ホラー系乙女ゲームの悪役令嬢はVtuberになって破滅エンドを回避したい

古森きり

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新しい覚悟を秋月に話す

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 その日の夕方。
 家に帰って、いつも通り秋月さんに会いに行った。
 そして、どこまで信じてもらえるかわからないけれど、この世界がゲームの世界であることや私が悪役令嬢であること、攻略対象たちも死亡エンドがあることを相談してみることにした。
 今の私には秋月さんしか味方がいないから。
 もちろんそこまでして助けてくれるかどうかはわからない。
 わからないけれど、『名前に誓って味方になる』とまで言ってくれたのだから信じてみようと思う。

「お帰りなさい、真宵」
「ただいま、秋月さん。あの、あの、ちょっと話をしたいことがあるんだ」
「うん? なぁに?」

 部屋の中に招いてくれて、障子を閉じてくれる。
 春だけれどまだ肌寒い。
 今日は特に。
 座布団を敷いてくれて、お茶も淹れてくれて、一息ついてから話し始めた。
 私は転生してきたらしいこと。
 確信はないが、多分死んで、転生して、この体に入った。
 そしてこの世界はゲームの舞台。
 いつかヒロインが現れて、攻略対象のルートによっては私も、その攻略対象も死ぬ。
 祟り神になって、ヒロインに祓われるのだ。
 悪役令嬢の私も、攻略対象たちも心に深い闇を抱え穢れに蝕まれる環境にある。
 それを好転させるか、悪化させるかはヒロインの選択肢次第。
 私はその未来を知っているから、自分の力でその破滅エンドを回避したい。

「秋月さんは、私の話を信じなくてもいいけれど……私はそう動くつもりだから……その……そういう理由でも、今まで通りに、私に色々、教えてくれますか?」

 私としては秋月さんにこのまま教えてもらいたい。
 聞くと肘置きに肘を置き、体の重心を傾けつつ「へえ」と軽い感想。

「もちろん構わないよ」
「な、なんか軽くない? 反応」
「元々君の中の魂が、元の真宵のものとは別物なのには気づいていたしね。むしろやっと全貌が理解できた、って感じかな。それで――ここがゲームの世界?」
「そ、そう。私が前世でやっていたスマホのゲーム」
「スマホ……?」

 スマホないのか。
 携帯電話の進化版、と身振り手振りで説明するとようやく頷いて「二つ折りのやつね」と理解してくれた。
 二つ折り携帯電話はあるらしい。

「それでゲームができるようになるんだ? すごいねぇ。未来の話という感じかな」
「う、うん」
「ぶいちゅーばーというのもよくわからないけれど、その中身が声を当てた攻略対象? と今日会ったというわけか。で、彼も助けたい、と」
「うん。だって……理不尽でしょ。私、理不尽なの、嫌いなの。許せないの。なんで殺されたのかわからない。あんな理不尽許せない」
「ふむ」

 今でも、心が納得していない。
 拳を握り締める。
 小さく頼りない拳だ。
 そんな私の手に秋月の手が重なる。
 大きく綺麗な男の人の手。
 でもあたたかい。
 あたたかいし、彼の“気”に触れてハッと顔を上げる。

「あいにくと――僕はテレビやパソコンは与えられているが、携帯電話は外部と知り合いもいないから持っていない程度には信用もされていない。いや、“信仰”されていないというべきかな。菊子の前の代からどうも僕の扱いが信仰から封印に変わっている。だから君には――対価として僕の自由を要求するつもりだったのだけれど」
「座敷童子、なの? 秋月さん」
「もう気を遣ってさん付けなんてしなくていいよ。そう」

 ふわ、と白い光を纏って大人の色気ある男性の姿から、私よりも十歳くらい年上の子どもの姿に変わる秋月。
 私が正体を見破ったことを「よく言い当てたね。もっと先になるかと思っていた」と言われる。
 手を重ねた時に、本当になんとなくそう思っただけなのだが。

「昔の千頭山せんずやま家の者たちはよかった。僕、大人になる少し前に死んだのだけれど、戦国の世の頃でね。父は家臣に裏切られて後ろから刺され、僕は初陣で首を断たれて恨み辛みで鬼のようになっていたんだ。そこを千頭山せんずやまの娘がとても丁重に鎮めて、家に迎えてくれた。家で丁寧に祟る心を鎮めてくれる代わりに家を護る“契約”をしたの。それが僕と千頭山せんずやま家の歴史の始まり」
「じゃあ……秋月は家の守り神なの……?」
「そうだね、何代もかけて僕を鎮静化して、座敷童子に昇華したんだ。元は“祟り鬼”だよ。けれど、菊子の前の代から僕が見えなくなっているみたい。最近は朝の捧げ物も形骸化していて、祈る者もない。それなのに結界は相変わらず強いから、僕もどうしようかなぁ、と考えていたんだ」

 祟り鬼……。
 祟りを振り撒く、祟り神の一歩前の姿。
 これがよりひどくなると祟り神になる。
 誰にも供養や浄霊もしてもらえずに、他の悪魔悪鬼悪霊を喰らい続けると元々が神でなくともそれに至る。
 なにそれ、怖い。
 でも、秋月は千頭山せんずやまのご先祖様に家に招かれ、供養を数百年続けられた結果隠の気が反転して座敷童子になった。
 当時――戦国時代では十五歳から元服――成人とされていたため中学生くらいの見た目だが間もなく元服だからとらと戦場に連れて行かれた秋月は、身内からの裏切りで父共々殺された。
 その恨みは深く、生まれつき霊力が高かったこともあり悪霊悪魔をすっ飛ばして悪鬼に変化。
 千頭山せんずやま家でご供養を受けて浄化されたあと、子どもだったから神ではなく座敷童子になったんだろう。
 そのくらいには昔の千頭山せんずやま一族のことを愛おしく思って、感謝してくれていた。
 大人の姿をとっていたのは、そうして長い時間千頭山せんずやまの家で家族のように接してきたからいつしか『おとなになりたかった』と思うようになったから。
 そう聞くと、なんか可愛い。

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