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こんなところに異世界 ―俺は勇者じゃないとそろそろ気づいてほしい―

ネクロマンサーとの決戦

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 リュートたちが返り討ちにあったことで、膠着状態に陥っている。
 俺も同じように手が出せず、やたらに魔術を放てない状態だった。

 自分を含めて全部で六人いる。
 一気呵成に襲いかかれば、あわよくば討ち取れないものだろうか。

 そう考えていると、黙っていたネクロマンサーが声を上げた。

「どうやら、我とまともに戦えそうなのはそこの二人だけか」

 ……二人。
 誰のことを指したのかと思ったところで、空気が歪むような感覚を覚えた。

 直感的に魔術が発動されたことだけは予測できた。

「――てめえ、何をしやがった!?」

 リュートが見えない何かに押し潰されるように苦しそうにしている。
 他の仲間も同じような状況だった。

「役不足な者たちは休んでいてもらおう」
「おい、ネクロマンサーよ。すぐに仲間を解放しろ」

 その声は敵を威圧するような迫力があった。
 オーウェンが肌のピリつくような気迫を放っている。

「気が立っているようだが、我を倒せば済むだけの話だ」
「……そうか」

 彼は援護を頼むとだけ呟くと、ネクロマンサーのところへ駆けていった。
 間合いは離れていたが、すぐにその距離が詰まる。

 オーウェンは無駄のない動きで骸骨の首めがけて剣を振るった。 
 その一撃は何かに接触して、鈍い金属音が辺りに響いた。

 銀色の刃が敵を捉えたかに見えたが、すんでのところで何かに防がれていた。

「ほう、やるではないか」
「渾身の一撃を防ぐとは化け物め……」

 ネクロマンサーは杖のような物を手にして、彼の剣をブロックしていた。
 オーウェンはすぐさま飛び退いて、敵との間合いを広げた。

 グールがゼロになってから攻撃する手段を考えていたが、決めあぐねている。

 中途半端な威力では効果がなさそうで、出力を上げれば数が限られる。
 骸骨に火を放ったところで効き目があるかも疑問を感じる。

 俺はマナを練りながら、攻撃できるチャンスを窺うしかなかった。

「そこな魔術師よ、おぬしは戦わないのか?」

 退屈そうな声がこちらに響いた。
 骸骨の奥の赤い瞳が視線を向けている。

「……お前の目的は何だ?」 
「ほほう、目的とな。そんなものはない」

 ネクロマンサーは興味なさげに返答した。

 やつに目的があろうとなかろうと、どのみち倒さなければならない。
 攻撃を受けていないうちに、こちらから仕掛けるべきだと判断した。  

 ――全身を流れるマナに意識を向ける。

 俺は右手をかかげて出力を上げた氷魔術を放った。
 凍てつく風とともに複数の氷柱(つらら)が飛んでいく。

 あわよくば、このまま凍らせてしまうつもりだった。

 それらは全て敵に命中して、ネクロマンサーは玉座ごと氷の塊になった。

「やった……のか?」

 俺とオーウェンが見守っていると、ふいに氷塊に亀裂が走った。
 
 ぴしりと砕けるような音がして、氷の魔術は破られてしまった。

「なかなか面白いではないか。次は何を繰り出すつもりだ」

 追い詰めたはずだったが、ネクロマンサーは健在だった。

 ――さあ、どうする。

 俺は頭の中で策を練った。
 油断すればどんな攻撃を繰り出してくるか分からない。 

 早急に効果的な方法を導き出す必要がある。
 炎と氷は効き目が薄そうとなれば、残るは風か雷ぐらいだ。

 風魔術はダメージを与えることが難しい。
 ここは雷を放つ方が賢明だろう。

「オーウェン、少し下がって下さい」
「……ああっ」

 雷の魔術は範囲がアバウトになりがちで制御に神経を注ぐ必要がある。
 彼が近くにいては巻きこんでしまうリスクがあった。 

 両手を掲げて、マナを練り上げていく。
 指先に痺れるような感覚を覚えながら、強力な紫電を発生させた。

 俺は反撃を受ける前に、ネクロマンサーに向けて雷撃を放った。
 洞窟の中で揺らめく閃光が走る。 
 
 荒れ狂う稲妻はやつに直撃した。

 大きな落雷が起きた時のように、すさまじい衝撃を伴って。

「……魔術師よ、想像以上にやるではないか」

 身につけていたローブは破れ、胴体から頭部まで骸骨がむき出しになっていた。
 それでもなお、やつは玉座の肘かけに手を置いて座っている。

 ダメージを与えられようだが、息の根を止められなかったようだ。
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