(完結)異世界から召喚したアンドロイドに婚約者を取られたけれど、言い寄ってくる魔導師が可愛い

コーヒーブレイク

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水の天馬

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 ジュリアは湖に戻った。

 誰も追ってきてくる気配はない。辺りはさっきまでの騒ぎが嘘のように、静かだった。

 目の前の湖も、何も物言わない。

「わたくしの……思い違いだったのかしら。いいえ、ミゲルは確かに、湖に向かって魔法の呪文を……」

 ジュリアは湖に近寄ろうと一歩踏み出した。すると、つま先に振動が伝わってきた。
 揺れている!?

 そう思っているあいだに揺れはどんどん大きくなり、ジュリアは踏ん張らなければ立っていられないほどだった。

 やがて、目の前の湖面が盛り上がったかと思うと、水しぶきとともに、大きな何かが湖から姿を現した。
 水でできた翼が、太陽の光を受けて、七色にきらめく。

 ――水の天馬ペガサスだ!

「やっぱり、ミゲルは湖に魔法をかけていたのね!」

 ジュリアの予想は当たった。

 七年前のあの日、ミゲル少年は助けてもらった礼として、魔法で、ジュリアに小さな水の天馬を見せてくれた。そのとき彼は、
「今はこんな小さな馬しか出せないけど、大人になったら、もっと大きな馬を出せるくらいの魔導師になるよ」
 と、言っていた。……まあうろ覚えだけれど。

 今の、大人の彼なら湖から大きな水の天馬を生み出せるはず、湖に向かって叫んだのは、そのための呪文だったのではないか……と、ジュリアは考えたのだ。

 そして、そのジュリアの考えは当たった。
 目の前には、翼を持つ、巨大な水でできた馬。

 この馬に乗って、ミゲルを助けにいけるかも。いや、ミゲルはきっと、それを望んでいる。自分の救出を、わたくしに託したのよ。

 ジュリアは勝手にそう思うことにした。

 が、水の馬は翼をはためかせ、今まさに飛び立とうとしていた。水しぶきと突風が、ジュリアを襲う。

「えっ? わたくし、まだ、乗っていないのよ?」

 ジュリアは慌てて水の馬の尾っぽにしがみついた。すると痛かったのか、不快だったのか、天馬は尾っぽを振り回した。ジュリアは空中に投げ出される。
 一回転して、どすんと着地したかと思うと、偶然にも天馬の背の上にいた。振り落とされなくて済んだようだ。
 天馬の体はすべて水でできているのに、ジュリアは沈むことはなく、たてがみにしがみつくことができた。

「お願い、水の天馬ペガサスさん! わたくしを、ミゲルのところへ連れて行って!」

 ジュリアはしがみつきながら、天馬に叫んだ。すると、

『もとよりそのつもりだ。私は我があるじミゲル殿の元へ。ついて行きたいなら勝手にしろ』

 天馬は低い声でジュリアに答えた。

 この水の馬、しゃべった!

 話しかけておいて、ジュリアは驚いていた。魔法って、すごい。

『行くぞ、女。せいぜい落ちないようつかまっていろ』

 水の馬はそう言うなり、空高く飛び立った。
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