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第八章 やるべきこと
第7話 俺もツライ
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「ふぅ~困ったわね」
「困ることじゃない!」
「そうは言ってもね。あなたはこのままだと、確実に老いるわよ。そして私達の殆どは姿形が変わらないままなの。そんな未来に抗うことが出来るの?」
「……」
「分かってもらえたようね。だからね、日本に戻るにしろ戻らないにしろ。あなたはソルトと一緒にはいられないのよ。なら、せめて心の傷が浅い内に諦めるのも一つの手段だと思うのだけど」
「諦めるって……それはソルトのこと言ってるの?」
「そうよ。分かるでしょ」
「分からないわよ!」
「あのね「そんなの分からないじゃない!」……レイ、あなた自分で何を言っているのか分かっているの?」
「……」
ブランカはレイにこのままだとレイ一人だけが老けていき、皆の容姿が変わらないことに焦り気が触れるのではないかと心配していたが、肝心のレイはソルト達と離れる気はないし、そんな未来はガマン出来ないと言うがブランカはこのままだと確実に迎える未来だと告げる。だけど、レイはそれでも何か手段があるはずだとブランカに食ってかかる。
だが、レイには肝心の手段が何も思い浮かばない。けれども考えていれば何か手段があるはずだと言いたい気持ちをグッと堪える。
「なあ、ブランカ。何も今すぐ決めなくてもいいんじゃないの」
「ソルト、今からでも遅いくらいよ」
「そうか?」
「そうよ。人の寿命が短いのは知っているでしょ。だから、レイの気持ちも分からないではないけど、早く気持ちを決めさせた方がいいのよ」
「……なあ、ホントに他に方法はないのかな?」
「え? ソルト、あなた何を言っているの? レイは向こうへ帰すんでしょ? なら、下手なことは出来ないってことくらい分かるでしょ。向こうで待っている人がヒトではなくなったレイを見てどう思うかくらいは想像出来るでしょ」
「まあ、そうだけど……なんかなぁ」
「レイに好意をぶつけられて気持ちが変わった?」
「いや、そうじゃないけど……」
「まあ、私もレイを帰らせることが出来る手段があるとは思わないけど……それならそれでレイに現実を見てもらわないとでしょ」
「だけど……」
「私、間違ったことは言ってないわよね?」
「そうだけど……そうだけどさ……なんか、こう……あぁもう!」
ブランカが言うように人の寿命は百歳を超えることは希だと言うことはソルトも理解している。だけど、ここは魔法が使える異世界だ。だから、何か手立はあるだろうとソルトもレイも考えてはいるが、悠久の時を生きてきたブランカにそんな方法はないと言われてしまう。そして、レイに好意を寄せられたことでレイを日本に帰すという気持ちが揺らいでいるのではないかと言われてしまう。自分ではそんなつもりではないと言いたいが、ブランカの言うことは至極真っ当な意見ばかりな為、返答できずにいた。そして、自分の胸中を上手く言葉にすることが出来ず焦燥感が声に出る。
そして、そんなソルトにレイは自分の思いを口にする。
「ソルト、私はソルトと一緒にいたい! 日本に帰れなくてもいい! だから、ソルトの側にいさせて欲しいの!」
「レイ……」
「だから、ソルトと一緒にいるとあなたがツライだけなのよ。分かってちょうだい」
「分からない! そんなの分かりたくもない!」
「レイ、ワガママ言わないでよ」
「こんなのワガママじゃない! 私の正直な気持ちだもの! それに日本に帰らないのなら何か方法があるんでしょ! なら、それを私に教えてよ!」
「レイ、ダメだ。今は帰らなくてもいいと思っているかもしれないけれど、アイツらと会えば気持ちも変わるハズだ。その時に後悔しないようにしないとダメだよ。それに俺はレイを……レイ達三人を帰すことは諦めていない。ただ、その中に俺が含まれていないだけだ」
「だから、それがイヤなんだって言ってるじゃない! なんで、一緒に帰ろうって言わないの! ソルトのおばさんだって待っているでしょ!」
「いないよ」
「え?」
「もう、俺の親はいない。亡くなってから二,三年にはなるかな」
「え……うそ……だって、何も聞いてないし……」
「そりゃ、お前達が引っ越したからだろ。まあ、そういう訳で俺を待っているとすれば、俺にやたらと仕事を押し付けてくる上司くらいなもんだろうな。ふふふ、あのオッサンも俺がいなくなってから今頃はてんてこ舞いだろうな」
「ソルト!」
「お、なんだなんだ」
「ガマンしなくてもいいんだよ。ね?」
「俺は何もガマンしてないって……お、おい!」
「いいから……」
レイに日本に残してきた人が心配しているんじゃないかと言われたソルトは両親は既に亡くなっていることを告げれば、レイに頭をギュッと抱きかかえられ驚く。
ソルトはレイから離れようとするが、レイは力を込めソルトを抱きしめる。そして「いいから」とだけ言うとソルトの口から嗚咽が漏れる。
「よしよし、本当はお母さん達が亡くなって淋しかったんでしょ。でも、誰にも甘えることが出来なかったんだよね。だから、いいから。気が済むまで私が甘えさせてあげるから」
