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竜人の子、旅立つ
25.ブレない友
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夏休みが終わり、今日から新学期が始まった。
教会学校へ向かうシロの背中に、ルカが飛びついた。
「おーすっ、シロ!久しぶり!最後の夏休み、ついに終わっちゃったな」
ルカの隣りには、アリスもいて「おはよう、シロ!あっという間だったよねぇ。もっと遊びたかったな」と残念そうにため息をついた。
「おはよう、2人とも。デートはたくさん出来た?」
一緒に登校してきた可愛いカップルを微笑ましく思ったシロは、顔を緩ませながら訊ねた。
「なっ…!そ、それはっ…」
ルカは顔を真っ赤にして口ごもる。
アリスは「ルカってば、すぐに照れちゃうのよ」と笑った。
「てっ、照れてないだろっ!まだ…、その…、慣れないだけだ…。って、俺らの話は、どうでもいいんだよ」
ルカは、自分の顔を手で扇いで話を変えた。
「それよりシロ、聞いたぞ。お前、竜人騎士学校に進学するんだってな」
「私も聞いたわ。本当にアスディアに行っちゃうの?」
2人の耳の早さにびっくりしながら、シロは頷いた。
「うん、試験に受かったらね。騎士学校で治療魔法を本格的に学びたいんだ。でもよく知ってたね。誰から聞いたの?」
「ルーフだよ。俺の店に飲みに来た時に教えてくれた。俺の育て方が良かったんだ、って笑って話してたよ」
ルカの話を聞いて、シロは小さく笑った。
「…そっか」
騎士学校の話をした日以来、ルーフとは微妙な距離感が出来てしまったのだ。
シロの進学を肯定してくれたが、ルーフは家で過ごす事が少なくなった。
家に帰ってきたルーフを抱きしめ、こっそり匂いを嗅いでみても他人の匂いはしない。
昔みたいに適当な相手と遊んでいる訳でもなさそうだが、シロに対する態度もそっけなく感じてしまい、もどかしさを感じる。
シロもシロで本格的に入学試験に向け、空いている時間は勉強に費やしているので、ルーフとゆっくり過ごす時間が取れなくなってしまった。
このままルーフと距離ができてしまうのではないか…。
シロが不安になって俯くと、ルカが背中をバシンと叩いた。
「痛っ!」
「何、暗くなってんだよ!お前はほんと凄いよ。俺、マジでシロの事、尊敬してんだよ」
ルカは明るく笑った。
「正直、シロはルーフと一緒にいることを優先しすぎて、自分が成長できる場を諦めるんじゃないかと思ってた。そういう選択も悪くないと思うけど、お前は竜人だから出来ることも沢山あるし、治療魔法の才能もある。俺はシロ自身の成長を諦めてほしくなかったんだ。だからシロが騎士学校に行くって決めてくれて、すげぇ嬉しい!」
「私もよ。シロがアスディアに行っちゃうのは寂しいけど、魔族のルーフと暮らして人間の国で育ったあなたなら、竜人の国でも広い視野を持って学ぶことができるわ。シロみたいな竜人が増えれば、種族の格差もなくなると思う。魔族を馬鹿にする竜人がいたら、ぶん殴ってきてよね!」
アリスは、シロの肩に軽くパンチをした。
シロは「2人とも俺の事、買いかぶり過ぎだよ」と笑った。
「治療魔法を学びたいっていうのは本当だけど、1番の目的は聖剣の傷跡の治療法を学ぶことなんだ。それを習得出来たら、騎士学校は辞めるつもりだし」
「え…、そうなの?」
ルカとアリスは目を合わせる。
「うん。そうだよ」
シロは当たり前のように答えた。
結局すべてルーフのため。
子供の頃からルーフ一筋のブレないシロに、2人は大笑いした。
教会学校へ向かうシロの背中に、ルカが飛びついた。
「おーすっ、シロ!久しぶり!最後の夏休み、ついに終わっちゃったな」
ルカの隣りには、アリスもいて「おはよう、シロ!あっという間だったよねぇ。もっと遊びたかったな」と残念そうにため息をついた。
「おはよう、2人とも。デートはたくさん出来た?」
一緒に登校してきた可愛いカップルを微笑ましく思ったシロは、顔を緩ませながら訊ねた。
「なっ…!そ、それはっ…」
ルカは顔を真っ赤にして口ごもる。
アリスは「ルカってば、すぐに照れちゃうのよ」と笑った。
「てっ、照れてないだろっ!まだ…、その…、慣れないだけだ…。って、俺らの話は、どうでもいいんだよ」
ルカは、自分の顔を手で扇いで話を変えた。
「それよりシロ、聞いたぞ。お前、竜人騎士学校に進学するんだってな」
「私も聞いたわ。本当にアスディアに行っちゃうの?」
2人の耳の早さにびっくりしながら、シロは頷いた。
「うん、試験に受かったらね。騎士学校で治療魔法を本格的に学びたいんだ。でもよく知ってたね。誰から聞いたの?」
「ルーフだよ。俺の店に飲みに来た時に教えてくれた。俺の育て方が良かったんだ、って笑って話してたよ」
ルカの話を聞いて、シロは小さく笑った。
「…そっか」
騎士学校の話をした日以来、ルーフとは微妙な距離感が出来てしまったのだ。
シロの進学を肯定してくれたが、ルーフは家で過ごす事が少なくなった。
家に帰ってきたルーフを抱きしめ、こっそり匂いを嗅いでみても他人の匂いはしない。
昔みたいに適当な相手と遊んでいる訳でもなさそうだが、シロに対する態度もそっけなく感じてしまい、もどかしさを感じる。
シロもシロで本格的に入学試験に向け、空いている時間は勉強に費やしているので、ルーフとゆっくり過ごす時間が取れなくなってしまった。
このままルーフと距離ができてしまうのではないか…。
シロが不安になって俯くと、ルカが背中をバシンと叩いた。
「痛っ!」
「何、暗くなってんだよ!お前はほんと凄いよ。俺、マジでシロの事、尊敬してんだよ」
ルカは明るく笑った。
「正直、シロはルーフと一緒にいることを優先しすぎて、自分が成長できる場を諦めるんじゃないかと思ってた。そういう選択も悪くないと思うけど、お前は竜人だから出来ることも沢山あるし、治療魔法の才能もある。俺はシロ自身の成長を諦めてほしくなかったんだ。だからシロが騎士学校に行くって決めてくれて、すげぇ嬉しい!」
「私もよ。シロがアスディアに行っちゃうのは寂しいけど、魔族のルーフと暮らして人間の国で育ったあなたなら、竜人の国でも広い視野を持って学ぶことができるわ。シロみたいな竜人が増えれば、種族の格差もなくなると思う。魔族を馬鹿にする竜人がいたら、ぶん殴ってきてよね!」
アリスは、シロの肩に軽くパンチをした。
シロは「2人とも俺の事、買いかぶり過ぎだよ」と笑った。
「治療魔法を学びたいっていうのは本当だけど、1番の目的は聖剣の傷跡の治療法を学ぶことなんだ。それを習得出来たら、騎士学校は辞めるつもりだし」
「え…、そうなの?」
ルカとアリスは目を合わせる。
「うん。そうだよ」
シロは当たり前のように答えた。
結局すべてルーフのため。
子供の頃からルーフ一筋のブレないシロに、2人は大笑いした。
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