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間章
天才と天才
しおりを挟む「それではダメだ。多分結晶化した大地や晶魔獣から採れた結晶魔石はコピー……劣化培養されたもののはずだ。俺がほしいのは“オリジナル”」
「オリジナル?」
「簡単に言うと“聖女”の霊魂体と同化しているレベルの——成長するオリジナル結晶魔石だ」
いや、わからんよ。
なにそれ。
「あー、つまりだな。結晶魔石はおおまかに二種類あると思え。聖女が体内で成長させられる“オリジナル”と、結晶化した大地や晶魔獣から採れる劣化コピー……おそらくこちらの原材料は取り込んでエネルギー代用とした生物たちの霊魂体を結晶化したもの」
「っ!」
「肉体活動——生命力をエネルギーに変化する“概念”のために消費して、残った霊魂体を結晶魔石として排出し、人類に与えて人口や家畜を増やし世界の維持に使っているんだろう。効率がいいとはいえないが、細々維持するにはこれしかなかったんだろうな」
……じゃあ、俺たちが使っている結晶魔石って……原材料が人間を含む生き物の、霊魂体?
マジかよ……。
「少し待て、ファントム」
「あんだよ」
「お前は俺が『魔法』の権能を持ち、八百年前に世界へ杖と杖の原材料である魔樹、知識と晶魔獣の結晶魔石の使い方を教えた、と言っていたが……俺はそんな記憶ないと言った。結晶魔石の話もそうだ。やはり俺ではない」
ディアスが首を横に振る。
でも、ファントムは時期的にディアスしか『魔王』たり得ないと言っていた。
俺もディアスなら、と思うけど……。
「……。あまり考えたくはなかったが、三号機にジェラルドが乗って王苑寺ギアンの人格データに干渉されそうになった、という話を聞くとお前も“そう”だったんじゃねーのかな、と思う」
「っ、い、いや、しかし……当時は一号機に乗ってはいなかったぞ?」
「脳波を使って催眠状態にできる。うっすらだが、GFエンジンの中身は見当がついてる。うっすらだが」
「そうなのか?」
ディアスが本当に驚いた顔で聞き返す。
さすがギア・フィーネの第一人者!
中身は特に謎だと言われてたのに、見当がついていたのか!
「おそらくだぞ」
「ああ」
「……王苑寺ギアンの脳を薬物で肥大化させたもの」
「「「…………」」」
オ…………オェエエェェ……。
あまりのことに口から唾液が……。
胃液になりそうなので思わず胃を押さえた。
無理すぎる。嘘だと言ってくれぇ。
「登録者の脳波に影響を出している時点で、なんとなくそんな気はしていた。王苑寺ギアンの脳波に、登録者の脳波が時間をかけて同調していくのだと思う。それにより、王苑寺ギアンは登録者を間接的に操れるようになる。ギア・フィーネに最初から搭載されている擬似人格データは、王苑寺ギアンのものだ。一号機と三号機が幼い子どもを最初の登録者に選んだのは、脳波や思想が刷り込みやすかったからではないか——と思っている。ラウトも登録者になったのは15歳の時……ガキの時だしな。二号機、シズフが登録者になったのは大人と子どもの脳波同調速度の調査ではないか? そしておそらくアベルトが選ばれたのは側に“歌い手”たるリリファがいたから。“歌い手”が近くにいた場合の登録者の同調速度の調査のような気がしてならない」
怒涛のセリフ量。
そして、吐き気を催すような内容。
調査。
登録者たちが選ばれたことさえ、一種の研究だったのか。
「……俺は?」
またも首を傾げるディアス。
た、確かに?
ディアスが選ばれたのは、なんで?
ディアスが登録者になったのは、一応成人済みだったみたいなのに?
「お前の場合シンプルに頭良かったからじゃね?」
「む、むう?」
「ああ、6歳で遺伝学研究者になって一流大学卒業したとかなんとか言ってたな」
「ヤバくない?」
ラウトがジト目でディアスを睨む。
当時の大学って、うちの学院よりもハイレベルだろう。
しかもアスメジスア基国は相当に能力が高いと聞いている。
ディアスって、そんなに頭よかったの……!?
「そういえばギアンもディアスに対して『善性すぎる』とは言っていたけど、自分以外に世界の問題を解決しうるのはディアスだけ、と認めてはいたね」
「過大評価すぎる」
「そんなこともないだろう」
珍しく、と言っていいのか。
ラウトが首を横に振るディアスに対して即座に否定する。
ディアスの頭脳って、王苑寺ギアンが認めるレベルだったのか……!
「……でも確かにギアンなら、自分と同等で自分とは真逆の性質を持つ者を登録者にしたいって思いそうだね」
デュレオまでそんなこと言うし。
っていうかそこはたかとなくギアンがディアスと真逆の性質って言ってる。
ディアスほどの善人の真逆って、極悪人じゃん。
「はいは~い。ご先祖様~」
「なんだよ? ジェラルド」
「脳みそって大きくなるの~?」
「薬で細胞増殖させて肥大化させる技術があるんだよ。ってもそれで脳みそデカくしても、脳みそは普段本来の能力10%しか使ってないと言われている。その残り90%を使いこなせるようになったら、人間はもっと飛躍できるのではないか、という研究をしていたところがある」
「ええ……」
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