海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

亜依流.@.@

文字の大きさ
130 / 217

〖128〗役たたず

しおりを挟む








「あいつは··········」


背の高いシルエットがこちらを振り返る。碧白銀の髪が、涼しく揺らめいていた。


「·····ミオ·····?」


彼はじっと真下を見下ろしていた。
視線の先には、岩場にはまった透明の水晶があった。


「オルトンの核宝」


エドワードが、胸元のホルスターから短剣を抜き取る。
彼は不敵な笑みをのぞかせた。


「この前の借りを返してやる」


しかし、ロミオの様子はどこかおかしい。

白い手が、長剣を両手でにぎりしめる。
彼はそれを持ち上げ、一瞬ピタリと動きを止めた。


「·····まさか」


リアムが呟くのと、ロミオがそれを振り下ろすのは同時だった。
透明な球体に、無数の亀裂が走る。
そして───それは、粉々に砕け散った。


「な·······───·」


「あれれ、可笑しいなぁ」


陽気な男の声が響き渡る。
その場に、新たな気配が加わった。


「宝の保護を命じられていたはずなのに?来てみれば、水晶は木っ端微塵·····──どういう状況っすかね?」


カツン、カツン、と、近づく足音は、二人分。


「どうやら、愚かな裏切り者がいたようだ」


ホールの反対側から、二人の男が姿を現す。
ボルドーと、ワインレッドの髪の男達だ。

シオンは目を見開いた。
彼らが、なぜここに?


「さて残念ながら、お宝はダメになってしまったようです」


バレンに続き、テイラーが歌うように告げる。

国の核である水晶が破壊された。
オルトンはしばらくとせず海に沈むだろう。


「残りの時間は」


ニコリと微笑んだバレンからは柔和な雰囲気が消え去る。
次に覗いたのは、残忍さを含んだ笑みだった。


「ゲームの続きとしましょう」


飛んできた刃を弾いて、エドワードが中央にかけてゆく。


「エル」


リアムは振り返らぬまま言った。


「少し待ってろ」


彼のいた場所に風が立つ。思わず目を薄めた時、リアムは地面を蹴り、空中に飛び上がっていた。

蝶みたいだ。
そう思ったのも束の間だった。
次の瞬間、彼は刃の切っ先のような速さで、テイラーに襲いかかった。

着地とともに大きな衝撃音が響いて、煙が立ち上がる。
シオンはネックレスを握りしめた。

また、何も出来ない。



ゴゴゴゴゴ·····─────。



地鳴りが大きくなってゆく。
地面が揺れ始めた。

ここが崩れるのは、時間の問題だ。

『お前の役割を果たせ』

何か、自分に出来ること。
考えるが、頭は真っ白だ。











しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の王子を犯して拐う

月歌(ツキウタ)
BL
祖国の王に家族を殺された男は一人隣国に逃れた。時が満ち、男は隣国の兵となり祖国に攻め込む。そして男は陥落した城に辿り着く。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...