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第5話 子供が演じる子供らしさを見せられた
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「『ケイン君だから』『ケイン君だから』『ケイン君だから』……」
僕はケイン君がどこからか出した街の模型に驚くが直ぐに父さんに「サンガン、呪文だ」と言われ、父さんに教えられた呪文を唱え無理矢理に自分を落ち着かせる。
「ねぇ……その呪文どうにかならないの?」
「ならんな。少なくともサンガンが慣れるまでは無理だろ。なあ、サンガン」
「ケイン君、ごめんね。僕も慣れたいんだけど……」
「サンガンさん……分かりました。で、これの説明だったね」
「これの説明ならワシに任せろ」
「え? なんで父さんが?」
「なんでって……そりゃ、これはワシが作っ……てはないが、ドワーフタウンを作る時に元にした模型だ。まあ、今は街の様相も変わってしまったがな」
「へぇ~そうなんだ。で、そのミニカーはどう使うの?」
「これはだな……ケイン、お前の出番だ」
「ガンツさん、どうせなら全部しなよ」
「いいから、後は任せたぞ」
テーブルの上のドワーフタウンの模型の道路の上にミニカーを置くとケイン君は「こういう風に……ね」と僕に言う。
「え?」
「あれ? 思ってた反応と違う」
「思ってた反応って?」
「そりゃ、『へぇ~』とか感嘆してくれると思っていたんだけどね」
「なんか、ごめん」
「ケイン、そりゃ無理ってもんだろ。サンガンはあまり街を出歩かないからな。こんな風に車が走っているなんて知らないんだろうよ」
「え、そうなの?」
「ごめん……」
「いや、別に謝らなくてもいいんだけど……もう、ガンツさんが変に絡むからだよ」
「ワシのせいかよ!」
「だって、そうでしょ! 後でアンジェさんに言うから」
「おい、それは卑怯だろ!」
「卑怯だと思うならお口にチャック!」
「う……分かったわい」
ケイン君は「でね」と言いながら、軽トラや軽ワゴンにバスにセダンと色んなタイプのミニカーを並べていくと「どう?」と僕に聞いてくる。
「どうって、どういうこと?」
「あれ? また、思ってた反応と違う……」
「それは、ほれ。あれだ! サンガンは自分で運転したことないからな」
「ガンツさん!」
「おっと、お口にチャックね。はい!」
僕の反応がケイン君が想像していたのと違っていた様で、ちょっとガッカリした様子を見せると、また父さんが横から口を挟みだしたのでケイン君が父さんを窘めると、父さんも口のファスナーを閉じる動作をしてみせる。
「まあ、ガンツさんの言うことも当たらずとも遠からずなんだけど、要はね。このミニカーを使って自分で車を運転している様に遊ぶんだ。それが、ミニカーの遊び方だね」
「遊ぶの? どうやって?」
「どうやってって……そりゃ……」
「ケイン、お手本を見せてやれ」
「ガンツさん?」
「ふふふ、何かおかしいか? 子供が遊ぶんだろ? なら、その子供がどうやって遊ぶのかお手本を見せてやればいいじゃないか」
「そこまで言うならガンツさんが「ワシは見ての通りジジイであって、子供じゃない」……くっ」
「ほれ! くくく……」
「この……」
父さんはさっきの仕返しとばかりにケイン君を揶揄うように挑発しているし、ケイン君も何故だか凄く恥ずかしそうだ。
「えっと、子供達はミニカーをこう持って……こういう風に遊ぶから」
「ケイン、子供が無言で遊ぶか? ん?」
「くっ……」
ケイン君は父さんをジロリと睨むとゴクリと生唾を飲み込みふぅ~と一呼吸してから「ブ~ン」と言いながら手に持ったミニカーを走らせる。
父さんはそんなケイン君をお腹を抱えながらホントに楽しそうに見ている。
「ケ、ケイン君分かったから、もういいから、ね」
「サンガンさん……」
