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最後の戦いの後日譚
はじめての依頼
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アロイスは店の中に入ると給仕の女性に声をかけてから、テーブル席の椅子に腰を下ろした。
それからカナタに別の椅子に座るように促した。
「どうぞ、こちらに」
「あっ、はい」
彼はアロイスの向かい側の椅子に腰かけた。
「ここのおすすめはビーフシチューです」
「そうですか。初めてで勝手が分からないので、同じ注文でいいですよ」
「承知しました」
アロイスは話がまとまったところで、給仕に注文内容を伝えた。
それから二人が当たり障りのない話をしていると、料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。ビーフシチュー二つね」
丸い容器に入ったビーフシチューからは熱々の湯気が上がっている。
付け合わせにパンが付いているようで、特に説明はなかった。
「これは一緒に食べればいいんですよね」
「ええ、そうです」
「ははっ、そんなの当たり前か」
カナタは照れ隠しをするように笑った。
そんな彼の様子を見て、アロイスは微笑ましい気分になったようだ。
「では、食べましょうか」
「そうですね」
二人はやけどに気をつけながら、ビーフシチューを美味しそうに平らげた。
食後には温かい麦茶のようなお茶が出された。
「いやー、とても美味しかったです」
「それはよかった。私はよく来ますが、けっこう気に入っています」
料理の感想を口にした後、カナタは相談所の依頼についてたずねようと思った。
「腹ごしらえが済んだところで聞きたいんですけど、どんな仕事を任せてもらえそうですか?」
「それなんですが、近隣の畑に出る害獣を追い払って頂こうと思っています」
「なるほど、害獣ですか?」
カナタはアロイスに聞き返した。
彼の脳裏にはウィリデにいた頃に大型のウサギを討伐した記憶が浮かんでいた。
「大抵はシカやイノシシです。畑の近くの林から、作物を狙ってきてしまうそうで」
「あまり傷つけたり、殺してしまったりしたくないですけど、追い払うだけでいいですよね?」
「はい、何度か驚かせば危険だと認識して近づかなくなるようです。特に魔法は炎を扱うことができるので、野生動物には効果が高いようです」
カナタは説明に納得して頷いた。
日本生まれ日本育ちの彼にとって、無闇な殺生はハードルが高い。
追い払うだけなのか、絶命させる必要があるかの差は大きかった。
「居候みたいになるのは申し訳ないので、早いうちにその依頼を受けたいです」
「承知しました。明日には現地へ向かえるように調整しましょう」
食事を終えた二人は食堂を後にした。
支払いはアロイス持ちだった。
翌朝、カナタは用意された宿舎で目を覚ました。
簡素でベッドが置かれた一間しかないが、掃除の行き届いた部屋だ。
彼は身支度を整えてから、共用の水場で顔を洗った。
宿舎の利用者は少なく空き部屋は多いらしく、他の関係者とすれ違うことはなかった。
窓の外からは朝の日差しが入り、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。
さわやかな時間の中で、ウィリデの宿舎や世話係のミチルのことを思い返した。
前日に食堂について説明を受けていたので、朝食を食べるために向かった。
宿舎そのものの利用者が少ないこともあり、食堂は閑散としていた。
テーブルの一つにカナタの名前が書かれた札があり、そこに簡単な食事が用意されれていた。
「ふぅ、かろうじて名前が読めてよかった」
カナタは安心するように息をついた。
ウィリデとは異なる文字が使われているものの、微妙に共通点があるため、多少の読解力はある。
彼はウィリデの言語を習得した経験があるため、この世界の言語を覚えるのも時間の問題だろう。
食堂は無人ではなかったものの、他の魔法使いと思しき者たちはカナタに対してよそよそしい様子が見られた。
そのため、彼も無理に声をかけようとはしなかった。
「とりあえず、食べてしまって。初仕事に向かうとするか」
小ぶりのリンゴとパンケーキ。
洋風というか、現代の西洋人も食べていそうな大雑把な組み合わせ。
それでも、頼れる者のいなかったことを考えればマシだと思い、カナタはそれらを淡々と口に運んだ。
食事を終えたカナタは部屋で準備をして、アロイスから指定された場所に向かった。
トリムトの郊外にある農作地帯が目的地だった。
ウィリデの畑とは異なる風景。
カナタはそれを感心するように眺めていた。
「異世界はすごいな。その土地によって、色んな文化があるなんて」
どこまでも広がる畑を堪能した後、カナタは革製の荷物入れから依頼書を取り出した。
農場主が依頼人のため、詳しいことは彼から聞くようにと説明を受けている。
「人を探すには、けっこう広いな」
カナタは畑の間に伸びる道を歩き始めた。
依頼書を片手にうろうろしていると、近くを通りがかった男に呼び止められた。
「そこの青年、もしかして相談所の人かな」
「はい、害獣を追い払う依頼で来ました」
「わしは農場主のブライトだ。すぐに案内する、ついてきてくれ」
「そうですか、分かりました」
カナタは先導するブライトに続いた。
やがて畑の一角に入り、数人の農夫の姿があった。
「――くそ、追い返してもキリがねえっての」
