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しおりを挟む「奴らといる必要があるのか?」
「·····どうして?」
彼は何を知ってるんだ?
自分は、テオスが嫌っていたイディオムの一員なのだ。
ただそれだけだ。
彼が自分を引き止める理由は、いくら考えても思いつかない。
「何も話さなくていい。ただ頷けばいい」
突然やってきて、核心を覗き込もうとしている。誰も気に求めなかった、「シオン」自身の思いをのぞき込むように、日焼けした手が肩を抱きよせた。
「そうすれば俺は、お前を連れていかせない」
硬い体に抱きしめられて、温もりを実感する。
なぜこんなことをするのか?
彼はそんな疑問さえ必要ないという。
彼の背に手を回すことは出来なかった。
抱きしめられている時間はとても長く感じた。こんなふうにされたのが、一体どのくらい昔なのか、頭の片隅で記憶をふりかえっていた。
彼はそっとこちらをのぞきこんできた。
「何がお前を、引き止める?」
「·····」
ここに留まることは出来ない。
そして自分を情けなく思った。
テオスは勇敢で頼もしい。
危険も顧みず、真っ直ぐに伝えてくる瞳に、恐ろしささえ抱くほどに。
強い眼差しに引き込まれそうになる。
殺しに来たのかもしれない。なにかに気がついた彼が、捕らえに来たのかもしれない。
こんな人を、自分はさっき、そう疑ったのだ。
心に入り込むような問いかけに、シオンは全てを決めることが出来た。
今、何をするべきかを見つけ出せたのだ。
「"誰"が、お前を、そうさせる?」
過去の思い出や財宝を見つけ出すことなんかじゃない。
今目の前にいる、勇敢な友達を助けなければいけない。
シオンはテオスの手を握りしめた。
「ぼくは、」
そして言葉を紡ごうとして、避けられない絶望感に襲われるのだ。
この島を破滅に導こうとする者たちの仲間を、彼は、許してくれるだろうか。
それ以前に────自分の言葉を、誰が信じる?
「シオン?」
握りしめられた手を呆然と眺めていたら、意外にも優しい声が名前を呼んだ。
驚いて相手を見上げるが、彼は無意識なようだ。
それが、やっと少し縮んだ心の距離を見せるみたいで、泣きたくてたまらなくなった。
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