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27 夢現の中での
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「おい……おい」
あー……なんか、うるさい。誰だ?
「おいって…………起きねぇと、触んぞ……」
どーぞ、どーぞぉ……この部屋にぃ、触られて困るもんなんてねぇよ~……
てか、気持ち良く寝てんだからぁ、邪魔すんな。
「マジで……触んぞ……良いのか? い、良いんだな。良いよな? 寝てる、んだもんな」
サワ……サワ……、と俺の胸元や腰、足、と移動しながらほんのり温かい感触を感じる。
触るって、俺かよぉ……。ん~、でも……残念ながらぁ、俺自身も金目のもん持ってねぇから……意味ねぇよぉ。
それより寝かせてくれ……家には、何も無いから出て行ってくれ……
「ん……、ぁ」
温かい温もりが執拗に胸元を弄るもんだから俺の乳首に指が当たってこそばゆい。何で、そんな所触るんだよぉ……
サワサワクリクリカリカリ
「はぁ……んんぅ」
「ドニー、気持ちいいのか?」
んん、キモチイ、かも……
微睡んでる所でそれは駄目だ……、少し覚醒しかけてた意識も気持ちいい温もりで、また眠りに落ちそう……
なのに、キュゥ、って乳首を摘ままれた瞬間、頭の先にまでゾクッとした何かが走って一気に覚醒した。
「んあっ! ぁ…………あ? アルフ? なんでいんの?」
パチッと開いた視界の先にはアルフの顔面。
外は陽が沈んで暗い。当然、ランプが点いていない部屋の中も暗い。だけど、それでもアルフだって分かる位アルフの顔が近い。
「!!」
「なにしてんだ?」
あれ? 今まで胸元サワサワしてたのって、アルフ? ん? 夢か?
俺が起き上がろうとすると、ベッドの上に登ってたらしいアルフが慌てて飛び降りて、また頭を天井にぶつけてた。
「いっで!」
「なにしてんだよ」
さっきまで触られていた様な気がする胸、っつうか乳首が何だがむず痒くってボリボリ掻く。
アルフが触ってたとしたら、なんでだ? 起こそうとして? に、してはなぁ……
すると、指にコツンと硬い物、アルフから貰ったガラス玉が当たって俺は納得した。
ああ、なるほどこれか。アルフはこのガラス玉を取ろうとしたのか。もしかして、早速恋人設定解消したくなって、このネックレスを回収しに来たって所かな?
「アルフ」
「なっ、なんだよ!」
「はい。これ、返すな」
首からネックレスを外してアルフに差し出す。
「なんだよ、これ。どういうつもりだ、ああ?」
あれ? 快く受け取ってくれると予想していたのに反し、何本も眉間に皺を刻んだアルフが親の仇を見る様な目で俺を睨んで来る。
「え? これを取りに来たんじゃねぇの? だから、胸元弄ってたんかと思ったんだけど? 違うの? じゃぁ、何? 何しに来たんだよ、お前」
「ちがっう……けど……迎えに来たんだよ。さっさと荷物纏めろ」
「迎え? 俺、何かお前と約束してたっけ?」
寝起きでまだ頭が回んねぇんだけど、何かあったっけなぁ。
「してねぇ。してねぇけど、行くぞ」
「どこに?」
「俺の家」
「お前、本当馬鹿じゃねぇの!?」
約束もしてねぇ。なのに人ん家に急に来て、説明もしねぇで荷物纏めろって……、毎回毎回自分勝手にも程があんぞ! マジでなんなんだよコイツは!!
「何で俺がこんな時間からお前の家に行かなきゃいけねぇんだよ! しかも気持ち良く寝てたのに起こしやがって! 俺は明日も仕事あんだよ!」
「こんな時間って、まだ宵の口だぞ。それに俺も仕事だ」
「てめぇの仕事なんてどうでも良いわ! 俺がお前の家に行く理由を聞いてんだよ!!」
問い詰める俺に対してアルフはすんごい、しょうがねぇなぁ、みたいな顔してるけど、なんなん? 俺、キレそう。
「俺の家に来れば部屋の中に風呂もトイレもある。頭を天井にぶつけない。近所に美味い食堂がある。お屋敷にも近い。治安が良い。襲われない。安全。広い」
「なに? 俺の家馬鹿にしてんのか?」
「恋人なら、互いの家を知ってて当然だろ」
「は?」
今、恋人なら……って言ったか? いや、恋人じゃねぇだろ。あくまで恋人設定だろうが。なに? ただの設定でもそこまでしなきゃいけない訳?
「そこまでする必要あるか?」
「ある! どこからボロが出るか分からないんだ。だから、今から俺の家に行くぞ。明日は俺の家からそのままお屋敷に行くから荷物を纏めろ」
「ええ~?」
強引に言い包めに来てないか?
毎度の事ながらコイツ言い出したら聞かないからなぁ。一度家に行ったら納得すっかな。
「も~、分かった分かった。でも、お前の家に行くにしたって纏める様な荷物もねぇし、このまんまだけど良いか?」
「寝巻とかいいのか?」
「はっ。貧民街暮らしで寝巻なんて着てたら、遂に客取るのかって言われちまうわ」
ここの住民は寝巻に出す金があったら明日のパンを買いたいんだ。なのに、貴重な金を出してまで寝巻を買うって事はそういう事だ。
なんて言っても、平民街暮らしの人間には分からんわな。
「という事は、お前は持ってないんだな、寝巻! なら良い! 何も持たなくて良い、身一つで良い! 行くぞ!」
「俺はお前の情緒が良く分からん」
中腰で部屋の中を移動しながら「早くしろ!」と急かすアルフに「へーへー」とおざなりに返事を返して、アルフの後に続いた。
あー……なんか、うるさい。誰だ?
