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◆期待されていました
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朝になり、雨も上がった王都の人々が見たのは、海を隠すように建てられた壁。
「なんだこれ?」
「昨日まではなかったよな?」
「ああ、倉庫はあったがな」
「不思議だな。ん?」
男の一人が何かに気付き昨日まではなかった壁に近付く。
「何か書いてるな……え~と、『これより先、シャルディーア辺境伯管轄の港湾地区となります。しばらくはご不便かと思いますが、工事期間中は大変危険なため関係者以外の立ち入りを禁じます。』だと」
「どういうことだ?」
「さあな。どこかの貴族様が何か工事をしているらしい」
「どこの貴族様だ?」
「シャルディーアって書かれていたぞ」
「シャルディーア……どこかで聞いたことがあるぞ。どこだっけか?」
何かを思い出そうとする男の前をキックボードに乗った子供が通り過ぎる。
「あ~思い出した! そうだよ、あのシャルディーア領だよ!」
「なにが、あのなんだ?」
「ほら、あれだって!」
そう言って、男は子供が乗るキックボードを指差す。
「あれって、オモチャだろ?」
「そうだけど、そうじゃない!」
「お前、何言ってんだ?」
「だから、最近話題になるのは、そのシャルディーア領からのオモチャだったり、乗り物だったりするだろ」
「ああ、そういや聞いたことがあるな」
「だろ。だから、そこの貴族様が工事をしているのなら、この壁の向こうで何をやっているのかは知らないが、期待は出来るってもんじゃないか!」
「そうか? 俺は何も使われていなかった名前だけの港が使えるようになるなら嬉しいけどな。いつもあっちの港の連中にバカにされっぱなしだからな」
「それも、この工事が終わるまでかも知れないぞ」
男がニヤリと笑う。
「なんにせよ。働き口が増えるのはいいことだと思うけどな」
「そうだな。今勢いのある貴族様に期待するのもいいかもな」
~王城にて~
「オズワルド様……」
「なんだい?」
「やってくれましたよ。シャルディーア様が」
「ん? 何を言っているのかよく分からないが、港のことなら、既に聞いているぞ」
「あ……」
「なんだ、港のことだったのか」
「え、ええ。そうです。すでにご存じでしたか」
「ああ、朝早くに報告を聞いた。お陰で眠気など吹っ飛んだわ。ははは」
「そう、笑ってばかりもいられないとおもいますよ」
執事であるジムがオズワルドにそう告げる。
「どういうことだ?」
「いえ、既に報告が挙がっているのなら、特に私から報告することはありません」
「そう言うな。まずはお前の報告を聞かせて貰おうじゃないか」
「そうですか。では……」
オズワルドはジムが話す内容と既に聞いている報告内容と付き合わせる。
「そうか。想像以上に陸地が造成されている訳か」
「はい。実際に内部には入れていませんが、かなりの広さを有していると思われます」
「そうか」
「え? それだけですか?」
「ああ、そうだ。出来たらシャルディーア伯も招待するだろう。なら、それを待てばいい」
「ですが……」
「何度も言わせるな。すでにあの港に関しては全てシャルディーア伯に一任している」
「ですが……」
「お前の言いたいことも分からないでもないが、ここで欲を出せば、父上や兄上の様な目に合うことになるぞ。お前は私にそうなれと言うのか?」
「いえ、滅相もない」
「なら、この話はここまでだ。他にもお前の様に私に注進する輩も出てくるだろうな。お前に任せるから全部止めてくれよ」
「私がですか?」
「ああ、私に注進してきた第一号じゃないか。名誉ある役職だな。それにお前なら、そう言ってくる連中の気持ちも私がしたいことも分かるだろ。いいな、任せたぞ」
「は、はい。賜りました」
ジムは頬を引き攣らせながら、オズワルドに頭を下げる。
「じゃ、着替えるから部屋から出てくれ」
「はっ。失礼します」
部屋から出て行くジムを見て、オズワルドがため息を吐く。
「これから、何人こういうのが来るんだろうな。私はあの少年と仲良くしたいんだけどな……なかなかうまくいかないね。はぁ」
~デュークの王都の屋敷~
「セバス、もう噂になっているみたいだな」
「そうですね。家人に見てきて貰いましたが、見物人が一杯で何も見られなかったそうですが……」
「が?」
「昨日まではなかった壁にですね。旦那様の名前で『立ち入り禁止』と書かれていたとか」
「は?」
「まあ、あそこの管理は旦那様ですからね。当然でしょ」
「……」
