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〖128〗役たたず
しおりを挟む「あいつは··········」
背の高いシルエットがこちらを振り返る。碧白銀の髪が、涼しく揺らめいていた。
「·····ミオ·····?」
彼はじっと真下を見下ろしていた。
視線の先には、岩場にはまった透明の水晶があった。
「オルトンの核宝」
エドワードが、胸元のホルスターから短剣を抜き取る。
彼は不敵な笑みをのぞかせた。
「この前の借りを返してやる」
しかし、ロミオの様子はどこかおかしい。
白い手が、長剣を両手でにぎりしめる。
彼はそれを持ち上げ、一瞬ピタリと動きを止めた。
「·····まさか」
リアムが呟くのと、ロミオがそれを振り下ろすのは同時だった。
透明な球体に、無数の亀裂が走る。
そして───それは、粉々に砕け散った。
「な·······───·」
「あれれ、可笑しいなぁ」
陽気な男の声が響き渡る。
その場に、新たな気配が加わった。
「宝の保護を命じられていたはずなのに?来てみれば、水晶は木っ端微塵·····──どういう状況っすかね?」
カツン、カツン、と、近づく足音は、二人分。
「どうやら、愚かな裏切り者がいたようだ」
ホールの反対側から、二人の男が姿を現す。
ボルドーと、ワインレッドの髪の男達だ。
シオンは目を見開いた。
彼らが、なぜここに?
「さて残念ながら、お宝はダメになってしまったようです」
バレンに続き、テイラーが歌うように告げる。
国の核である水晶が破壊された。
オルトンはしばらくとせず海に沈むだろう。
「残りの時間は」
ニコリと微笑んだバレンからは柔和な雰囲気が消え去る。
次に覗いたのは、残忍さを含んだ笑みだった。
「ゲームの続きとしましょう」
飛んできた刃を弾いて、エドワードが中央にかけてゆく。
「エル」
リアムは振り返らぬまま言った。
「少し待ってろ」
彼のいた場所に風が立つ。思わず目を薄めた時、リアムは地面を蹴り、空中に飛び上がっていた。
蝶みたいだ。
そう思ったのも束の間だった。
次の瞬間、彼は刃の切っ先のような速さで、テイラーに襲いかかった。
着地とともに大きな衝撃音が響いて、煙が立ち上がる。
シオンはネックレスを握りしめた。
また、何も出来ない。
ゴゴゴゴゴ·····─────。
地鳴りが大きくなってゆく。
地面が揺れ始めた。
ここが崩れるのは、時間の問題だ。
『お前の役割を果たせ』
何か、自分に出来ること。
考えるが、頭は真っ白だ。
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