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ひと芝居
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「ではごきげんよう、ジュリア伯爵令嬢。お前達、彼女をちゃんと屋敷まで送り届けるんだぞ」
そう言い残して、シャルルはミゲルとともに木立の中に去って行ってしまった。
「そんな……ミゲルに何をしたの? これからミゲルに何をしようって言うの?」
ジュリアは取り乱して、普段の言葉遣いも忘れ、その場に残ったシャルルの護衛たちに尋ねた。
シャルルの護衛たちは、至極冷静に、
「ジュリア様がお気になさるようなことではありません。さあ、屋敷に戻りましょう。あちらに魔法馬車を用意してあります。シャルル殿下のご命令なんですから、我儘を言わないで下さいよ」
と言って、ジュリアに歩くよう促した。どこか軽んじられている口調だわ、とジュリアは思った。もうジルベール王太子の婚約者でなくなったわたくしには、用がないのね。
ジュリアは考えた。
あのシャルル殿下の言葉から言って、ミゲルは王宮で酷いことをされるに違いない。ミゲルの魔力を封印したとも言っていた。魔力を封印されて、魔法が使えなかったら、あのトカゲ一匹怖がる彼は、シャルル殿下に太刀打ちできないだろう。
きっと彼は、昔飼っていた犬みたいに泣き出すに違いない。
わたくしが、なんとかしなければ……。魔法が使えない彼のために……。
「さあ、ジュリア様、馬車にお乗りください」
シャルルの護衛が、いかにも事務的に、ジュリアを馬車へエスコートした。ジュリアははっとした。
ミゲルは銃で撃たれてからずっと、何かを呪文のようなものを唱えていた。そして、最後に湖に向かって、何か叫んでいた。ジュリアには聞き取れなかったが、あれは……。
ジュリアは七年前のことを思い出し、もしや、と思った。そして、決心した。
「いたたたたたた! 痛いですわ!」
「ど、どうしたんですか、ジュリア様!」
ジュリアは腹を押さえて、その場にしゃがみ込んだ。
「お、お腹が急に、とっても、痛いですわ! とても我慢できません! わたくしちょっと茂みの中へ行きますので、戻ってくるまで絶対に覗かないで、声を掛けたりしないで下さいね!」
一世一代の芝居を打ち、ジュリアは喚きたてた。
「し、しかしジュリア様、シャルル殿下に無事お屋敷にお送りするよう我々は命令されて……」
「んまーーあ! 察しが悪いです事! 妙齢の女が腹が痛いと言ったらアレですのよアレ! 気がつかないなんて殿方失格ですわ!」
「はっ……、も、申し訳ありません……では、我々はここでお待ちしておりますので」
言葉の内容よりもジュリアの剣幕に押された形で、シャルルの護衛たちは身を引いた。ジュリアは最後に一言、
「絶対に覗かないで下さいましよ!」
と言って、茂みの中に入って行った。
護衛の者が追ってこないのが分かると、ジュリアはもとの湖の場所へ全力疾走した。
ミゲルは湖に向かって、何か呪文を叫んでいた。あれはきっと――。
そう言い残して、シャルルはミゲルとともに木立の中に去って行ってしまった。
「そんな……ミゲルに何をしたの? これからミゲルに何をしようって言うの?」
ジュリアは取り乱して、普段の言葉遣いも忘れ、その場に残ったシャルルの護衛たちに尋ねた。
シャルルの護衛たちは、至極冷静に、
「ジュリア様がお気になさるようなことではありません。さあ、屋敷に戻りましょう。あちらに魔法馬車を用意してあります。シャルル殿下のご命令なんですから、我儘を言わないで下さいよ」
と言って、ジュリアに歩くよう促した。どこか軽んじられている口調だわ、とジュリアは思った。もうジルベール王太子の婚約者でなくなったわたくしには、用がないのね。
ジュリアは考えた。
あのシャルル殿下の言葉から言って、ミゲルは王宮で酷いことをされるに違いない。ミゲルの魔力を封印したとも言っていた。魔力を封印されて、魔法が使えなかったら、あのトカゲ一匹怖がる彼は、シャルル殿下に太刀打ちできないだろう。
きっと彼は、昔飼っていた犬みたいに泣き出すに違いない。
わたくしが、なんとかしなければ……。魔法が使えない彼のために……。
「さあ、ジュリア様、馬車にお乗りください」
シャルルの護衛が、いかにも事務的に、ジュリアを馬車へエスコートした。ジュリアははっとした。
ミゲルは銃で撃たれてからずっと、何かを呪文のようなものを唱えていた。そして、最後に湖に向かって、何か叫んでいた。ジュリアには聞き取れなかったが、あれは……。
ジュリアは七年前のことを思い出し、もしや、と思った。そして、決心した。
「いたたたたたた! 痛いですわ!」
「ど、どうしたんですか、ジュリア様!」
ジュリアは腹を押さえて、その場にしゃがみ込んだ。
「お、お腹が急に、とっても、痛いですわ! とても我慢できません! わたくしちょっと茂みの中へ行きますので、戻ってくるまで絶対に覗かないで、声を掛けたりしないで下さいね!」
一世一代の芝居を打ち、ジュリアは喚きたてた。
「し、しかしジュリア様、シャルル殿下に無事お屋敷にお送りするよう我々は命令されて……」
「んまーーあ! 察しが悪いです事! 妙齢の女が腹が痛いと言ったらアレですのよアレ! 気がつかないなんて殿方失格ですわ!」
「はっ……、も、申し訳ありません……では、我々はここでお待ちしておりますので」
言葉の内容よりもジュリアの剣幕に押された形で、シャルルの護衛たちは身を引いた。ジュリアは最後に一言、
「絶対に覗かないで下さいましよ!」
と言って、茂みの中に入って行った。
護衛の者が追ってこないのが分かると、ジュリアはもとの湖の場所へ全力疾走した。
ミゲルは湖に向かって、何か呪文を叫んでいた。あれはきっと――。
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