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一章
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しおりを挟む「……あんな男が公爵?……貴族ってやっぱり穢らわしいのね」
ふん、と鼻で笑った少女は、ミーシャがなかなか動かないので、迷惑気に上を見上げた。そして、彼女が浮かべていた表情に、少し驚く。ミーシャは怯えていた。客からどんな扱いをされても笑っていた彼女が、真っ青で震えているのを見たのは初めてだった。
「……公爵様っていうのはウチの店でのお客様の呼び名よ……本当に公爵かどうかは……知らないわ……」
「……ふうん」
「まずいことになったかも……アイツ、アンタのこと……気に入ってた……」
「それがどうかしたの?」
「………………あいつ、加虐趣味かつ被加虐趣味で、人形偏愛症でもあって自己女性化愛もありつつ小児性愛と青年性愛者なのよ!!」
「………………かぎゃ……?」
「ああああもう!つまりどヘンタイなの!」
ミーシャは、両腕で自らを抱きしめた。
「……つまり、あいつに買われたら、私は死ぬっていうこと?」
「……死には……しないかも、しれない、けど……」
死ぬよりひどいかもしれない、とはミーシャは続けられなかった。
「そっか。今までありがとう、ミーシャ」
「はっ!?……ど、どういうこと!?」
「だって、もう会えないかも知れないんでしょ?私が売られたら。そうだ、ポーにも、ありがとうって伝えておいて」
「あ、あんた……何言って……」
「この街で、私なんかのこと、気にかけてくれたのは二人だけ。クソみたいな街だけど、二人のことは……嫌いじゃなかった。ミーシャとポーも、自分の思う通りに、生きられると、いいね」
ミーシャは、開いた口が塞がらなかった。この、痩せぎすで、大の男に殴られたら、吹き飛んでしまいそうな薄っぺらい身体の少女が、何かとても大きなものに見えたのだ。
「じゃあ、元気で」
「……っ……あ…………」
少女は、言うことは言ったとばかりに、後ろを振り返ることなく去っていった。ミーシャは掛ける言葉が見つからなかった。
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