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「ゲーム1」2

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 スリラー映画の結末は決まってそうだ。ハッピーエンドで終わることの方が少ない。バッドエンドは定番中の定番。視聴者もそれをどこかで望んでいる。

 俺もその内の一人だった。そして観終わったら次の、新しい映画を漁って楽しむんだ。

 もしかしたら、この状況もそうなのかもしれない。どこかで誰かが俺達の慌てふためく姿を楽しんでいて、ゲームオーバーの先にあるペナルティを食らう様を心待ちにしているんだろう。

 生贄の俺が、恐怖に怯え悶えて死ぬ様を。

「……く、ない……」

「雅……?」

「俺は悪くない……悪くない……悪くねえよっ!」

 いつも自信に満ち溢れている人間と同じとは、到底思えなかった。雅は取り乱し、自分のせいではないと繰り返し唱えるように主張する。ゲームでクリアを目指すどころか、挑みすらしなかった弟に対して、逆上してもおかしくない状況ではあるが、絶望を通り越すと人は冷静になれるのか、「うん、そうだな。お前のせいじゃないよ」と心の中で返していた。

 実際、雅のせいではない。悪いのは俺達をこの状況に陥れたやつだ。すべてはこんなふざけたデスゲームを用意し、どこかでほくそ笑んでいるであろうゲームマスターのせいだ。

 それに、雅だからクリアできなかったとは断言できない。もしも、このゲームのプレイヤーが雅でなく、ゲームステージ外で観覧しているあの三人の誰かだったとしても、クリアはできなかったかもしれない。

 逆にいえば、生贄が俺じゃなかったら、クリアできていたかもしれないんだ。

 ああ、腕が痛い。吊るされてからまだ五分と経っていないというのに、上がった両腕がもう痺れてきた。感覚もあるようでない。普段から運動……せめてラジオ体操くらいしていれば、耐えられただろうか。いや、それももう終わるんだ。痺れようが、疲れようが、どうでもいい。

 はあ……と、これみよがしに嘆息する。そんな俺を見た雅が、気に障ったのか怒り散らしながら叫んだ。

「んだよ、兄貴……! 一丁前に落胆してやがんのか?」

「違うよ。もう最後だなーって……ただ、実感しただけだよ」

「ふん! 言っとくけどな、俺はなんっにも悪くねえからな! だいたい、こんなんやらされるくらいなら、死んだ方がマシだ! 俺は悪くねえ! 俺は悪くねえんだよっ、ちくしょうっ!」

 確かに。このゲームは人によって、死よりも耐え難い行為だろう。でも、それは生贄がペナルティを負うから雅も早々に放棄することができたわけで、もしこれがプレイヤー自身に課せられるペナルティなのだとしたら、どうだっただろうか。こんな簡単に、「死んだ方がマシ」だなんて言っていないのかもしれない。

 そうこうしているうちに、壁面にはデカデカと『ペナルティ』という言葉が表示された。カタカナでとてもよくわかりやすい。

 雅がどこかほっとしたような表情で、俺に向かってヒラヒラと手を振ってみせた。

「あばよ。兄貴。無事に脱出できたら、花くらいは添えてやるからよ」

 最後まで雅は兄の心配をしなかった。ああ、虚しいな。虚しすぎて、もういっそ清々しい。

 でもどうか。どうか苦しまず、ひと思いにしてくれますように!

 俺は心の中で強く願った。その瞬間、ニュルニュル! と、顔のない蛇のような細長い生き物が床から這い出てきた。これが、ペナルティ? けれど、それはなぜか俺の足元からではなく……

「はあっ!?」

「えっ!?」

 ペナルティを負うはずのない、プレイヤーの雅の足元から現れたんだ。

「な……何だよ、これっ!? 蛇かっ? うぞうぞと出てきやがってっ……っ……気持ち悪いっ……!」

 それは一匹や二匹ではなく、十匹や二十匹でもない。数百といった数の蛇が、ものすごいスピードで雅の身体を這い上がり、絡みついていった。

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