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第二十話 訳を話しました

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 メイドさん達が目を覚ましたので、フク達にも遊びは止めて、一緒に話を聞いてもらう。
「お疲れ」
 アンナに声を掛けると、一瞬イヤそうな顔をする。
「最悪!」
「あんなつまらない理由だったの!」
「反吐が出る」
「両親達はどうなったの?」
「私、なにも悪いことしてないのに……」
 起き上がったメイドさん達がそれぞれに感想をもらす。

「シン、あなたが言いたいことは分かったわ。でも、それとこれは別よ」
「だが、オリヴィアは……」
「そうよ! 別って言いたいけど、ここで私たちがあの子に手を出したらダメなのよ! そんなことしたら、あのゲスと変わらないことになるわ! じゃあ、私達はどうすればいいのよ! 教えてよ! シン!」
 アンナが慟哭するように自分の感情を吐き出し、その場で泣きながら崩れ落ちる。
 すると、周りのメイドも昂った感情を吐き出すように泣き始める。

「参ったな~」
「これって、どういう状況なの? 私の記憶が原因なの?」
「まあ、正直に言うとな。お前はあのメイドのお嬢さん達に無惨に殺される予定だった。俺もそのつもりだった」
「なら、殺しなさいよ! 私を殺せば、あのメイド達も気が済むんでしょ! なら、やりなさいよ! ほら、早く!」
「出来る訳ないじゃない!」
 アンナが立ち上がり、オリヴィアを見ながら叫ぶ。

「なんでよ! 私が憎いんでしょ! なら「憎いわよ! さっきまではそう思っていたわ」……なら、どうして」
「あなたの記憶を見たからよ! なんでもっと早く言わないの!」
「言えるわけないじゃない! 言ったら、その場で全員殺されていたわ!」
「……それもそうね。なら、私達はあなたに感謝すべきなのかしら?」
「やめて! 私は自分の命が惜しかっただけなんだから」
 オリヴィアとアンナが互いの気持ちをぶつけ合うように互いに言い合うのを黙って見ていた。

「私は許さない!」
 二人の会話を黙って聞いていたカレンが立ち上がり、オリヴィアを睨みつける。
「カレン……」
「アンナは納得出来るのかもしれないけど、私は納得出来ない! なんで親まで殺されなきゃいけないのよ!」
「なら、最初っからあのゲス野郎に体を許していればよかったじゃない。結局は自分が原因で親が殺されるんだよ」
「エル! なんでそんなこと言うのさ!」
「カレン、あなたもあの子の記憶を見たでしょ? あのゲス野郎の誘いに乗らなかった私達が集められたのよ。なら、そもそもの原因は私達じゃない。あの子を責めるのは間違っていると思う」
「でも……」
「カレン、納得出来ない部分もあるでしょう。でも、エルが言ってるのも事実よ。それは分かっているわね?」
「分かっているわよ! じゃあ、どうすればいいのよ! 誰にぶつければいいのよ!」
 カレンまで二人の会話に加わり、面倒になるかと思ったがエルの的確な指摘により、小康状態になったようだ。

「あのさ、怒りのぶつけ先は用意してやることが出来ると思うぞ?」
「「「「「「へ?」」」」」」
「シン! それって、どういうこと?」
 俺の言葉にオリヴィアやメイドのお姉さん達が問い詰めてくる。

「まあ、待て。オリヴィア、お前の兄は信頼出来る人間か?」
「うん、お兄様は信頼出来るわ。私のこともどうなるか知っていたみたいだけど、必ず戻って来いって言ってくれたし」
 死ぬって知っているのに『戻って来い』か。う~ん、黒とも白とも言えないな。

「まあ、それだけで判断することは出来ないか。なあ、兄宛に今までのことを報告する形で書面にしてくれないか?」
「それはいいけど、どうするの?」
「それをお前の兄に見せて、両親を領主の座から引き下ろす」
「そんなこと出来るわけないじゃない!」
「なんでだ?」
 オリヴィアの兄と相談して、領主を抹殺しようとしたが、オリヴィアに無理と言われたので理由を尋ねる。

「両親の死に疑問を持たれれば、審問官がやって来るわ。そしたら、嘘なんかすぐにバレるもの」
「そうか。じゃあ、不審に思われなければいいんだな?」
「そうね、もしそれが本当にできるのならね」
「まあいい、それはお前の兄と相談して決めるから、さっさと書いてくれないか」
「分かったわ。なら、紙とペンをもらえるかしら?」
「ちょっと待て」
 オリヴィアにそういうと、その場で腰高のテーブルと椅子を用意し、その上に紙束とペンを用意する。

「ほら、これでいいか?」
「な、なにをしたのよ!」
「なにって、見てただろ? テーブルと椅子を作って、紙とペンを用意した。それ以外になにかあるか?」
「なにかあるかって、それが一番の非常識じゃないの!」
「もう、キャンキャン騒ぐなよ。牢に放り込むぞ?」
「あ! ごめんなさい。でも、これは変よ!」
「どこが変なんだ? 魔法が使えるヤツなら誰でも出来るだろう。こんなもん」
「出来ないわよ!」
「ああ、もう、うるさいな。俺は出来るんだから、いいじゃないか。ほら、さっさと書けよ」
「むぅ納得出来ない! でも、お兄様の為にも書くしかないのよね」
「ああ、そうだ。お前が早くしないと、メイドさんの家族が危ないぞ」
「なに! オリヴィア! 早く書くのよ! ほら、さっさとしなさい!」
「わ、分かったわよ。もう……」
 渋々ながら、オリヴィアがやっと椅子に座り、ペンを取ると紙を取り、ペンを走らせる。
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