あの頃の思い出は、いつまでも呪いのように。

gresil

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思い出との再会

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 夏花と食事をした翌日の昼休み、俺は遊崎と男性職員用の休憩室で昼食を摂っていた。

 昨日の事を話すかどうか迷っていたが、一応相談に乗ってもらった手前、報告くらいはしておくべきだろう。そう思った俺は、お互い食事が終わったタイミングで切り出した。

「あのさ……笑い話として聞いてほしいんだが……」
「ん? なんだよ?」
「昨日話してた女の子……彼氏いたわ」

 遊崎は一瞬、目を点にして固まっていたが、俺の顔を見て吹き出した。

「あーはっはっは! やっぱり言ったとおりだろ? まあ、現実はそんなもんだって!」

 遊崎は腹を抱えながら声を出して笑い、休憩室内にその笑い声が響いた。座敷で横になっていたドクターに睨まれたので、二人で申し訳なさそうに縮こまる。
俺は声のトーンを控えめにしながら遊崎を睨みつけて言った。 

「笑い話として聞けとは言ったが、ここまで盛大に笑われると腹が立つな」
「いや鷹司、朝からテンション低かったし、少しは気が楽になるかと思って」
「まあ、少しマシにはなったかな……」
「だろ? それで結局、昨日はどんな話をしたんだよ?」
「……よく覚えてねえ」
「なんだそりゃ」
「彼氏いたのがショック過ぎて全部ぶっ飛んじまった」
「そこまで深刻な表情されると、これ以上は笑えねえよ……」

 碧生の話題を持ち掛けた後も、そこから昔話で盛り上がるようなことはなかった。意図的に避けられていたような気がしなくもないが、碧生の名字を聞いたあとはその後の会話は上の空だったので、本当にどんな話をしたのか覚えていない。
 時間としては二時間くらい滞在した後、駅で別れてそこで終わり。
 互いにじゃあまたね、と言って別れたが、もう会う理由もないだろうと思うのが正直なところである。
「それで? 鷹司はこれからどうするつもりなんだ?」

「どうするって……何がだよ?」
「だから、その恋愛したいっていうのとか、彼女作りたいっていうことだよ」
「あー……もう、無理だろうなあ……」

 夏花と別れた帰り道、電車の中ですぐに宮藤碧生の名前をネットで検索してみたが、似た名前の芸能人がいくつかヒットしただけで、完全一致は一件もなかった。
 最初からあまり期待していなかったが、碧生に関してはもうこれ以上の情報を得ることは難しい。つまり、俺が恋愛や恋人を作ることは事実上、不可能になってしまったというわけだ。これはもう、諦めざるを得ないだろう。

「まあ、鷹司ならそのうち彼女できるって」
「そういう根拠のない慰めは辞めてくれ。割とガチでヘこでるんだって……」
「こりゃ重症だわ。色んな意味で」

 そして昼休憩を終え、俺は気が滅入ったまま薬剤部へと戻った。
 遊崎に話したことで再びダメージを負ったような気がする。これは遊崎が悪いとかではなく、単純に思い出してブーメランを食らった形だ。当面、この話題には触れたくない。
 薬剤部へ入ると、俺の作業用のデスクの前に白石さんが座っていた。白石さんは俺の姿に気付くと笑顔でひらひらと手を振った。

「鷹司さーん。お疲れ様でーす」
「いや……なんで俺の席に座ってんの?」
「んんー?? 鷹司さん、なんか元気ないです??」

 白石さんは心配そうに俺の顔を上目遣いで覗き込む。

「別に…………それで、要件は?」
「あ、私今休憩中なんで遊びにきただけです」
「遊びにくる場所じゃないし、普通に邪魔だから戻ってくれないかな?」
「なーんか今日の鷹司さんこわーい。やっぱりなんかあったんじゃないんですかあ?」

 なんかあったかと聞かれればそれは当然あったのだが、もうこの話題はしたくないんだ。どうにか適当にあしらって早く戻ってもらえないかと思案する。
 すると、少し遅れて入ってきた遊崎がへらへらと笑いながら口を挟む。

「コイツ、昨日フラれたんだよ」
「おい! 遊崎!」
「別にいいじゃねえか。そこの天使に慰めてもらえば」
「やだよ。それに白石さんだってこんな話、興味ないだろうし」

 チラリと白川さんの方を見る。白石さんは強張った表情で何やらブツブツ呟いていた。

「ちょ……ちょっと待って……鷹司さんがフラれた?? それって好きな人がいたってこと?? そんな……鷹司さんに限ってそんなことは……」
「白石さん?」
「私!! その話、気になります!!!」

 グイっと身を乗り出して白石さんは勢いよく言う。

「ええ……やだよ」
「そこをなんとか!!」
「頼むから、自分の持ち場に戻ってくれないかな?」
「絶対イヤです!! その話の詳細を聞くまではここを動きません!!」

 そう言って白石さんは再び俺の席に座った。何をそんなに知りたがるのかは分からないが、俺はもうこの話したくないんだけどな。本当に勘弁してほしい。

「いやー実はコイツ、昨日さ――」
「お前は余計なことを言うな」
「でも動かないって言ってんじゃん」
「ほっとけば休憩時間終わって戻るしかないだろ」
「私、このままほっとかれるんですか!!??」
「今、そこ使わないから勝手にすればいい」

 そういって俺は薬品庫の方へ向かう。白石さんがなにやら騒ぎ立てているようだが、そこまで構っていられない。薬品庫のドアノブへ手を伸ばしたとき、別の人物に声を掛けられた。
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