワードを発してしまったために、腕にじんましんができている。ニーナ、君も王宮で暮らす以上、そのワードを発しないよう気をつけてくれ。これは命令だ」

「猫は可愛いです」

「だめだ」

 このやりとりで、私は第一王子との婚約を辞めようと思った。猫と王妃の椅子、優先順位の問題だ。どちらが優先されるかは明白。

 ただ伯爵令嬢である私が自分から「婚約を取り消してくれ」とは言えない。
 だから私は馬鹿の振りをすることにした。
 貴族とは思えない下品な振る舞い。おならを人前でするなんて恥ずかしくて死にそうだったけれど、猫のためなら仕方がない。

 王子が猫嫌いになったのは、幼少の頃、帝王学を叩きこまれ、へとへとになったとき、唯一の楽しみにしていたおやつのショートケーキを、窓から侵入した野良猫に持っていかれたからだと風のうわさで聞いたが、そんなことはどうでもいい。

「自分の部屋でじっくり味わおうと思っていたのに、手を洗っている隙に野良猫にもっていかれた。その時おやつは一日一個と決まっていたので代わりがもらえなかった」

 とか、ワオンは言っていたような気がするが、どうでもいい。

 猫を見られない生活なんて考えられない。

 ここまでワオンが猫嫌いだと、国から猫を排除する、とか、国王になったら言い出すのではないかと少し不安に思ったが、ワオンは聡明だ。国に猫好きがたくさんいることも知っている。そんな極端な命令はしないだろう。
 そもそもそんな命令だしたら猫派の暴動が起きる。
 国が崩壊するだろう。
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