187 / 342
《183》反逆
──────────────
頭が割れそうに痛い。
目が覚めても、しばらく薄暗い天井を眺めていた。
柔らかなベッドに、体が埋もれている。
見渡すと、そこは豪奢な寝室だった。
体は清潔で、服は新しいものに変わっている。
しかし、血の匂いと濡れた感触は、記憶に新しい。
謎の仮面男と、ルイセ。そして王宮の内部にまで侵入していた反逆者の一味。
『止まれ』
あれは、聖女の能力に間違いない。
(キースや、フィアン様は·····?)
ノワはベッドから飛び起きた。
「安静にしていてください」
不意に、部屋の奥から声が聞こえた。
「聖神力の消耗が大きいはずです」
カーテンの前に、ガタイの良い男が立っていた。
会場の仮面男だ。
「お前·····!」
バランスを崩しベッドから崩れ落ちる。立ち上がろうとするが、身体には力が入らない。
頭上に影が落ちた。
「!」
目の前に、仮面をつけた男がひざまづいた。
近づいた気配は感じられなかった。
「お怪我は·····」
革の手袋をはめた手が差し出される。
「は·····?」
ノワは呆気に取られてから、伸びてきた腕を振り払った。
パシン、と、張り詰めた空気に高い音が響く。
「さ、触るな!」
男はピタリと動きを止めた。
反乱軍の指揮をとり、皇帝を殺した、恐ろしい男。
しかし、先程彼から感じられたのは、こちらを案ずるような態度だ。
何か変だ。
この背格好と声に──やはり覚えがあった。
ノワは恐る恐る手を伸ばす。相手は静かにこちらをまっていた。
合金銅の仮面は、甲高い音を立てて床に落ちた。
ノワは言葉を失った。
赤みの濃い茶髪に、シャープな輪郭。
深緑の瞳は、燃えるような輝きが閉じ込められていた。
「デリック·····?」
それはノワの全身を視線でなぞった。
怪我がないことを確かめ、精悍な顔は、ほっとしたように息を着く。
「はい、ノワくん」
ノワの頭の中は混乱してゆく。
なぜ、彼がここに?
とめどない疑問は、デリックのつぶやきに断ち切られた。
「やっと、2人きりになれましたね」
「は·····?」
「抱き上げたいので、触れることを許していただけますか?ベッドに·····」
「や·····いやだ!」
ノワは尻もちを着いたまま後ずさった。
ベッドの柱に頭をぶつける。デリックは、たちまち心配そうな顔をした。
「来ないで·····近寄らないで!」
震える声を叱咤し、叫ぶ。
「分かりました」
端正な顔立ちが俯く。高い鼻に影が落ちた。
本当に、デリックだ。
「キースは?キースは無事なの?フィアン様は?!」
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
表紙は自作です(笑)
もっちもっちとセゥスです!(笑)
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!
表紙は、Pexelsさまより、Abdalrahman Zenoさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!