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〖186〗ヨナ島
しおりを挟むこれは島の問題だ。
ましてや、捕虜の自分が、あれこれと考える必要なんてない。
自分には関係ない。
この島で起こっている問題は、自分とは関係ないことだ。
そもそも自分が生き残ることだけで精一杯なのに、他人を同情するなんて、身の程知らずにも程があるというものだ。
(気にしたらダメだ)
間もなくして、酒盛りはお開きとなった。
部屋へ戻り際、肩に軽い重みが加わる。
「"彼"の見張りをしてください」
テイラーが耳打ちした。
「できる限りそばにいて、1人にすることがないように」
なぜ、自分がそんなことを。
「歳も近そうですし·····エルなら、警戒されにくいでしょう」
質問する前に答えを返される。
同時に、なんだか馬鹿にされたような気がする。
断ろうと首をふりかける。それよりも先に、肩に置かれた手が首元を撫で上げた。
「それが難しいようなら、他のお手伝いも考えていますが」
変な鳥肌が立った。
断って薬の試飲なんかを引き受けたら、今度こそどうなるか分からない。
もしかしたらもっと酷なことを支持されるかもしれない。
「うん·····」
シオンは止むを得ず呟いた。
翌朝は少し騒がしかった。
長らく目を覚まさなかった長老の夫人が意識を取り戻したらしい。気分も良く、食欲もあるとの事だった。
その他にも、薬を服用したもの達のほとんどが症状の緩和を報告している。
昨日までは訝しげな顔をしていた住民たちも、外に出ると皆、遠くから丁寧な民族挨拶をしてみせた。シオンは複雑な気分をかかえたまま浜辺を歩いていた。
ぽつりぽつりと、前を進む。
特に意味は無い。ただ、任務に移るまでに、少し心の準備がしたかった。
決して、同年代の男が怖いとか、そんなことではない。
「おい、女男(オンナオトコ)」
酷い呼び方にも、声にも、覚えがある。
望まぬ獲物は自分からやってくるようだ。
シオンは恐る恐る振り返った。
「·····っ」
こめかみに鋭い痛みが走った。
砂浜に、直径三センチくらいの石ころが落ちた。
テオスがこっち目掛けて投げつけてきたのだ。
「帰るつもりなら、他の奴らも連れていけ。それから一生この島に近づくな」
腕を組む様は、既に威圧的だ。
偉そうな口調に、高慢な態度。自分だって来たくてきたわけじゃないのに、石を投げられるような仕打ちを受ける理由も分からない。
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