上 下
87 / 241
初☆デート!

20

しおりを挟む
 ――――…





「おなかいっぱい~……!」

「でしょうね」

「う~……苦しい……」

「自業自得です」

「う~……」

「特大サイズのポップコーンにコーラ二杯。その上、パフェやデザートを合わせて三品も食べていたとは……貴方の将来が不安になります」

「うぅ……」

 映画が終わると、僕は食べすぎで苦しんでいた。車の中でお腹を抑え、苦しげな呼吸を繰り返す僕に、ハンドルを握っている旦那さまは呆れたようにため息をついた。その通りなんだけどね。

 あ、そうそう車はね。海さんが乗ってきた車なんだよ。海さん、免許持ってたんだよ。びっくりだね。僕は綾瀬さんに送ってもらったけど、海さんは一人でここに来たからね。でも、初めて見る車なんだけどこれ国産車じゃないよね? ……ああ、そんなことよりお腹苦しい。

 ひっひっふー。

「帰ったら胃薬を飲みなさい。それから、明日は粥を作ってあげますから、それを食べなさい」

「はぁいぃ……」

 う~。苦しい。

 お腹を抑えて楽な姿勢はないものかと、横になったり、仰向けになったり、海さんの隣でゴロゴロと体勢を変える。シートベルトをしているから、余計に苦しい。

 いっそのことうつ伏せになれば……。そう思って、ぐっと右側に傾くと、ゴツゴツした何かが僕の骨盤を刺激した。

 あ。そうだった。ジーンズのポケットにしまったまんま……これ、忘れてた。

「海さん」

 車が赤信号で停車した時に、僕は声を掛けた。

「はい」

「今日、その……いろいろあったけど、楽しかったよ。最後に観たホラーも、すごく恐くて面白かったし」

「はい」

「それでね。その……もしかしたら、気に入らないかもしれないんだけどね。あの……ね。僕、一人になった時に、お土産コーナーにいたの。そこでね……あ、海さん。片手だけ出してくれる?」

「?」

 海さんが出してくれた左手に、僕はそっとある物を乗せた。

 それは……

「ストラップ?」

「真ん中にね、トルコ石がついているの。海さん、お誕生日が十二月でしょ。お誕生日プレゼントには、まだ早いかもしれないけど……」

 今日は楽しかったから。

「ありがとうね」

 お礼をしたかったから。

「あ、もしかしたら嫌いかもしれないんだけど。でも、スマホに付けられると思うし……海さん、こういうの、嫌?」

 嫌かな。嫌だったら、残念なんだけど……。

「わっ!?」

 不意討ち。とはこのことだってくらい、急なことだった。

 頭を撫でられた。ただそれだけなんだけど、びっくりして海さんを見る。

 すると。

「ありがとう。一生、大切にします」

 海さんが、見たこともない「キレイ」な笑顔を見せたんだ。








































 どきん。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

豆狸2024読み切り短編集

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:5,516pt お気に入り:2,460

報われない恋の行方〜いつかあなたは私だけを見てくれますか〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:50,546pt お気に入り:3,349

雨に濡れた犬の匂い(SS短文集)

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:454pt お気に入り:0

『欠片の軌跡』オマケ・外伝(短編集)

BL / 連載中 24h.ポイント:99pt お気に入り:8

アデルの子

BL / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:574

そのオメガ、鈍感につき

BL / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:174

恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,210pt お気に入り:1,263

毒花令嬢の逆襲 ~良い子のふりはもうやめました~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:56,178pt お気に入り:3,631

処理中です...