僕は顔を赤くしながら必死になってミニカーで遊ぶケイン君の背中をそっと擦りながら「もういいから」とミニカー遊びを止めさせる。
「父さんも大人気ないことは止めなよ」
「何がだ。子供の遊び方なんぞワシが知るわけないだろ。だから、お子様であるケインに聞いたんだ。なあケイン」
「いいよ、サンガンさん。言っても治らないし。アンジェさんへの報告書の内容が増えるだけだし」
「母さん? なんでここで母さんが?」
「ケイン! やっぱりお前がアンジェの犬か!」
「犬だなんて。そんなのマサオに悪いよ。ただ単に見聞きしたことを報告しているだけだし」
「くそっ……」
僕はケイン君が父さんをやり込めてニヤリとするのを見てしまった。
「で、こんな風にスラレールを街の模型の中で走らせたり、スケールサイズを合わせたミニカーを使えば、ほら! 自分なりの街を作ることが出来るでしょ」
「あぁ~そういう風な遊び方もあるんだ! へぇ~」
「それっ! それが欲しかったんだよ!」
「ケイン君?」
「あ、ごめんなさい。でも、楽しそうって思えたんでしょ」
「あ、うん。まあ……そうだね」
ケイン君は満足そうに何度も頷くと「乗り物系って楽しいよね」と子供らしい笑顔で僕に問い掛けて来る。だから、僕も頷き「そうだね」と言う。
「でも、楽しいのは遊ぶ子供達だけなんだよなぁ~」
「そうだけど、その辛い苦しいの先には子供達の笑顔が待っていると思えばやり切れるでしょ」
「そうだけど……出来れば僕も笑っていたいんだけどね」
「サンガン、それなら大丈夫だぞ」
「え? 父さん、どういうこと?」
「本当にツラいとな乾いた笑いしか出て来ないんだ。お前も一度、経験してみるにはいいかもしれんな」
「え、ナニソレ……」
「ガンツさん、サンガンさんを脅さないでよ」
「ケイン君、ウソだよね。ね、そうなんだよね?」
「サンガンさん、大丈夫ですよ」
「ケイン君!」
「ちゃんと家には帰って寝られるかどうかはサンガンさん次第なんですから。だから、頑張りましょうね」
「あ……ふふふ、父さんの言う通りだ……」
僕はケイン君がどこからか出した街の模型に驚くが直ぐに父さんに「サンガン、呪文だ」と言われ、父さんに教えられた呪文を唱え無理矢理に自分を落ち着かせる。
「ねぇ……その呪文どうにかならないの?」
「ならんな。少なくともサンガンが慣れるまでは無理だろ。なあ、サンガン」
「ケイン君、ごめんね。僕も慣れたいんだけど……」
「サンガンさん……分かりました。で、これの説明だったね」
「これの説明ならワシに任せろ」
「え? なんで父さんが?」
「なんでって……そりゃ、これはワシが作っ……てはないが、ドワーフタウンを作る時に元にした模型だ。まあ、今は街の様相も変わってしまったがな」
「へぇ~そうなんだ。で、そのミニカーはどう使うの?」
「これはだな……ケイン、お前の出番だ」
「ガンツさん、どうせなら全部しなよ」
「いいから、後は任せたぞ」
テーブルの上のドワーフタウンの模型の道路の上にミニカーを置くとケイン君は「こういう風に……ね」と僕に言う。
「え?」
「あれ? 思ってた反応と違う」
「思ってた反応って?」
「そりゃ、『へぇ~』とか感嘆してくれると思っていたんだけどね」
「なんか、ごめん」
「ケイン、そりゃ無理ってもんだろ。サンガンはあまり街を出歩かないからな。こんな風に車が走っているなんて知らないんだろうよ」
「え、そうなの?」
「ごめん……」
「いや、別に謝らなくてもいいんだけど……もう、ガンツさんが変に絡むからだよ」
「ワシのせいかよ!」
「だって、そうでしょ! 後でアンジェさんに言うから」
「おい、それは卑怯だろ!」
「卑怯だと思うならお口にチャック!」
「う……分かったわい」
ケイン君は「でね」と言いながら、軽トラや軽ワゴンにバスにセダンと色んなタイプのミニカーを並べていくと「どう?」と僕に聞いてくる。
