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第6話 分からないならやってみることにした

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「ちょっと待って、ケイン君」
「はい?」

 これで話すことは全部話したとばかりに纏めに入ったケイン君に僕は待ったを掛ける。

「ケイン君が売ろうとしている玩具はこれで全部じゃないんでしょ」
「うん。ほんの一部かな。どうして?」
「どうしてって……だって、スラレール一本で玩具屋を始める訳じゃないんでしょ。なら、どんなラインナップがあるのか、一応は責任者としては知っておきたいかなと思って」
「ん~それもそうか。じゃあ……」

 僕の質問にケイン君が答えてくれたけど……聞かなきゃよかったと後悔している。

 ケイン君は僕の質問に対しニコニコしながら、色んな物を取り出してはテーブルの上に並べていく。

「ケイン、まだあるのか?」
「え~と……取り敢えずはこんなもんかな」
「取り敢えずって……ウソでしょ」
「サンガン、呪文だ」
「あ! 『ケイン君だから』『ケイン君だから』『ケイン君だから』……」
「また……もう」

 僕はもうクセになりつつある呪文を唱えながらそれほど大きくないテーブルの上に広げられたいくつかを手に取り確かめてみるが、遊び方が全然分からない。

 恐らくそうだろうなと思えるのは女の子や動物を模した人形くらいだろうか。

 他のは全くと言っていいほど遊び方の想像が着かない。

 僕が玩具を一つ一つ手に取ってはハァ~と嘆息する度にケイン君はテーブルの向こう側で楽しそうに見ていた。

「降参です……」
「え、早くない?」
「ムリ! どこから見てもどうやって遊ぶのか想像すら付かないや。だから、教えて!」
「ガンツさんはどう?」
「ワシにもサッパリだ。勿体付けずにさっさと教えろ! あ、当然子供らしくな」
「……ガンツさん」
「父さん、余計なことを言わないの!」
「分かったよ」
「じゃあ、先ずはこれだね。これは……」

 ケイン君は「じゃあ単純な物から」と様々大きさのボールの中から直径が十センチメートルほどの大きさのボールを手に取ると、それを僕にポンと下から投げて山なりに投げてきたので慌ててソレを受け取る。

「ケイン君、いきなりはやめてよ」
「ふふふ、ごめんなさい。でもね、このボールはこうやって互いに投げ合って遊ぶ物だから」
「投げ合う? それって楽しいの?」
「えっと……楽しいかと言われると、ちょっと困るかな」
「ん? 玩具なのに楽しくないの?」
「そう言われると困るんだけど……ん~なんて言えばいいのかなぁ~」

 僕がケイン君が投げて来たボールを手で受け取れずにワタワタしてしまったせいかも知れないけど、このボールで遊ぶのは楽しいとは思えなくてケイン君にも「楽しいのかな」と聞いてしまったけど、聞かれたケイン君も「どうだろう?」と困っている。

 どうもケイン君自身もどうやって楽しさを伝えたものかと考えている様だ。

 そして「うん、やっぱり実際にやってみないとね」と言ったかと思えば、ボールの中で一際大きな直径が三十センチメートルはあるボールを父さんに向かって「えい!」と投げ付けた。

「アイタッ……て、ほどでもないか」
「ケ、ケイン君……何を」
「ガンツさん、ほら投げ返して!」
「ほぉ……いいんじゃな?」
「うん、いいから。ほら、早く!」
「ふふふ、よし。サンガンも聞いたな? いいか、ワシから手を出したんじゃないってしっかりアンジェに言うんだぞ」
「あ、うん……って、えぇ!」

 父さんは僕が返事をする前にボールを両手で持ち、振りかぶり思いっ切り投げる! でも、ボールが大きすぎるのと僕達ドワーフの特性でもある手足の短さも手伝ってボールはゆっくりと山なりにケイン君の方へひょろひょろと飛んで行く。

 ケイン君は投げ返されたボールを直ぐに父さんへと投げ返す。

「あ! ケイン、今のは顔を狙っただろ! コイツ!」
「だから、こうだって」
「ムキィ!」

 ケイン君と父さんのやり取りを見ていてなんとなくケイン君が言いたいことが分かった気がしてきた。

 っていうか父さん達を見ていて僕はちょっとウズウズとしている。だから、僕は父さんが投げたボールを奪うと「サンガン?」とキョドっている父さん目掛けて「えい!」と投げてみると、それを慌てた様子で避けようとする父さんを見て思わず笑ってしまう。

「サンガン、ケイン、お前等はワシを怒らせたな!」
「そんなことはいいから、ほら! 早く早く!」
「父さん、ほら!」
「くっ……こいつら!」

 それから暫くして「ちょ、ちょっと待て……」と父さんが息切れしながら休憩したいと手を挙げたので、僕もケイン君も「そうだね」とそれを受け入れる。

「ふぅ~いや、最初はどうかと思ったが、ボールを投げ合うだけでも結構、楽しいものだね」
「そうだな。これを子供だけにやらせるのは勿体ないと思うぞ」
「じゃあ、そういうのも企画すればいいと思うよ」
「お前はしないのか?」
「なんで?」
「はぁ~いや、いい。これはワシの方で考えてみる」
「うん、頑張ってね」
「相変わらず他人ひと任せだな」
「いやぁ~それほどでも」
「誰も褒めてないからな」
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