艶夜に、ほのめく。

篠原愛紀

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三夜、ウソツキと正直者

三夜、ウソツキと正直者 六

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 急いで駆け付けたにも関わらず、遊馬さんは受付の綺麗な女性と楽しそうに歓談しているところだった。
 流石の泉さんも小さく口を開けて脱力していた。

 私たちにすぐに気づくと、こちらに来る。が、来ないでほしい。

「よお、すまねえ」

 片手を上げて立っていたのは、遊馬さんだ。
 右腕を三角巾で吊っている。

「よりによって利き腕か」
「咄嗟に右手で受け身を取ったんだ。おかげで他は無傷だ」
「誇らしげに話すな」

 思いっきり足を踏んでやったらしく、遊馬さんは小さく呻く。

「まあ、顔見たし行こうか」
「そうですね」

 大分拍子抜けしたけど、元気そうなので問題ない。
 さっさと駐車場へ向かうが、なぜか遊馬さんも付いてきた。

 そして私たちの車を覗き込む。
 再び泉さんが足を踏んだけどちょっと蹲っただけで、すぐに助手席の紙袋を見て私を向き直った。

「お、指輪のパンフレット。買った?」
「出来あがるのに三週間かかりますけどね」
「っち。もう少し早く事故ったら阻止できたのになあ」

 パチンと指を鳴らす動作がわざとらしすぎて私と泉さんは眉をひそめる。

「帰ろうか、美琴」
「そうですね」
「待ってよ。単車代行して貰ったし、診察代で金ないし。乗せてってば」
「本当に情けない」
「泉さんの弟に思えない」
「暫く刑事の仕事も有給と内勤になって大変なんだ。署までバス一本でいけるあのマンションに暫く世話になっていいだろ?」

 車に乗り込むや否や、後ろから身を乗り出して泉さんへそんな提案をしてきた。
 迎えに来てもらっただけでも感謝してほしいぐらいなのに。


「有給の時は家に居られても困るから自宅に戻れ」

 ん?

「その手じゃ、――仕方がない。嫌だけど、すごく嫌だけど」

 確かに泉さんは露骨に顔をしかめているけど、それは私から見てみれば明らかなポーズだけの顔だった。


「ギプス取れるまでお願いしまーす」


してやった、と言わんばかりの遊馬さんの顔に、泉さんを視線で強くいさめた。

「ごめん。馬鹿な弟だんだけど、ほんの数日、いいかな?」
「……泉さんが良いなら、私はいいけど」
「あーあ。寝袋買わせれば良かった」

 嫌そうに言うけれど、こんな時を見越してソファベットを買ったんじゃないかなって思ってしまった。
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