「どうしました?」
セバスの言葉にデュークが黙り込む。
「なあ、王都では俺の名前って知られているようで知らない連中の方が多かったよな」
「ええ、そうですね」
「なら、誰のことかは王都の連中は分からないよな」
「ええ。去年までというか、三年ほど前ならそうでしょうね」
「は? どういうことだ?」
「分かりませんか?」
セバスが嘆息しながらデュークの顔を見る。
「三年前……あ!」
「お分かり頂けましたか?」
「アイツか!」
「ええ、そうです。シャルディーア領からいろいろな製品が出始めた頃ですね。最もあの頃は魔道具ではなくキックボードやポンプなどの製品でしたが、王都での知名度を上げるには十分でした」
「って、ことは……」
「はい。すでに『あのシャルディーア様なら』と王都の住人はなにやら過度な期待をしているようです。まあ、私に言わせればちっとも過度ではないのですがね」
「そりゃ、もうアイツのやらかすことに慣れっこのお前にとってはそうだろうな。だが、王都の連中にはとんでもない物に映るんだろうな」
「ええ、そう思います」
「しかし、一晩だぞ。相変わらずとんでもない奴だな」
「ですが、準備する時間は十分にあったと思いますよ」
「それは言うなよ。俺が悪い訳じゃないだろ?」
「そうですね。でも、解決したのもあの方でしたよ?」
「ああ、とんでもないお土産を残してな。どうすんだよ。王族の交代劇を二回も見るなんて。そんなの俺の予定には全くなかったぞ」
「それは私もですよ」
「お前はもう、先が……」
「先が……なんですか? そうですか。私のことを老い先短い老人と言うのなら、私はこれからは好きに生きたいと思います。永らくお世話になりました」
セバスがそう言って、デュークに綺麗なお辞儀を見せる。
「セ、セバス? 冗談だよな?」
「冗談でこんなことは言いませんよ。旦那様が私を老い先短いとお認めになるのであれば、これから私は好きに生きたいと申しております」
「待て! 待つんだ! セバス! 早まるな!」
「いいえ。これもいい機会です。後のことは学校を卒業する息子に任せて私はケイン様の元へ行きたいと思います。ですから、放して下さい!」
セバスを行かせまいといつの間にかデュークがセバスの腰にしがみついていた。
『ガチャ』
そこへ部屋のドアが開けられ、セバスの腰にしがみつくデュークを見せられる。
「あなた……何をしているんですか?」
「なんだこれ?」
「昨日まではなかったよな?」
「ああ、倉庫はあったがな」
「不思議だな。ん?」
男の一人が何かに気付き昨日まではなかった壁に近付く。
「何か書いてるな……え~と、『これより先、シャルディーア辺境伯管轄の港湾地区となります。しばらくはご不便かと思いますが、工事期間中は大変危険なため関係者以外の立ち入りを禁じます。』だと」
「どういうことだ?」
「さあな。どこかの貴族様が何か工事をしているらしい」
「どこの貴族様だ?」
「シャルディーアって書かれていたぞ」
「シャルディーア……どこかで聞いたことがあるぞ。どこだっけか?」
何かを思い出そうとする男の前をキックボードに乗った子供が通り過ぎる。
「あ~思い出した! そうだよ、あのシャルディーア領だよ!」
「なにが、あのなんだ?」
「ほら、あれだって!」
そう言って、男は子供が乗るキックボードを指差す。
「あれって、オモチャだろ?」
「そうだけど、そうじゃない!」
「お前、何言ってんだ?」
「だから、最近話題になるのは、そのシャルディーア領からのオモチャだったり、乗り物だったりするだろ」
「ああ、そういや聞いたことがあるな」
「だろ。だから、そこの貴族様が工事をしているのなら、この壁の向こうで何をやっているのかは知らないが、期待は出来るってもんじゃないか!」
「そうか? 俺は何も使われていなかった名前だけの港が使えるようになるなら嬉しいけどな。いつもあっちの港の連中にバカにされっぱなしだからな」
「それも、この工事が終わるまでかも知れないぞ」
男がニヤリと笑う。
「なんにせよ。働き口が増えるのはいいことだと思うけどな」
「そうだな。今勢いのある貴族様に期待するのもいいかもな」
~王城にて~
「オズワルド様……」
「なんだい?」
「やってくれましたよ。シャルディーア様が」
「ん? 何を言っているのかよく分からないが、港のことなら、既に聞いているぞ」
「あ……」
「なんだ、港のことだったのか」
「え、ええ。そうです。すでにご存じでしたか」
「ああ、朝早くに報告を聞いた。お陰で眠気など吹っ飛んだわ。ははは」
「そう、笑ってばかりもいられないとおもいますよ」
執事であるジムがオズワルドにそう告げる。
