パパ活始めました!

ももがぶ

文字の大きさ
12 / 18
第一章 初めてのパパ活

第12話 追いかけられるのは好きじゃない

しおりを挟む
「俺に用はない」
「そうですか。ですが、私にはあるんです」

 ジンより頭一つ小さいその紳士はジンに近寄ると右手を差し出し握手を求めるが、ジンはそれを無視して横を通り過ぎようとする。だが紳士は差し出した右手を戻しながらジンを睨みそうはいかないとジンを引き留める。

「なら、ここで話せ」
「分かりました。では、単刀直入に伺いましょう。あなたは先日、子供を保護されたとか」
「ああ、それがどうした」
「おぉ! これは話が早い」

 ジンは紳士に対し正直に話す。別に正直に言う必要もなかったのだが、実際に子供と一緒にいるのは見られているので下手に嘘を付くよりは正直に話して相手の出方を様子見しようと考えていた。

 紳士はジンが認めたのなら、話が早いとばかりに手を叩き先程とは違い破顔した様子で両手を揉みながらジンに顔をズイッと近付けてくる。

「その子供を私に返して頂けますか?」
「なんでだ?」
「おや、なんでとはまた面妖な。その子供は私が購入した奴隷なのですよ」
「お前こそ、なんでその子供がお前の奴隷だと言えるんだ? 何か証明する物はあるのか?」
「くっ……いいでしょう。ならば改めて証拠を持って伺わせて頂きます。それまで、その子供はあなたにお預けしますので、くれぐれも大事に扱って下さいよ」
「ふん! 知るか」
「くっ……とにかく、私の物なのですから、それをお忘れなく。失礼します!」
「あぁ」

 紳士は苛立ちを隠すこと無く踵を返すと冒険者ギルドから出て行く。

 するとジュリアがジンの横に立ち「何か揉め事ですか?」と聞いてくるが、ジンは必要以上に近付いて来るジュリアのその顔を右手で遠ざける。

「あん、もう!」
「とにかく、アイツがまた何か言ってきても俺には関係ないことだ」
「冒険者ギルドとしては、無視出来ないことなんですが……」
「知るか。適当に相手すればいいだけだろ」
「ま、それもそうなんですけどね。じゃ、お昼ランチに行きましょうか?」
「は? 何言ってんだ? 俺は家に帰るぞ」
「えぇ!」
「じゃあな」
「もう!」

 紳士を見送ったジンの側に立ったジュリアは様子を窺いつつサラッとお昼ランチに誘うがサクッと無視され地団駄を踏めば、カウンターの向こう側の同僚達から「ぷっ!」と漏れ聞こえてくる。

 冒険者ギルドを出たジンはさっきからずっと自分に対する視線を受けながらも、それを気にする素振りも見せずに串焼き屋の屋台に立ち寄る。

「おっちゃん、これに載せてくれ」
「はいよ。何本だい?」
「そうだな。五〇で」
「あいよ。なら、焼き上がるまでちょっと時間を貰うぞ」
「ああ、いいよ。俺もちょっと暇潰ししてくるから」

 ジンは子供達への土産としていつもの串焼き屋の屋台で注文を済ませると、屋台から離れた薄暗い路地へと入り込むと同時に小走りで駆け出せば、すぐ後ろからタッタッタと駆け足の足音が聞こえてくる。

「足音は三人か……」

 聞こえてくる足音と気配から、自分を尾行している人数を割り出すと「この辺でいいか。ハァ~面倒くせぇ」と周囲に人気ひとけがないことを確認してから振り返る。

「ここなら、いいだろ。顔を見せろよ」
「「「……」」」
「見せないなら、俺は行くぞ」
「待てよ。そう焦るなよ」
「だよな。もう少し楽しみたかったんだがな」
「案外、自信過剰? もしかして一人でなんとか出来るとでも?」
「いいから、用件を言え」
「へぇ……まあいい。早く旦那に返せばお前も痛い目に合わずに済む」
「俺は抵抗してもらった方がいいんだけどな」
「俺達三人を相手に勝てるとでも? ははは、お前いいねぇ」
「話はそれだけか? 子供の話なら証拠を確かめてからだと、アイツには言ったハズだがな」
「そんなのは必要ねえんだよ!」

 ジンが物陰に隠れている尾行していた連中に声を掛ければ、ゾロゾロと三人のチンピラが姿を見せる。ジンは三人に対し用を尋ねれば、思った通りに子供を出せと言うので、それは証拠を確認してからだと言ったハズだがと返せばチンピラの一人が「必要ねえ」と右手に隠し持っていた片手剣を振りかぶる。

 他の二人はそれを見ても慌てることなく「殺すなよ」と声を掛ける程度だったが、ジンからすればそれは遅すぎて避ける必要性も感じなかったので、左手でその刃を受け止める。

「あれ? あ……くそ!」
「おいおい、何やってんだよ。だらしねぇなぁ」
「ふはは、笑えるぅ」
「いいから、早くお前らも手を出せよ!」
「……おい、マジなのかよ」
「へぇなんだよ。楽しそうじゃねぇか。おら!」

 ジンが片手剣を掴んだままでいるが、その片手剣をどうやってもジンの手から逃れられないチンピラが自分を見て笑っている仲間二人に加勢を求めると、ニヤついた顔で様子見していた二人の顔付きが変わる。

 一人は驚愕し、一人は面白いことになったとばかりにナイフを手にジンに襲いかかるが、ジンはそれを右手で掴むと、残った一人が「そのまま離すなよ」と言いジンに向け刃物を向け突っ込んで来る。ジンが焦ることなくそのチンピラの顎を目掛けて前蹴りを放てば、そのチンピラは「ぐえ……」とだけ声を発し気を失う。

「で、お前達はどうする? このまま続けるか? それとも……」とジンが両手に力を込めれば「ピシッ!」とそれぞれが持っている片手剣とナイフの刃が崩れ落ちる。

「「あ!」」
「これで、手持ちの武器はなくなったな。ほら、どうするんだ?」

 ジンは手に持っていた刃をチンピラ二人に投げ付ければ、チンピラ達は逃げだそうと踵を返すが「忘れ物だ」とジンが寝ているもう一人をその背中に投げ付ける。

「「うぐっ……」」
「ぐあっ……」

 ドサッと地面に転がる三人に対し、ジンは「全ては証拠を確認してからだと、ちゃんと言っておけ」とチンピラ三人に告げれば、チンピラ達はコクコクと頭を縦に振り、その場を後にする。

「で、お前はどうするんだ?」
「……」
「隠れているつもりだろうけどな、殺気が漏れすぎだ」
「……」
「顔を見せないつもりなら、雇い主にはちゃんと伝えるんだな。じゃあな、俺は行くぞ」
「……」

 ジンは恐らくあの三人の監視役だと思われるもう一人の監視者に声を掛けるが、ソイツは姿を見せることもなかったのでジンは「面倒くせぇ」と踵を返しお土産を回収しに屋台へと戻る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...