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14 トゥオネタル族
307 トゥオネタルのダンジョン1
しおりを挟む魔王討伐集会を行った翌日、ヤルモたちはさっそく武器防具ゲット作戦に取り掛かる。
「「「「「ヒャッハ~~~!!」」」」」
ダンジョンに入ったトゥオネタル族は水を得た魚状態。地下1階でも人族の領域では上級ダンジョン下層にいるような強さのモンスターだらけなのに、素手でぶっ飛ばして進軍している。
「元気だね~……」
ヤルモはモンスターの強さに驚いていたが、トゥオネタル族に呆れてどうでもよくなったみたいだ。
「俺たちは先を急ごっか」
「うむ!」
水を得た魚はこちらにも。故郷のダンジョンに戻ったイロナは、飛ばしまくっているのでヤルモはついて行くのがやっと。
「あんまり飛ばしすぎると刀が使い物にならなくなるぞ~」
「ムッ……それは困る。ロングソードを買い足しておいただろ? それを出せ」
「いいけど……大事に使ってくれよ?」
「行くぞ~~~!!」
「はぁ~……」
お気に入りのレジェンドの刀を思い出させてイロナのペースを落とそうとしたヤルモだが、ロングソードを奪われてあまりスピードが変わらず。
このままではすぐに折られるのではないかと、損益計算をしている。十本も買い足すんじゃなかったと……
イロナが張り切っていてはヤルモに経験値が回って来ないので、ヤルモもファイアー。ロケット弾を当ててちょっとでも経験値を稼ぐ。それと、ドロップアイテム漁りも大事な仕事だ。
イロナの大活躍とヤルモの道案内で、出遅れていたにも関わらず、気付けば先頭集団を追い越すのであった。
トゥオネタル族はというと、はっちゃけているわりには単独行動はいない。イロナとトピアスの脅しが聞いているのだろう。
こちらはヤルモパーティとは違い、散り散りにダンジョン内を動き回って、アイテムを掻き集める。というか、あまり道を覚えていないから、四方八方に散って道を確認しているようだ。
そのおかげで宝箱のアイテムも踏み潰されずに回収できているので、ヤルモの作戦は順調に進んでいる。一部ブーブー言っている者はいるが、だいたいが家族で動いているので、目上の人に押さえつけられている若者だ。
嬉しい誤算のおかげで地下20階のセーフティーエリアに着いた頃には、アイテムが山積みされるのであった。
「おっし! 武器の山分けだ!!」
ヤルモが簡単な仕分けをしたら、トピアスの音頭で武器の取り合い。人数分は無いので、まだ進む者が優先。
次のセーフティーエリアは武器が無い者が優先されると言ったら、取り合いは収まった。下に行けばもっといい武器があると思ったのだろう。
防具関連は人気が無い。兜、ガントレット、足当て以外は売れないので、こちらは持ち帰ってもらう。服やアクセサリーは女性にプレゼント。残りはヤルモのポケットに入れるつもりらしい……
大量の回復アイテムは、均等に分配。あまり使う場面が少ないだろうから、次回入荷分は地上に送る予定だ。
補助アイテムも大量に手に入ったが、こちらは誰も手を付けないので、ヤルモが悪い顔で笑っていた。チリも積もればとか思ってるっぽい。
食料関連は、足が早い物は今晩のごはん。携帯食は荷物持ちが保管して、明日以降の食料となる。増え過ぎれば、こちらも地上に送る予定だ。
各種配分が終わると、夕食の始まり。ヤルモとイロナは人から離れた場所にテントを張って料理をしていたら、チラホラとギャラリーが集まって来た。
「なんだこれは?」
その中にはトピアスもいたので、ヤルモに質問している。
「そっちはテント。寝る場所だ」
「こんなペラッペラなの必要なのか?」
「人に見られたくないんだよ」
「ふ~ん……人族は変わってるな」
どうやらトゥオネタル族ではマントでゴロ寝しかしたことがないから、人族の文化が気になるらしい。
「んで……そのいい匂いがするのはなんだ?」
「シチューって食べ物だ」
「こんなドロドロしてる物を食ってるのか……」
「気になるなら食ってみるか?」
ヤルモはできたてホヤホヤのシチューを木の器に盛って、トピアスに渡す。
「これが食べ物ね~……噛み応えがないから、ぜったい腹に溜まらないだらうな……うっ!?」
トピアスは文句を言いながらシチューをすすると、体が硬直した。
「なんだ? 舌を火傷したか??」
「う~~ま~~い~~ぞ~~~」
ヤルモが心配してもこの始末。トピアスは始めての人族料理に感動しただけっぽい。おかわりもご所望で、トピアスが興奮してそんなことを大声で言うものだから、トゥオネタル族は「くれくれ」の大合唱となってしまった。
「あとでだ! 俺たちが食ってからだ! じゃないと、イロナに殺されるぞ~~~!!」
そう。この料理はイロナに献上する物。ヤルモが好き勝手に譲っていい物ではないのだ。
結局はキレたイロナに吹き飛ばされて、待たされるトゥオネタル族であったとさ。
「鍋に使えそうな物を探して来い。鉄製品がいいな」
トゥオネタル族が物欲しそうに見ていては、ヤルモの食欲が減退。少しでも目を減らそうと、先に準備させる。
その間も、イロナは優雅に食事。ヤルモは腹に掻き込んで、質問は受け付けない。パンまで取られたくなかったようだ。
それから残ったシチューは、料理を覚えたい人に優先的に食べさせて味の感想を聞く。というより、毎日大量に作りたくないから人を募ったみたいだ。
「じゃあ作っていくぞ。メモは忘れるなよ」
「「「はい!」」」
「「「おう!」」」
トゥオネタル族に初の先生爆誕。皆、ヤルモの話を熱心に聞き、頑張って料理するのであった。
「う~ん……調味料の量、これで合ってるのかな??」
それを教えるヤルモは、素人に毛が生えた程度なのだが……
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