「……グスッ……うわぁぁぁん!」
『ソルトさん、私が甘やかしてあげたい……』
「困ることじゃない!」
「そうは言ってもね。あなたはこのままだと、確実に老いるわよ。そして私達の殆どは姿形が変わらないままなの。そんな未来に抗うことが出来るの?」
「……」
「分かってもらえたようね。だからね、日本に戻るにしろ戻らないにしろ。あなたはソルトと一緒にはいられないのよ。なら、せめて心の傷が浅い内に諦めるのも一つの手段だと思うのだけど」
「諦めるって……それはソルトのこと言ってるの?」
「そうよ。分かるでしょ」
「分からないわよ!」
「あのね「そんなの分からないじゃない!」……レイ、あなた自分で何を言っているのか分かっているの?」
「……」
ブランカはレイにこのままだとレイ一人だけが老けていき、皆の容姿が変わらないことに焦り気が触れるのではないかと心配していたが、肝心のレイはソルト達と離れる気はないし、そんな未来はガマン出来ないと言うがブランカはこのままだと確実に迎える未来だと告げる。だけど、レイはそれでも何か手段があるはずだとブランカに食ってかかる。
だが、レイには肝心の手段が何も思い浮かばない。けれども考えていれば何か手段があるはずだと言いたい気持ちをグッと堪える。
「なあ、ブランカ。何も今すぐ決めなくてもいいんじゃないの」
「ソルト、今からでも遅いくらいよ」
「そうか?」
「そうよ。人の寿命が短いのは知っているでしょ。だから、レイの気持ちも分からないではないけど、早く気持ちを決めさせた方がいいのよ」
「……なあ、ホントに他に方法はないのかな?」
「え? ソルト、あなた何を言っているの? レイは向こうへ帰すんでしょ? なら、下手なことは出来ないってことくらい分かるでしょ。向こうで待っている人がヒトではなくなったレイを見てどう思うかくらいは想像出来るでしょ」
「まあ、そうだけど……なんかなぁ」
「レイに好意をぶつけられて気持ちが変わった?」
「いや、そうじゃないけど……」
「まあ、私もレイを帰らせることが出来る手段があるとは思わないけど……それならそれでレイに現実を見てもらわないとでしょ」
「だけど……」
「私、間違ったことは言ってないわよね?」
「そうだけど……そうだけどさ……なんか、こう……あぁもう!」
ブランカが言うように人の寿命は百歳を超えることは希だと言うことはソルトも理解している。だけど、ここは魔法が使える異世界だ。だから、何か手立はあるだろうとソルトもレイも考えてはいるが、悠久の時を生きてきたブランカにそんな方法はないと言われてしまう。そして、レイに好意を寄せられたことでレイを日本に帰すという気持ちが揺らいでいるのではないかと言われてしまう。自分ではそんなつもりではないと言いたいが、ブランカの言うことは至極真っ当な意見ばかりな為、返答できずにいた。そして、自分の胸中を上手く言葉にすることが出来ず焦燥感が声に出る。
そして、そんなソルトにレイは自分の思いを口にする。
「ソルト、私はソルトと一緒にいたい! 日本に帰れなくてもいい! だから、ソルトの側にいさせて欲しいの!」
「レイ……」
「だから、ソルトと一緒にいるとあなたがツライだけなのよ。分かってちょうだい」
「分からない! そんなの分かりたくもない!」
「レイ、ワガママ言わないでよ」
「こんなのワガママじゃない! 私の正直な気持ちだもの! それに日本に帰らないのなら何か方法があるんでしょ! なら、それを私に教えてよ!」
「レイ、ダメだ。今は帰らなくてもいいと思っているかもしれないけれど、アイツらと会えば気持ちも変わるハズだ。その時に後悔しないようにしないとダメだよ。それに俺はレイを……レイ達三人を帰すことは諦めていない。ただ、その中に俺が含まれていないだけだ」
「だから、それがイヤなんだって言ってるじゃない! なんで、一緒に帰ろうって言わないの! ソルトのおばさんだって待っているでしょ!」
「いないよ」
「え?」
「もう、俺の親はいない。亡くなってから二,三年にはなるかな」
「え……うそ……だって、何も聞いてないし……」
「そりゃ、お前達が引っ越したからだろ。まあ、そういう訳で俺を待っているとすれば、俺にやたらと仕事を押し付けてくる上司くらいなもんだろうな。ふふふ、あのオッサンも俺がいなくなってから今頃はてんてこ舞いだろうな」
「ソルト!」
「お、なんだなんだ」
「ガマンしなくてもいいんだよ。ね?」
「俺は何もガマンしてないって……お、おい!」
「いいから……」
レイに日本に残してきた人が心配しているんじゃないかと言われたソルトは両親は既に亡くなっていることを告げれば、レイに頭をギュッと抱きかかえられ驚く。
ソルトはレイから離れようとするが、レイは力を込めソルトを抱きしめる。そして「いいから」とだけ言うとソルトの口から嗚咽が漏れる。
「よしよし、本当はお母さん達が亡くなって淋しかったんでしょ。でも、誰にも甘えることが出来なかったんだよね。だから、いいから。気が済むまで私が甘えさせてあげるから」
「……グスッ……うわぁぁぁん!」
『ソルトさん、私が甘やかしてあげたい……』
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