「どうって、どういうこと?」
「あれ? また、思ってた反応と違う……」
「それは、ほれ。あれだ! サンガンは自分で運転したことないからな」
「ガンツさん!」
「おっと、お口にチャックね。はい!」
僕の反応がケイン君が想像していたのと違っていた様で、ちょっとガッカリした様子を見せると、また父さんが横から口を挟みだしたのでケイン君が父さんを窘めると、父さんも口のファスナーを閉じる動作をしてみせる。
「まあ、ガンツさんの言うことも当たらずとも遠からずなんだけど、要はね。このミニカーを使って自分で車を運転している様に遊ぶんだ。それが、ミニカーの遊び方だね」
「遊ぶの? どうやって?」
「どうやってって……そりゃ……」
「ケイン、お手本を見せてやれ」
「ガンツさん?」
「ふふふ、何かおかしいか? 子供が遊ぶんだろ? なら、その子供がどうやって遊ぶのかお手本を見せてやればいいじゃないか」
「そこまで言うならガンツさんが「ワシは見ての通りジジイであって、子供じゃない」……くっ」
「ほれ! くくく……」
「この……」
父さんはさっきの仕返しとばかりにケイン君を揶揄うように挑発しているし、ケイン君も何故だか凄く恥ずかしそうだ。
「えっと、子供達はミニカーをこう持って……こういう風に遊ぶから」
「ケイン、子供が無言で遊ぶか? ん?」
「くっ……」
ケイン君は父さんをジロリと睨むとゴクリと生唾を飲み込みふぅ~と一呼吸してから「ブ~ン」と言いながら手に持ったミニカーを走らせる。
父さんはそんなケイン君をお腹を抱えながらホントに楽しそうに見ている。
「ケ、ケイン君分かったから、もういいから、ね」
「サンガンさん……」
僕は顔を赤くしながら必死になってミニカーで遊ぶケイン君の背中をそっと擦りながら「もういいから」とミニカー遊びを止めさせる。
「父さんも大人気ないことは止めなよ」
「何がだ。子供の遊び方なんぞワシが知るわけないだろ。だから、お子様であるケインに聞いたんだ。なあケイン」
「いいよ、サンガンさん。言っても治らないし。アンジェさんへの報告書の内容が増えるだけだし」
「母さん? なんでここで母さんが?」
「ケイン! やっぱりお前がアンジェの犬か!」
「犬だなんて。そんなのマサオに悪いよ。ただ単に見聞きしたことを報告しているだけだし」
「くそっ……」
僕はケイン君が父さんをやり込めてニヤリとするのを見てしまった。
「で、こんな風にスラレールを街の模型の中で走らせたり、スケールサイズを合わせたミニカーを使えば、ほら! 自分なりの街を作ることが出来るでしょ」
「あぁ~そういう風な遊び方もあるんだ! へぇ~」
「それっ! それが欲しかったんだよ!」
「ケイン君?」
「あ、ごめんなさい。でも、楽しそうって思えたんでしょ」
「あ、うん。まあ……そうだね」
ケイン君は満足そうに何度も頷くと「乗り物系って楽しいよね」と子供らしい笑顔で僕に問い掛けて来る。だから、僕も頷き「そうだね」と言う。
「でも、楽しいのは遊ぶ子供達だけなんだよなぁ~」
「そうだけど、その辛い苦しいの先には子供達の笑顔が待っていると思えばやり切れるでしょ」
「そうだけど……出来れば僕も笑っていたいんだけどね」
「サンガン、それなら大丈夫だぞ」
「え? 父さん、どういうこと?」
「本当にツラいとな乾いた笑いしか出て来ないんだ。お前も一度、経験してみるにはいいかもしれんな」
「え、ナニソレ……」
「ガンツさん、サンガンさんを脅さないでよ」
「ケイン君、ウソだよね。ね、そうなんだよね?」
「サンガンさん、大丈夫ですよ」
「ケイン君!」
「ちゃんと家には帰って寝られるかどうかはサンガンさん次第なんですから。だから、頑張りましょうね」
「あ……ふふふ、父さんの言う通りだ……」
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