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第二章 メモリー&レイルート
やっぱり変態スケベのバカヤローですね。
しおりを挟む風呂場を覗くと、脱衣所の電気がついていた。
脱衣棚を見渡すが、着替えらしき者はない。一体誰が、何をしにここに来たのだろう。清掃の方だろうか?今が何時かは分からないがこんな時間に行っているのか。
旅館等に泊まるとき、浴槽の掃除はいつしているのかと考えた事はあるが、布団を敷いて、風呂場に人がいなくなったらするものだと思っていた。こんな、日も変わった時間帯に本当に掃除をしているのだろうか?
……何か急に疑わしくなってきた。本当に清掃員か?だがそれ以外に思い当たる節がない。
俺は浴室のドアを音をたてないように開ける。そしてその隙間から中を覗く。
「はぁはぁはぁ……。」
浴室からは女性が喘ぐような声が聞こえる。ヤバい、エロい。下半身が元気になる。
好奇心にかられ、俺はドアを更に開く。
その時、気持ちが高ぶり、ドアを開ける手に力が入る。そして、ギギィ、とドアが音をたててしまう。
「だ、誰ですか!?」
ドアの向こうから声が聞こえた。ヤバい。完全にばれた。どうする、どうするんだ、俺。脳をフル回転させる。て言うかさっきの声どこかで…。
しばらく考えるが、名案は浮かばず、するとドアが開かれる。先程の声の主が向こうからドアを開いたようだ。
「……貴方ですか。何ですか、覗きでもしようと思ってたんですか?…やっぱり変態スケベのバカヤローですね。」
そこには綺麗な空色の髪、銀縁の眼鏡をかけた美少女。レイがそこにたっていた。レイの蔑む様な視線が俺に突き刺さる。
「待って!待ってレイさん!!誤解だから!!」
俺は先程の出来事を誤解がないよう、丁重に説明する。
「……では覗きでは無いと。」
「そもそも脱衣所に着替えがなかったから入浴してた訳じゃないでしょ。」
「……流石は覗きのプロですね。そんな所に目をつけるとは…。」
「いや、違うわ!!!あー、もうめんどくせぇ!!!!」
「ふふ、冗談ですよ。」
いや全く冗談に聞こえない。こいつあれだな、欠点がほぼ無い完璧人間だと思っていたが、そうでもないな。まず色々根に持ちすぎる。あとめんどくさい。
やっぱり完璧な人間なんてこの世にはいないんだろうな。
「所でお前は何やってたんだ。」
不意にした質問。その時、ふと思い出した。レイの喘ぎ声を。途端に心臓の鼓動が早くなる。気まずさにレイから目をそらす。
「私ですか?」
そう答えるレイ。何故かはよく分からないがレイの動作の一つ一つが妙に色っぽく感じる。
……童貞拗らせすぎだろ、俺。
辺りをキョロキョロとする俺を、レイは不思議そうに見るが、それには言及せず質問に答える。
「私は壁の修理ですよ。怪人の襲来で壊れてしまった。」
「……あぁ、なるほど。」
俺は全てを察した。そう言えば風呂場は現在半壊状態だった。レイはその修理を行っていたようだ。しかも一人で。かなりの重労働だ、これは疲れて息も荒れるだろう。よく見てみるとレイは額に汗を浮かべている。
……別に変な想像はしてなかったぞ?俺は。
「でもそういうのって他の守護者達に任せればいいんじゃないか?」
「さっきまではずっと彼女達がやってくれていましたが、不眠不休は流石に辛いと思いまして。」
それで代わってやったというわけか。何だコイツ、いい奴過ぎるだろ。天使か、天使なのか。
「じゃあ今度は俺が代わってやるよ。だからいいよ、休んでて。」
「べ、別に大丈夫ですよそんなこと!!第一にチロさんは客人ですし、それに助けてもらった恩もあります。だから大丈夫ですよ。」
「でもこういう重労働は男の仕事だろ?」
「そ、それでも……。」
頑なに仕事を譲ろうとしないレイ。まあ、確かに客人に仕事をやらせるというのはいささか抵抗があるのは俺も分かる。
「じゃあさ、手伝うよ。一緒に。」
「……いいんですか?」
「ああ、どうせ戻っても寝れないだろうしな。」
もう眠気はすっかり覚めてしまっていた。あんなに体が重かったのに、不思議なものだ。
「…ではよろしくお願いします。」
「おうよ!」
かくして、俺はレイと共に壁工事作業を行った。レイが作業の指示を行い、俺が動く。手際よく作業を進めて、そしてものの数時間で壁工事作業は終わった。
「早かったですね。」
「ああ、少しは寝れる時間がありそうだな。」
レイの質問に、俺は額の汗を拭いながらそう答える。するとレイが少し笑って………
「チロさん、もしよろしければお互い汗をかきましたし、一緒にお風呂にしませんか?」
「……は?」
思わず変な声が出る。それもそうだ。いきなりこんなこといわれたら変な声も出る。
「お前は俺が男だとわかっているよな?」
「ええ。」
「俺に、裸を見られても恥ずかしくないのか?」
「ええ。」
全く物怖じするようすも無く、レイは淡々と答える。俺が困惑し、黙っているとレイは……
「チロさん、前にお嫁にするなら私の様な方がいいと…。そう仰いましたよね?」
「……それは紛れもない“真実”ですか?」
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