艶夜に、ほのめく。

篠原愛紀

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三夜、ウソツキと正直者

三夜、ウソツキと正直者 三

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 泉さんの部屋はリビングダイニングで20畳ぐらいあるから、広いと言えば広い方だ。
 前、三年も一緒に住んでいたあの家は、このリビングにすっぽり全部収まってしまうだろうし。
 だけど、ソファベッドとL型ソファは二つも要るのかな。
 アンティーク物なので値段も驚いて、顎が外れるかと思った。
 いや、最終的には泉さんが決めるんだけど。

「じゃあ決定だね。土日には届くらしいよ」

 今まで龍一がお金を出してくれなさすぎたのもあるけど、泉さんはお金を出し過ぎな気がする。
 生活水準が違いすぎるのは仕方がないことなのかもしれない。

「……ソファベット、ねえ」

 これは昨日までの会話の中で全く出てこなかった。
 これが、弟の為のような気がして、結局は兄なんだなあと思ってしまった。
 私が気付かないほど馬鹿ではないと分かってるはずなのに、なかなかしたたかだ。
 ランチに、仕事先でよく食べに行くというホテルの三階のレストランへ行く。
 休日なので人が多かったけれど、既に予約をしていたらしい。
 卒がない。仕事ができる泉さんらしいふるまいだった。

「ネックレス、してくれてるんだね」

 泉さんが食事の仕方が綺麗で、緊張しながらパスタをフォークに巻きつけている時だった。
 泉さんは私の食べ方が汚かろいが気にしないだろうけど、隣にいる恋人としては最小限マナーぐらいは身につけたい。
 そんな私の必死さに気付かず、上品に食べながら私の首を指差した。

「え、そうです。でも今までこんな高給なプレゼント貰ったことなくて緊張しちゃう」
「高級?」
「プレゼントなんてコンビニでお菓子買ってきてくれたぐらいですかね」
「はは。じゃあ喜んで貰えたのかな」
「はい」

 指先でネックレスを触ると、泉さんは紅茶を飲みながら笑う。

「じゃあ、昼からは指輪を買いに行くってことでいいよね?」
 じっとこちらを見てくるので、フォークとスプーンを持ったまま固まってしまった。

「いいね?」
 子供を誘うように、甘やかすように言われる。
 私の誘い方も性悪で、普通なら殴られても仕方がないような駆け引きだったのに。
 彼は私を選んでくれるというのか。
 そうか。
 問題が多すぎる彼に、本当の愛だとか安らぎを求める女たちはきっと身を引いていった。
 残ったのは私だけ。私だけが泉さんに求めない。だからいくら根性が捻くれていようとも、私でいいと妥協してくれた。

「よろしくお願いします」

 泉さん。
 私はもう胸が躍る様な恋愛はこりごりなんです。
 浮気やら将来性やら悩んで無駄な数年を生きたいんです。
 貴方ならきっと浮気に興味もない。

 私にもそれなりに興味を持ってるのは、現実から目をそらすためだと分かっても、それが楽だからです。
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