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第一章
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千紗は身をくの字に折り曲げて喉を押さえて何度も激しくゲホゲホッと咳き込んだ。
呼吸が乱れる。息苦しさにじんわりと涙が出て来て視界が白く霞んだ。目尻からぽろり、と一滴の涙が溢れる。苦しさと若い身で水で噎せている情けなさで涙腺が刺激された。去年祖母が亡くなって悲しくても泣けなかったのに、こんな時に泣くなんて、と自分に失望して更に涙が流れる。
(何、これ…水も受け付けない。私の身体はどうなってしまったの)
水で濡れた口元を手の甲で拭う。水が喉を通った瞬間、強い焼けるような痛みと煮えたお湯を飲んだような熱さと同時に感じた。
まだ、舌がじりじりと痺れるような感覚が残っている。
ピピピピ…
アラームが飲食店の出勤時間を知らせる。いつもは暫く無視して準備に取り掛かるのだが直ぐに千紗は青い顔で携帯電話を手に取るとアラームの設定を解除した。
無機質な機械的にリズムを刻む音が不安な気持ちを掻き立て無用に際限なく自分の中で広げるような気がしたからだ。
とにかく、外に出る準備をしないと。
このままだと一人で部屋にいても何も始まらない。状況が分からないままだ。
黒いヘアゴムで茶髪の髪を一つに束ねてポニーテールにした。化粧で赤みを差すチークを頬に施さないと千紗の肌は白く透明で生きている感じがしない。千紗は危うげな足取りで何とか洗面所に辿り着くと顔を洗おうとして鏡を見た。そして、思わず自分の頬を指先で撫でた。いつもより増して血の気を感じない。死人のようだったから。
気を取り直して蛇口を捻ると水が出た。そこから規則的に溢れ流れる水が不自然で気味が悪く感じて、手をつけられない。
千紗はその時、自分の身に迫る生命の危機感を感じた。今、普通の状態ではない。このまま何気なく日常に溶け込める自信がなかった。
外に出たら何か分かると直感的に思ったが、今、明らかにおかしくて普通ではない状態で外に出る方が危険であるかもしれない。
千紗は途方に暮れた。
(どうしよう、…私、変だ。おかしくなっちゃったんだ)
目の前が真っ暗になる。千紗はその場に力なく座り込んだ。時間だけが過ぎていく。
千紗は座り込んだまま何もできなくなった。
体全体が熱帯びている。頭が割れるように痛い。内から壊れていっているみたいだ。
ここままだと突然死もありうる。
意識も薄らいで五感がバラバラになるような浮遊感に身を委ねた。
(…でも、この感覚は初めてじゃない)
闇に落ちるとき千紗は不思議な懐かしさを感じていた。
呼吸が乱れる。息苦しさにじんわりと涙が出て来て視界が白く霞んだ。目尻からぽろり、と一滴の涙が溢れる。苦しさと若い身で水で噎せている情けなさで涙腺が刺激された。去年祖母が亡くなって悲しくても泣けなかったのに、こんな時に泣くなんて、と自分に失望して更に涙が流れる。
(何、これ…水も受け付けない。私の身体はどうなってしまったの)
水で濡れた口元を手の甲で拭う。水が喉を通った瞬間、強い焼けるような痛みと煮えたお湯を飲んだような熱さと同時に感じた。
まだ、舌がじりじりと痺れるような感覚が残っている。
ピピピピ…
アラームが飲食店の出勤時間を知らせる。いつもは暫く無視して準備に取り掛かるのだが直ぐに千紗は青い顔で携帯電話を手に取るとアラームの設定を解除した。
無機質な機械的にリズムを刻む音が不安な気持ちを掻き立て無用に際限なく自分の中で広げるような気がしたからだ。
とにかく、外に出る準備をしないと。
このままだと一人で部屋にいても何も始まらない。状況が分からないままだ。
黒いヘアゴムで茶髪の髪を一つに束ねてポニーテールにした。化粧で赤みを差すチークを頬に施さないと千紗の肌は白く透明で生きている感じがしない。千紗は危うげな足取りで何とか洗面所に辿り着くと顔を洗おうとして鏡を見た。そして、思わず自分の頬を指先で撫でた。いつもより増して血の気を感じない。死人のようだったから。
気を取り直して蛇口を捻ると水が出た。そこから規則的に溢れ流れる水が不自然で気味が悪く感じて、手をつけられない。
千紗はその時、自分の身に迫る生命の危機感を感じた。今、普通の状態ではない。このまま何気なく日常に溶け込める自信がなかった。
外に出たら何か分かると直感的に思ったが、今、明らかにおかしくて普通ではない状態で外に出る方が危険であるかもしれない。
千紗は途方に暮れた。
(どうしよう、…私、変だ。おかしくなっちゃったんだ)
目の前が真っ暗になる。千紗はその場に力なく座り込んだ。時間だけが過ぎていく。
千紗は座り込んだまま何もできなくなった。
体全体が熱帯びている。頭が割れるように痛い。内から壊れていっているみたいだ。
ここままだと突然死もありうる。
意識も薄らいで五感がバラバラになるような浮遊感に身を委ねた。
(…でも、この感覚は初めてじゃない)
闇に落ちるとき千紗は不思議な懐かしさを感じていた。
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