英雄の娘は死の運命を回避したい

まふ

文字の大きさ
4 / 16
一章

商品

しおりを挟む


「……あんな男が公爵?……貴族ってやっぱり穢らわしいのね」

 ふん、と鼻で笑った少女は、ミーシャがなかなか動かないので、迷惑気に上を見上げた。そして、彼女が浮かべていた表情に、少し驚く。ミーシャは怯えていた。客からどんな扱いをされても笑っていた彼女が、真っ青で震えているのを見たのは初めてだった。

「……っていうのはウチの店でのお客様の呼び名よ……本当に公爵かどうかは……知らないわ……」
「……ふうん」
「まずいことになったかも……アイツ、アンタのこと……気に入ってた……」
「それがどうかしたの?」
「………………あいつ、加虐趣味かつ被加虐趣味で、人形偏愛症でもあって自己女性化愛もありつつ小児性愛と青年性愛者なのよ!!」
「………………かぎゃ……?」
「ああああもう!つまりどヘンタイなの!」

 ミーシャは、両腕で自らを抱きしめた。

「……つまり、あいつに買われたら、私は死ぬっていうこと?」
「……死には……しないかも、しれない、けど……」

 死ぬよりひどいかもしれない、とはミーシャは続けられなかった。

「そっか。今までありがとう、ミーシャ」
「はっ!?……ど、どういうこと!?」
「だって、もう会えないかも知れないんでしょ?私が売られたら。そうだ、ポーにも、ありがとうって伝えておいて」
「あ、あんた……何言って……」
「この街で、私なんかのこと、気にかけてくれたのは二人だけ。クソみたいな街だけど、二人のことは……嫌いじゃなかった。ミーシャとポーも、自分の思う通りに、生きられると、いいね」

 ミーシャは、開いた口が塞がらなかった。この、痩せぎすで、大の男に殴られたら、吹き飛んでしまいそうな薄っぺらい身体の少女が、何かとても大きなものに見えたのだ。

「じゃあ、元気で」
「……っ……あ…………」

 少女は、言うことは言ったとばかりに、後ろを振り返ることなく去っていった。ミーシャは掛ける言葉が見つからなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

処理中です...