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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】

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 ――――…



 私立想蔵高等学校。全国でもその名を知らない者はいない程、指折りの進学校として有名な男子校。勉学だけでなく、部活動にも力を入れており、力を伸ばす先は進学という枠に当て嵌まらない。学生を分析し、あらゆる才能を開花させ、その人間をどう社会にて活かしていくかを育む理念が「売り」の学校。

 その一方で、一部の生徒を除いては寮制度を利用するよう義務付けられているこの学校は、男子だけの生活ということもあってか、その小さな社会の中で新たな社会を作りあげていた。他校との交流もあるにはあるのだが、異性の枠が殆ど設けられないということもあってか、学生は伴侶として同じ性別の学生を求めるようになるという。教師までもが男性のみというこの学校では、同性同士の交際がごくごく自然の摂理として認知されていた。

 だから何を言いたいのか、というのであれば。

 ……腐のつくお姉さま方が大好きの、典型的なホモ学校なんだよっていうことだ。そんな前知識、欲しくもなかったが仕方なく受け入れるしかなかったのは、俺が新学期の今日からこの学校へ通うことになったからだ。

 げんなりした気持ちが身体に出たのか、滑りそうになったチャリのドロップハンドルを握り直すと、俺はド派手な校門目指してペダルを漕いだ。腰の辺りが熱くなるのを感じると、とりあえず時間に遅れないようにと気を引き締める。

 だが。

「う~わ~……何アレ」

 思わず口に出してしまうほど、遠目越しからでもわかる異様な光景が俺を愕然とさせる。それまで共学にいた俺にとって、コレは異様以外の何物でもない。よくあんなところに通っていられるなあのツインズ……。

 この学校、場所は最寄り駅から離れているにもかかわらず意外とわかりやすい場所にある。だが、敷地面積がとんでもなく広くて、まず一歩ここの敷地に足を踏み入れれば男子しかいない。

 まぁ、そこまでは良かった。野郎なんて野郎でしかないもんだ。ブレザーの制服も着てるし普通の学生だ。そうにしか見えない。

 けれど、校内を取り囲むようにしてあるのは春になったら綺麗だろう桜並木と、真新しくも輝かしいばかりの学園寮の数々。聞いた話だと、学年ごとに寮が違う+部活動ごとに校舎を構えているらしい。

 どんだけ金あんの。

 どんどんどんと連なるどでかい建物の数々を超えていくと、その先にあるのはまるでラスボスであるかのように待ちかまえている本校舎が見える。他にも、北校舎と南校舎、それから生徒会などの委員会が使用出来ると言われている特別校舎があるらしいが、中心であり一段と目立つそこへと向かう俺以外の生徒たちはといえば……

「きゃあああ!」

「生徒会メンバーがいらっしゃったぞ!」

「おはようございますっ! 橘会計! 橘書記!」

「今日もカッコ可愛いです~!」

「「おっはよ~! みんなもカッコ可愛いよ~」」

「きゃー! おはようございますっ! 七海ななみ副会長!」

「こっち向いてください~!」

「おはよ。今日もがんばろーねぇ」

「うおおおお! おはようございますっ! すめらぎ会長!」

「きゃあああ! 今日も一段と恰好いい~!!」

「おはようございます。皆さん。そろそろ予鈴が鳴りますよ。教室に入りましょうね」

「きゃあああああ! は~い!」

 なんなの。アレ。

 ファンクラブっつーか、アイドルオタの集団みたいなのが校門向こう側できゃあきゃあ言ってるんだけど、残念なことに野太い。野太すぎる。

 うわ。鳥肌立ったわ……。噂で聞いてたけど、マジであんなんなの? じゃあ、何。親衛隊っていうのもマジな話?

 うわ~。コレ、ホントに卒業できんのかな。あと一年と……一学期分だろ? 耐えられるかな。

 キーンコーンカーンコーン。

 ああっと、やべ。予鈴鳴ってるわ。急がねぇと。

「しっかり、掴まってて……」

 俺がそう言うと、腰の辺りを一層強く抱きしめられる。やべ……超嬉しい。何としてでも間に合わねぇとな。

「予鈴が鳴ったぞ~! 走れ~!」

「門が閉まるぞ~!!」

「うおおおお!」

 進学校だろうが遅刻ギリギリの人間はいるらしい。走る人間をチャリですいすいと抜いていくと、その先にある校門が閉じられようとしていた。こんだけ広いと、門を潜った向こうにも門があんのね。ありゃ、風紀委員だろうな。二の腕に緑の腕章をつけた学生が重い門を二人掛かりで動かしている。

 ……うん。まぁ、楽勝だろ。

「閉門だ! 予鈴が鳴り終わるまでに校舎内に入れなかった者は各自、生徒手帳を提示せよ! ……って言っても、もう必死に走ってるあいつら遅刻確定……」

 ギャリッ!!

「うおおっ!?」

「ぎゃあ!? なんか飛んできたぁ!?」

「な、なんだっ!? 討ち入りか!?」

 ズシャッ! ……チリン、チリーン!

「え? 自転車?」

「じ、自転車が……校門を飛び越えてきた……」

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