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80、綺麗だよ 斗真side

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「綺麗になったよ。頑張ったね。」

泡を綺麗に流して頭を撫でるが体は強ばり床を見つめたまま小さく頷く。

「ちょっとだけ待っててね。」

自分の体もてきとうに洗う。

「上がろうか、」

コクリ

ゆっくりと立ち上がった奏くんの手を持って脱衣所に行く。

「頑張ったね。」

頭を撫でるが反応はなくただ床を見つめている。

自分の腰にタオルを巻いて奏くんを抱きしめて胡座の上に向かい合うように乗せる。

「大丈夫、大丈夫、お風呂終わったよ。綺麗になったよ。」

背中や頭を撫でながら声をかける。
聞こえてるかな?


しばらく声掛け続けてるが反応はない。
どうしよう、透に電話しようかな。

「クチュンっ!」

「あ、ごめんごめん、寒かったよね。」

バスタオルを掛けて拭く。

「奏くん、」

さっきのくしゃみで気がついたのか俺の顔を見てくれた。

「聞こえる?」

コクリ

「服着ようか。」

コクリ

痛くないように服を着せる。


「お風呂…」

「お風呂は終わったよ。」

「きれい…なった?」

不安な表情で俺を見つめる。

「綺麗になったよ。いい匂い」

まだ少し濡れた髪に鼻をつける。

「ほんと…?」

「本当だよ。髪も綺麗だよ。乾かしてさらさらにしようか。」

コクリ
髪に指を通しながら聞くと小さく頷いてくれた。

床に座ったまま奏くんの髪を乾かす。
大人しくじっと待ってくれている。

「終わったよ。ほらさらさらで綺麗だよ。」

ブラシで梳かすと奏くんも自分の髪に指を通して確認している。

「きれい?」

「綺麗だよ。」

今日は異常に綺麗かどうかを気にしてる。

「俺も乾かすからゆっくりしてな。」

俺の胸に耳を当てて体を預けてくれた。

「終わったよ。大丈夫、大丈夫」

多分今風呂から出たことを実感したんだろう。髪を乾かしてる途中から涙が頬を伝い俺の服を濡らしていた。

「声出してもいいよ。大丈夫、大丈夫」

「…っ…ん…っっ……」

声を殺して涙を流す姿を見てるだけで奏くんがどれだけ怖かったかが伝わってくる。

「怖くない、もう大丈夫だからね。」

脱衣場だと風呂が近くて怖いかな。
奏くんを抱き上げて布団がある部屋に移動することにした。

「お部屋行こうね。」




毛布を奏くんの肩に掛けて毛布ごと抱きしめる。

「うっ…ん…っ…っ…」

「声出して良いからねぇ」

「ん…っんぅ…んぅう、ぁぁああ…んぅ」

中々声出すのは難しそうだけどちょっと声出して泣けてる。

「よしよし、大丈夫、大丈夫、頑張ったね。」

泣きたいだけ泣かせ落ち着くのを待った。
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