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〖55〗不味い状況
しおりを挟む嘲笑まじりの言葉は、リヒトの心を見透かしていた。
「入れ込んでるとこ悪いが、俺はこれっぽっちも興味ねぇんだよ」
(·····入れ込んでる?)
シオンはやはり分からなくて首を傾げる。部屋の空気は妙に殺伐としていた。
「これで満足か?」
壁にトンと肩を預け、赤い瞳は涼しげにリヒトを見返した。
面食らったようなリヒトの表情は初めて見るものだった。
彼は直ぐに笑みを取り戻した。
「そうか」
リヒトが煙草を吸殻に捨てる。
彼の片足がベッドにかけられる。
「·····?わっ」
ゆがんだ身体は引き寄せられた。
「それなら、俺が遊んでやってもいいだろう」
「え·····───んぅ·····っ」
彼の体重がベッドに傾けられる。
唇はぱくりと塞がれた。
身体をまさぐり出した手が、器用に服を乱してゆく。
「はぁ·····っ·····ひぁ···っ?」
耳元に響いたリップ音に、裏返った声が漏れる。
下着まで奪い取られ、優しくも強引に足を開かされてしまう。
体を滑る大きな手が気持ち良い。
視線を薄めた頃、その視界の端に赤色が映った。
リアムだ。
「や、やぁ·····っ···」
こんな事はしたくない。
リアムに見られるのは、他の誰に見られるよりも羞恥心が耐えられない。
「おねが·····っや·····っあ·····♡」
熱い舌に乳頭を舐られる。しつこくそうされるうち、思いとは裏腹に、甘い声がこぼれはじめた。
「や·····やぁ·····♡ぁ、·····っ」
「·····今更どうしたんだ?」
いつもは自ら欲しがる癖にと、低く甘い声が囁く。
「ちが·····っひぅ·····♡」
激しくなる舌の動きに弄ばれ、瞳の膜がじんわりと熱くなる。
口の中に中指と人差し指を押し込まれ、えずきそうになった頃、引き抜かれる。
指先が蜜部に触れた時だった。
ギシリと、ベッドの軋む音がする。
「興味は無いんじゃなかったのか?」
リヒトの言葉に、勘違いすんなと、唸るような声が被せられた。
「いつ、誰が許した?」
熱い手に腕を引っ張られる。
「こいつを抱くのは俺が先だ」
体を預けた胸は熱く、鋼のように硬い。
カチャカチャと響くベルトの音を聞きながら、シオンはそっと彼を振り返った。
「俺は、自分のモンを横取りされるのが大嫌いなんだよ」
気を取られているうちに、前の男が愛撫を再開する。
「えっ···?ま···、···あぅ···♡」
見られることが耐えきれないとは嘆いたが。
これはつまりどういう事だ。先程より不味くなった状況に、シオンは脳内で叫び声を上げた。
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