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第六章 いざ、王都へ

第7話 見つけたのは

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 ルーに頼んでアジトにいる野盗を昏倒させてもらい、奧の方から物音がしなくなったのを確認してから、奧へと進んだソルト達が見たのはそこら中に倒れている野盗らしき男と隅で固まってすすり泣いていた女性達がいた。

 アジトに入ってきたソルト達に気付いた女性達はサッと身構えるが、ソルトは女性達から目を逸らし、エリス達に保護をお願いする。

「任せて。レイ、リリス、カスミ手伝ってね」
「「「はい」」」

 人質らしき女性達は男性には見せられない格好なので目隠し代わりにエリスは一枚の大きなシーツで女性陣を囲うように広げる様にレイ達にお願いする。

「これで周りからは隠れるからね。じゃあ、これに着替えてもらえる。サイズは大丈夫だと思うけど」
「「「……」」」
「どうしたの? 何か問題でもあったの?」
「あの……あなた達は?」
「ああ、えっと……通りすがり?」
「え?」
「あ~それじゃ分からないわよね。えっとね、私達もコイツらに襲われたの。それでアジトを聞き出して、ここに来たらあなた達がいたって訳。どう? 納得出来た?」
「そういうことなんですね。でも、私達は助けられてもお支払いする物が……」
「支払いなんていらないから。気にしないでね」
「でも、そういう訳には……」
「いいから、いいから。でも詰所でどうやって野盗に襲われたかは聞かれると思うけど、それは大丈夫?」
「はい。ちゃんとお話します。そうしないと……」

 女性はそれだけ言うと、手に持っていたペンダントをギュッと握りしめる。多分、同行していた者の形見か何かだろうと察したエリスは「じゃあ、お願いね」とだけ言って着替えを手伝う。

「それにしても臭そうだな」
「だよね。これ貰っててよかったよ」
「ホントだよな」

 ソルトは倒れている野盗の格好を見てレイが危惧していたことが考えすぎじゃなく消臭ブレスレットを用意しておいてよかったと改めてレイに感謝していた。

「とりあえずはこんなもんかな」
「僕も終わったよ」
「俺もだ」
「じゃあ、外に運ぼうか」
「「え~」」
「何? どうしたのさ」
「抱えるの? コレを」
「ちょっとイヤだな」
「あ~それもそうか。それなら……」

 ソルトがしっかりと両手足を縛った野盗達をアジトの外へ運びだそうとショコラ達に伝えると返って来たのは「イヤ!」だった。臭いはなんとかなったが、確かにコレを抱えるのはソルトにも抵抗があるかなと思った。なら、それならばとソルトは足首にロープを結ぶと二三人を一纏めにして引き摺りながらアジトの外へと向かう。

「あ、それならイケる」
「俺も!」

 ソルトに倣ってショコラ達も男達の足首を掴むとそのまま引き摺りアジトの外へと向かう。
 アジトに残っていたのは十人に満たなかったので一人で三人引き摺って出れば直ぐに終わった。

「ソルト~終わったわよ!」
「分かった~」

 アジトの中からエリスの声が聞こえたので、ソルトは返事をするとアジトの中へと戻る。

 アジトに戻るとエリスの側には少し薄汚れた感じの女性達が立っていて、ソルトに対して頭を下げる。

「えっと、頭を上げてもらえますか?」
「ですが、私達には何もお支払いすることが出来ないので……」
「さっきから、そんな必要はないって言っているんだけど聞いてくれないのよ」

 頭を下げる女性達の横でエリスが困ったようにソルトに言う。

「とりあえず、こんなところにいないで外に出るのはどうですか? 多分、ヒドい臭いなんですよね?」
「も、申し訳ありません」
「あ!」
「バカソルト! 大丈夫だから、あなた達のことを言った訳じゃないんだから。ほら、外に出るわよ。バカソルト、謝りなさいよ!」
「えっと……ごめんなさい。エリスが言うようにあなた達のことではなく野盗のオジサン達のことを言ったつもりでした。ごめんなさい」
「いえ、いいんです。確かに私達は色んな意味で汚されましたから。今更、そんなことくらいでショックを受けるようなことはありませんから……」

 気丈な様子でそうは言うが、この代表者らしき女性の目には涙が滲んでいたのがソルトにも分かった。

「そうだったんですね。じゃあ、今までのことはなかったことにしましょう。いいですか、動かないでくださいよ」
「「「え?」」」
「ルーやっちゃって!」
『はい、お任せを。クリーンからの浄化、おまけに修復リペア!』
「「「え? え~?」」」

 ソルトのお願いでルーは女性達を綺麗にした。そして色んな菌からの浄化を行い、体の傷も修復で文字通り綺麗になかったことにした。

「あの、私達は……どうなったんでしょうか?」
「体の傷がなくなったんだけど……」
「ねえ、殴られたところの痣も消えたみたい!」
「「「どういうことですか!」」」
「えっと……エリス、お願い!」
「もう、しょうがないわね。じゃあ代わりに説明するわね。いい?」
「「「はい、お願いします!」」」

 自分達の体の様子を確認した女性達はソルトに何をしたのかと問い詰めると、ソルトはその迫力に思わずエリスに助けを求めてしまう。そしてエリスからソルトが何をしたのか聞かされた女性達が、今度は揃ってソルトに土下座する。

「「「申し訳ありません!」」」
「いいから、顔を上げてよ。ちっとも話が進まないよ。ね、お願いだからさ。エリスゥ~」
「はいはい、分かったから。そんなに情けない声を出さないの。はい、あなた達もいい加減にして、終いには怒るわよ」
「「「すみません!」」」

 エリスの勢いに負けたのか女性達はやっと立ち上がりアジトの外へと出て行く。

「ふぅ~ありがとうね。エリス」
「いいけどさ、ホント情けないわね」
「申し訳ない。どうも女性の集団ってのが怖くてね」
「分からないでもないけど……私達のリーダーなんだからね」
「リーダー? なの? だって、パーティのリーダーはエリスで登録したよね?」
「形式上はね。でも、実質のリーダーはソルトでしょ」
「そうなんだ。でも、一番の年長は「言わないの!」……ごめん」
「ねえ、イチャついているところ悪いんだけど」

 ソルトとエリスが振り返るとレイが「お宝は?」と聞いて来た。

「そうだ。それがあったんだ。ちょっと、待って。ルー」
『既に場所は分かっていますよ。視界に出しますね』
「ありがとう。お! アソコだな」

 ルーにお宝の場所を教えてもらったソルトは壁の側に立つと、その前にあった大きな岩をどかす。すると、岩をどかした後にはキラキラと光る装飾品や金貨が樽から溢れていた。

「お~これがお宝なんだね」
「思ったより一杯ね」
「エリス、野盗を退治した時のギルドへの報告は?」
「そうね。確か持ち主がハッキリしているのは半額での買い取り要求が出来るでしょ。それと持ち主不明の場合は見付けた人の物になるわね」
「へ~そうなんだ。ん? これは……」
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