「おいって…………起きねぇと、触んぞ……」
どーぞ、どーぞぉ……この部屋にぃ、触られて困るもんなんてねぇよ~……
てか、気持ち良く寝てんだからぁ、邪魔すんな。
「マジで……触んぞ……良いのか? い、良いんだな。良いよな? 寝てる、んだもんな」
サワ……サワ……、と俺の胸元や腰、足、と移動しながらほんのり温かい感触を感じる。
触るって、俺かよぉ……。ん~、でも……残念ながらぁ、俺自身も金目のもん持ってねぇから……意味ねぇよぉ。
それより寝かせてくれ……家には、何も無いから出て行ってくれ……
「ん……、ぁ」
温かい温もりが執拗に胸元を弄るもんだから俺の乳首に指が当たってこそばゆい。何で、そんな所触るんだよぉ……
サワサワクリクリカリカリ
「はぁ……んんぅ」
「ドニー、気持ちいいのか?」
んん、キモチイ、かも……
微睡んでる所でそれは駄目だ……、少し覚醒しかけてた意識も気持ちいい温もりで、また眠りに落ちそう……
なのに、キュゥ、って乳首を摘ままれた瞬間、頭の先にまでゾクッとした何かが走って一気に覚醒した。
「んあっ! ぁ…………あ? アルフ? なんでいんの?」
パチッと開いた視界の先にはアルフの顔面。
外は陽が沈んで暗い。当然、ランプが点いていない部屋の中も暗い。だけど、それでもアルフだって分かる位アルフの顔が近い。
「!!」
「なにしてんだ?」
あれ? 今まで胸元サワサワしてたのって、アルフ? ん? 夢か?
俺が起き上がろうとすると、ベッドの上に登ってたらしいアルフが慌てて飛び降りて、また頭を天井にぶつけてた。
「いっで!」
「なにしてんだよ」
さっきまで触られていた様な気がする胸、っつうか乳首が何だがむず痒くってボリボリ掻く。
アルフが触ってたとしたら、なんでだ? 起こそうとして? に、してはなぁ……
すると、指にコツンと硬い物、アルフから貰ったガラス玉が当たって俺は納得した。
ああ、なるほどこれか。アルフはこのガラス玉を取ろうとしたのか。もしかして、早速恋人設定解消したくなって、このネックレスを回収しに来たって所かな?
「アルフ」
「なっ、なんだよ!」
「はい。これ、返すな」
首からネックレスを外してアルフに差し出す。
「なんだよ、これ。どういうつもりだ、ああ?」
あれ? 快く受け取ってくれると予想していたのに反し、何本も眉間に皺を刻んだアルフが親の仇を見る様な目で俺を睨んで来る。
「え? これを取りに来たんじゃねぇの? だから、胸元弄ってたんかと思ったんだけど? 違うの? じゃぁ、何? 何しに来たんだよ、お前」
「ちがっう……けど……迎えに来たんだよ。さっさと荷物纏めろ」
「迎え? 俺、何かお前と約束してたっけ?」
寝起きでまだ頭が回んねぇんだけど、何かあったっけなぁ。
「してねぇ。してねぇけど、行くぞ」
「どこに?」
「俺の家」
「お前、本当馬鹿じゃねぇの!?」
約束もしてねぇ。なのに人ん家に急に来て、説明もしねぇで荷物纏めろって……、毎回毎回自分勝手にも程があんぞ! マジでなんなんだよコイツは!!
「何で俺がこんな時間からお前の家に行かなきゃいけねぇんだよ! しかも気持ち良く寝てたのに起こしやがって! 俺は明日も仕事あんだよ!」
「こんな時間って、まだ宵の口だぞ。それに俺も仕事だ」
「てめぇの仕事なんてどうでも良いわ! 俺がお前の家に行く理由を聞いてんだよ!!」
問い詰める俺に対してアルフはすんごい、しょうがねぇなぁ、みたいな顔してるけど、なんなん? 俺、キレそう。
「俺の家に来れば部屋の中に風呂もトイレもある。頭を天井にぶつけない。近所に美味い食堂がある。お屋敷にも近い。治安が良い。襲われない。安全。広い」
「なに? 俺の家馬鹿にしてんのか?」
「恋人なら、互いの家を知ってて当然だろ」
「は?」
今、恋人なら……って言ったか? いや、恋人じゃねぇだろ。あくまで恋人設定だろうが。なに? ただの設定でもそこまでしなきゃいけない訳?
「そこまでする必要あるか?」
「ある! どこからボロが出るか分からないんだ。だから、今から俺の家に行くぞ。明日は俺の家からそのままお屋敷に行くから荷物を纏めろ」
「ええ~?」
強引に言い包めに来てないか?
毎度の事ながらコイツ言い出したら聞かないからなぁ。一度家に行ったら納得すっかな。
「も~、分かった分かった。でも、お前の家に行くにしたって纏める様な荷物もねぇし、このまんまだけど良いか?」
「寝巻とかいいのか?」
「はっ。貧民街暮らしで寝巻なんて着てたら、遂に客取るのかって言われちまうわ」
ここの住民は寝巻に出す金があったら明日のパンを買いたいんだ。なのに、貴重な金を出してまで寝巻を買うって事はそういう事だ。
なんて言っても、平民街暮らしの人間には分からんわな。
「という事は、お前は持ってないんだな、寝巻! なら良い! 何も持たなくて良い、身一つで良い! 行くぞ!」
「俺はお前の情緒が良く分からん」
中腰で部屋の中を移動しながら「早くしろ!」と急かすアルフに「へーへー」とおざなりに返事を返して、アルフの後に続いた。
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