「どういうことだ?」
「いえ、既に報告が挙がっているのなら、特に私から報告することはありません」
「そう言うな。まずはお前の報告を聞かせて貰おうじゃないか」
「そうですか。では……」
オズワルドはジムが話す内容と既に聞いている報告内容と付き合わせる。
「そうか。想像以上に陸地が造成されている訳か」
「はい。実際に内部には入れていませんが、かなりの広さを有していると思われます」
「そうか」
「え? それだけですか?」
「ああ、そうだ。出来たらシャルディーア伯も招待するだろう。なら、それを待てばいい」
「ですが……」
「何度も言わせるな。すでにあの港に関しては全てシャルディーア伯に一任している」
「ですが……」
「お前の言いたいことも分からないでもないが、ここで欲を出せば、父上や兄上の様な目に合うことになるぞ。お前は私にそうなれと言うのか?」
「いえ、滅相もない」
「なら、この話はここまでだ。他にもお前の様に私に注進する輩も出てくるだろうな。お前に任せるから全部止めてくれよ」
「私がですか?」
「ああ、私に注進してきた第一号じゃないか。名誉ある役職だな。それにお前なら、そう言ってくる連中の気持ちも私がしたいことも分かるだろ。いいな、任せたぞ」
「は、はい。賜りました」
ジムは頬を引き攣らせながら、オズワルドに頭を下げる。
「じゃ、着替えるから部屋から出てくれ」
「はっ。失礼します」
部屋から出て行くジムを見て、オズワルドがため息を吐く。
「これから、何人こういうのが来るんだろうな。私はあの少年と仲良くしたいんだけどな……なかなかうまくいかないね。はぁ」
~デュークの王都の屋敷~
「セバス、もう噂になっているみたいだな」
「そうですね。家人に見てきて貰いましたが、見物人が一杯で何も見られなかったそうですが……」
「が?」
「昨日まではなかった壁にですね。旦那様の名前で『立ち入り禁止』と書かれていたとか」
「は?」
「まあ、あそこの管理は旦那様ですからね。当然でしょ」
「……」
「どうしました?」
セバスの言葉にデュークが黙り込む。
「なあ、王都では俺の名前って知られているようで知らない連中の方が多かったよな」
「ええ、そうですね」
「なら、誰のことかは王都の連中は分からないよな」
「ええ。去年までというか、三年ほど前ならそうでしょうね」
「は? どういうことだ?」
「分かりませんか?」
セバスが嘆息しながらデュークの顔を見る。
「三年前……あ!」
「お分かり頂けましたか?」
「アイツか!」
「ええ、そうです。シャルディーア領からいろいろな製品が出始めた頃ですね。最もあの頃は魔道具ではなくキックボードやポンプなどの製品でしたが、王都での知名度を上げるには十分でした」
「って、ことは……」
「はい。すでに『あのシャルディーア様なら』と王都の住人はなにやら過度な期待をしているようです。まあ、私に言わせればちっとも過度ではないのですがね」
「そりゃ、もうアイツのやらかすことに慣れっこのお前にとってはそうだろうな。だが、王都の連中にはとんでもない物に映るんだろうな」
「ええ、そう思います」
「しかし、一晩だぞ。相変わらずとんでもない奴だな」
「ですが、準備する時間は十分にあったと思いますよ」
「それは言うなよ。俺が悪い訳じゃないだろ?」
「そうですね。でも、解決したのもあの方でしたよ?」
「ああ、とんでもないお土産を残してな。どうすんだよ。王族の交代劇を二回も見るなんて。そんなの俺の予定には全くなかったぞ」
「それは私もですよ」
「お前はもう、先が……」
「先が……なんですか? そうですか。私のことを老い先短い老人と言うのなら、私はこれからは好きに生きたいと思います。永らくお世話になりました」
セバスがそう言って、デュークに綺麗なお辞儀を見せる。
「セ、セバス? 冗談だよな?」
「冗談でこんなことは言いませんよ。旦那様が私を老い先短いとお認めになるのであれば、これから私は好きに生きたいと申しております」
「待て! 待つんだ! セバス! 早まるな!」
「いいえ。これもいい機会です。後のことは学校を卒業する息子に任せて私はケイン様の元へ行きたいと思います。ですから、放して下さい!」
セバスを行かせまいといつの間にかデュークがセバスの腰にしがみついていた。
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そこへ部屋のドアが開けられ、セバスの腰にしがみつくデュークを見せられる。
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