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第一章 転生先は……どこ?

第十五話 自分で憶えたのよ

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「それで長老、今日は何を教えてくれるの?」
『ああ、それなんだがな……』
アビーの質問に対し、長老は少し勿体つける。
「何? 難しいの?」
『まあな。ワシでも習得するのに時間が掛かった』
「へぇ~長老がね。それでどんなの教えてくれるの?」
『ふふふ。聞いて驚け、それはな……』
「それは……?」
『それはな、『転移魔法』じゃ! ん? なんじゃ、随分と反応がうすいな?』
「え? そ、そんなことはないよ。うわぁ~たのしみだなぁ~」
『なんか、随分と棒読み感が凄いんじゃが……まさかな。まあいい。じゃあ、先ずはだ……』

『ぷ……ダメよ。ポポ』
『く……だって、ピピが……』
『え~私のせいなの? それなら、一番悪いのはアビーじゃん!』
『あ、もうダメ。あ~ははは。黙ってられない!』
『ププ、ダメだって! ぷっ……ははは』
『ポポまで。もうアビーと秘密だって約束したでしょ!』
浮かんだまま、器用にお腹を抱えて転げ回るポポ達を見て、長老ははて? と思うが、アビーの様子とポポ達の『アビーとの約束』というのが引っかかる。

長老はアビーと目線を合わせた高さで浮かんでいる。
そして、アビーはと言えば、長老からの真っ直ぐな視線を逸らすことが出来ずに冷や汗が流れる。
『さて、アビーよ。ちょっと、聞きたいことがあるんじゃが、正直に答えてくれるかな?』
「な、なんのことかな?」
『惚ける気か……まあ、いい。それで、転移魔法は楽しかったか?』
「うん、凄いよね。転移魔法って……あ!」
『そうか。転移魔法は習得済みか……ワシがアレを憶えるのにどれだけ苦労したと……』
「えっと……なんかごめんね長老」
アビーの正面で落ち込む長老に掛ける言葉が見付からず、とりあえず謝るアビーだが、長老はすぐに顔を上げる。
『なぜじゃ! なぜ使える? いや、そもそも転移魔法なぞ、ということすら知られていないハズじゃ!』
「え~答えないとダメ?」
『当たり前じゃ! さあ、言え! 言うのじゃぁ!』
「もう、ツバが飛んでるよ。汚いな~」
『そんなことはどうでもいい! 早く言うんじゃ!』
「分かったよ。あのね……」

迫ってくる長老に抗いきれず、アビーはぽつり、ぽつりと話し出す。
「あのね、正確には『転移魔法』じゃないんだ」
『転移魔法ではないと?』
「うん。言うなら、『どこでもドア』……じゃ通じないか。え~と、『転移ゲート』かな」
『転移ゲート?』
「そう。こんな感じで……」
アビーは直径十センチメートルほどの転移ゲートを発動させると、その中に右手を入れる。
そして、アビーの右手は肘から先が消えたように見える。
『アビー、右手はどうした?』
長老が慌てていると、長老の肩が後ろからトントンと突かれる。
『なんじゃ、もう今は相手してやれん!』
長老は肩から、それを払うがしつこく背後から肩を突かれるので、振り向くとそこには肘から先だけのアビーの右手があった。
『ん? アビーの右手……でも、アビーの腕は……』
転移ゲートから、右手を引き抜いたアビーは長老に言う。
「こういう魔法なの。転移魔法と似たような感じでしょ?」
『あ、ああ。驚いた。確かに転移魔法とは違うな。だが、どうやって?』
「やっぱり、そこは気になるんだね」
『当たり前じゃ! 転移魔法は元素魔法とは違って、使える精霊も少ない。だから、お前に教えることが出来る奴もいないはずだ』
「そう。でもね、転移魔法と違って転移ゲートの魔法はとっても簡単なんだよ」
『そんなことはどうでもいい。どうやって憶えたかを教えるんだ』

長老には正直に言ったつもりだけど、『どこでもドア』じゃ分かってもらえなかったアビーはどうやって説明しようかと悩む。

実際、アビーは『どこでもドア』があれば便利だなぐらいに思って、試してみたら出来たってことなので、説明しようがない。

「もう、長老。しつこい!」
『それはアビーがちゃんと言わないからじゃ!』

『長老、アビーは嘘ついてないよ!』
『そうだよ。さっきから本当のことしか言ってないよ』
『うん。あの魔法はアビーが思い付いたのと瞬間に出来たもん!』
『……本当なのか、アビー?』
「うん。そうだよ。だから、僕はさっきから本当のことしか言ってないよ」

アビーの言っていることをやっと理解した長老はそれならとアビーにお願いする。
「分かったよ」

『アビー、やっと会えたわ……って、なんで顔だけなの?』
「ごめんね、ディーネ。雨の中、出歩くことは出来ないの」
『もう、アビーを困らせないの』
『でも、シルフィーだって、寂しいって言ってたじゃない!』
『そりゃ、寂しいわよ。でもね、親との約束を大事する子だから私達も好きになったんでしょ』
『そりゃそうだけど……もう、分かったわよ。でも、もう少しお話しさせてよ。そのくらいいいでしょ』
『うふふ。そうね、それにお話したいのは私達だけじゃないみたいよ。ほら』
『あ、ノム爺にサラまで。もう、私一人だけだったのにぃ~』
『それは、お前さんが騒ぐからさ』
『そうだぞ。こんな、狭いところで騒げば気付くってもんだ』
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