「育ったのを見計らってやがるから、ホントに厄介だな」
彼らは農作業ではなく、獣を追い払っているところだった。
それからカナタに別の椅子に座るように促した。
「どうぞ、こちらに」
「あっ、はい」
彼はアロイスの向かい側の椅子に腰かけた。
「ここのおすすめはビーフシチューです」
「そうですか。初めてで勝手が分からないので、同じ注文でいいですよ」
「承知しました」
アロイスは話がまとまったところで、給仕に注文内容を伝えた。
それから二人が当たり障りのない話をしていると、料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。ビーフシチュー二つね」
丸い容器に入ったビーフシチューからは熱々の湯気が上がっている。
付け合わせにパンが付いているようで、特に説明はなかった。
「これは一緒に食べればいいんですよね」
「ええ、そうです」
「ははっ、そんなの当たり前か」
カナタは照れ隠しをするように笑った。
そんな彼の様子を見て、アロイスは微笑ましい気分になったようだ。
「では、食べましょうか」
「そうですね」
二人はやけどに気をつけながら、ビーフシチューを美味しそうに平らげた。
食後には温かい麦茶のようなお茶が出された。
「いやー、とても美味しかったです」
「それはよかった。私はよく来ますが、けっこう気に入っています」
料理の感想を口にした後、カナタは相談所の依頼についてたずねようと思った。
「腹ごしらえが済んだところで聞きたいんですけど、どんな仕事を任せてもらえそうですか?」
「それなんですが、近隣の畑に出る害獣を追い払って頂こうと思っています」
「なるほど、害獣ですか?」
カナタはアロイスに聞き返した。
彼の脳裏にはウィリデにいた頃に大型のウサギを討伐した記憶が浮かんでいた。
「大抵はシカやイノシシです。畑の近くの林から、作物を狙ってきてしまうそうで」
「あまり傷つけたり、殺してしまったりしたくないですけど、追い払うだけでいいですよね?」
「はい、何度か驚かせば危険だと認識して近づかなくなるようです。特に魔法は炎を扱うことができるので、野生動物には効果が高いようです」
カナタは説明に納得して頷いた。
日本生まれ日本育ちの彼にとって、無闇な殺生はハードルが高い。
追い払うだけなのか、絶命させる必要があるかの差は大きかった。
「居候みたいになるのは申し訳ないので、早いうちにその依頼を受けたいです」
「承知しました。明日には現地へ向かえるように調整しましょう」
食事を終えた二人は食堂を後にした。
支払いはアロイス持ちだった。
翌朝、カナタは用意された宿舎で目を覚ました。
簡素でベッドが置かれた一間しかないが、掃除の行き届いた部屋だ。
彼は身支度を整えてから、共用の水場で顔を洗った。
宿舎の利用者は少なく空き部屋は多いらしく、他の関係者とすれ違うことはなかった。
窓の外からは朝の日差しが入り、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。
さわやかな時間の中で、ウィリデの宿舎や世話係のミチルのことを思い返した。
前日に食堂について説明を受けていたので、朝食を食べるために向かった。
宿舎そのものの利用者が少ないこともあり、食堂は閑散としていた。
テーブルの一つにカナタの名前が書かれた札があり、そこに簡単な食事が用意されれていた。
「ふぅ、かろうじて名前が読めてよかった」
カナタは安心するように息をついた。
ウィリデとは異なる文字が使われているものの、微妙に共通点があるため、多少の読解力はある。
彼はウィリデの言語を習得した経験があるため、この世界の言語を覚えるのも時間の問題だろう。
食堂は無人ではなかったものの、他の魔法使いと思しき者たちはカナタに対してよそよそしい様子が見られた。
そのため、彼も無理に声をかけようとはしなかった。
「とりあえず、食べてしまって。初仕事に向かうとするか」
小ぶりのリンゴとパンケーキ。
洋風というか、現代の西洋人も食べていそうな大雑把な組み合わせ。
それでも、頼れる者のいなかったことを考えればマシだと思い、カナタはそれらを淡々と口に運んだ。
食事を終えたカナタは部屋で準備をして、アロイスから指定された場所に向かった。
トリムトの郊外にある農作地帯が目的地だった。
ウィリデの畑とは異なる風景。
カナタはそれを感心するように眺めていた。
「異世界はすごいな。その土地によって、色んな文化があるなんて」
どこまでも広がる畑を堪能した後、カナタは革製の荷物入れから依頼書を取り出した。
農場主が依頼人のため、詳しいことは彼から聞くようにと説明を受けている。
「人を探すには、けっこう広いな」
カナタは畑の間に伸びる道を歩き始めた。
依頼書を片手にうろうろしていると、近くを通りがかった男に呼び止められた。
「そこの青年、もしかして相談所の人かな」
「はい、害獣を追い払う依頼で来ました」
「わしは農場主のブライトだ。すぐに案内する、ついてきてくれ」
「そうですか、分かりました」
カナタは先導するブライトに続いた。
やがて畑の一角に入り、数人の農夫の姿があった。
「――くそ、追い返してもキリがねえっての」
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彼らは農作業ではなく、獣を追い払っているところだった。
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