海賊団に攫われた貧民〖イラストあり〗

亜依流.@.@

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「奴らといる必要があるのか?」

「·····どうして?」


彼は何を知ってるんだ?
自分は、テオスが嫌っていたイディオムの一員なのだ。
ただそれだけだ。
彼が自分を引き止める理由は、いくら考えても思いつかない。


「何も話さなくていい。ただ頷けばいい」


突然やってきて、核心を覗き込もうとしている。誰も気に求めなかった、「シオン」自身の思いをのぞき込むように、日焼けした手が肩を抱きよせた。


「そうすれば俺は、お前を連れていかせない」


硬い体に抱きしめられて、温もりを実感する。

なぜこんなことをするのか?
彼はそんな疑問さえ必要ないという。

彼の背に手を回すことは出来なかった。
抱きしめられている時間はとても長く感じた。こんなふうにされたのが、一体どのくらい昔なのか、頭の片隅で記憶をふりかえっていた。

彼はそっとこちらをのぞきこんできた。


「何がお前を、引き止める?」

「·····」


ここに留まることは出来ない。

そして自分を情けなく思った。

テオスは勇敢で頼もしい。
危険も顧みず、真っ直ぐに伝えてくる瞳に、恐ろしささえ抱くほどに。

強い眼差しに引き込まれそうになる。

殺しに来たのかもしれない。なにかに気がついた彼が、捕らえに来たのかもしれない。
こんな人を、自分はさっき、そう疑ったのだ。

心に入り込むような問いかけに、シオンは全てを決めることが出来た。
今、何をするべきかを見つけ出せたのだ。

「"誰"が、お前を、そうさせる?」


過去の思い出や財宝を見つけ出すことなんかじゃない。
今目の前にいる、勇敢な友達を助けなければいけない。

シオンはテオスの手を握りしめた。


「ぼくは、」


そして言葉を紡ごうとして、避けられない絶望感に襲われるのだ。

この島を破滅に導こうとする者たちの仲間を、彼は、許してくれるだろうか。

それ以前に────自分の言葉を、誰が信じる?


「シオン?」


握りしめられた手を呆然と眺めていたら、意外にも優しい声が名前を呼んだ。

驚いて相手を見上げるが、彼は無意識なようだ。
それが、やっと少し縮んだ心の距離を見せるみたいで、泣きたくてたまらなくなった。















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感想 19

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みんなの感想(19件)

rui
2025.09.23 rui

続きが気になります!再開を楽しみにしてます★最終的にどのキャラとくっつくのかなぁ?

解除
なの
2025.04.03 なの

この作品、ホントに大好きです~!
更新があってくれれば嬉しすぎて叫びそうなんですが、難しいようであれば、無理せずに大丈夫です。
亜依流さんの小説、全部面白いのでずっと楽しませていただいてます♪

2025.04.04 亜依流.@.@

ありがとうございます😭励みになります🥺

只今休載しておりますが、気長にお待ちいただければ幸いです。

解除
うにうにうに

久々に読み返して推しが増えました〜!✨️
近い内更新あったりしますか...?🥲‎
他作品の執筆もあったりお忙しいと思いますが
体調崩されませんようお身体ご自愛ください‎(՞ ܸ.ˬ.ܸ՞)"

2024.12.06 亜依流.@.@

ありがとうございます🥺
年末、又は年明け頃から公開予定です。読み返して頂けるとは、、嬉しすぎます😭今しばらくお待ちいただけると幸いです。

解除

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