文字サイズ
小
中
大
特大
7 / 21
5月4日(木)
映美に背負わせていたハーネスリュックを一回降ろしてもらい、中に入れる物を改めて確認する。私の荷物にも、子供たち用の水分やらオヤツやらは入れてあるものの、最小限の軽いものはこちらにも小分けに入れておきたい。
康徳さんは、アルプラザが開くまで待って、食品売り場で何か調達してからバスに乗ればいいと言っていたけれど、約束の正午を目安にバスに乗るつもりなら、9時台の便には乗っておきたい。
昨夜の話ではそれで了承し合ったはずなのに、そろそろ出発したい頃合いになっても、康徳さんはMacを開いたまま動かない。バス停までの道のりを考えると、そろそろタイムリミットだ。
「康徳さん?」
声をかけると、彼は少々驚いてこちらを見た。「ごめん、ごめん。もう出ないとね」と食卓に並んだ荷物に目をやった。私は亜衣にトイレを促し、彼女が戻ってくると映美をトイレに連れていく。トイレから出た映美を康徳さんに任せ、自分たちの出発準備を整える。映美にはハーネスリュックを背負ってもらい、康徳さんは私が持つつもりだった大きなバッグを持ってくれた。開いた手で、映美の手を握って外へ出る。
玄関横のガレージには、いつでも出かけられそうなマイカーが鎮座している。ドアにしっかり鍵をかけ、先に歩き出した亜衣たちを早歩きで追いかける。
「本当にバスで行くの?」
康徳さんは頷いた。怪訝そうな面持ちで「ダメだった?」と聞き返された。
「二人ともしっかり歩けるんなら、と思ったんだけど。サンデードライバーも怖いしさ」
子供らは確かに歩けるようにはなったけど、行き帰りの道中で、最後までグズらずに歩けるとは思えない。幸い、バス一本で座っていれば着くけれども、余分な荷物は増えるし、寝入った場合の手が足りるかどうかも不安ではある。
「別に、俺が飲めないからってだけじゃないよ。向こうに長いこと停める場所とかお金とか考えたら、安全も考えてバスでいいじゃん」
連休中の運転は確かにちょっと怖くはある。だったらもっと早い時間帯に出てもいいんだろうけど、今日は無理して動くのも難しい。康徳さんが一杯二杯は飲めないと困るのもよく分かるし、今回はバスしかないか......。
「おっと、まだ開いてないんだっけ」
アルプラザの裏手まで来て、康徳さんは建屋の外周道路に沿って右手へ迂回する。駐車場の出入り口に気をつけつつ、西出入り口の方へグルッと回る。正面の道路を左へ進み、171号線との交差点を渡った。吉野家の前のバス停で、「阪急石橋行き」を待つ。ここまでは、二人の娘は自分の足でしっかり歩いてくれている。
「次は、41分か。一本前の奴は行ったばっかりか~」
彼は腕時計を見ながら、目の前の通りへ目をやった。反対方向は割とスムーズに流れているけど、こちら側、箕面方面行きはいつもより若干交通量が多い気がする。
「向こうにバスが見えるけど、アレが遅れてる奴だったらいいんだけど......」
彼は、「餃子の王将」の向こうに見えるバスをジッと見ている。まだ小さくて行き先表示は見えないけれど、阪急バスであるのは間違いなさそうだ。このままスムーズに、約束の時間に間に合えばいいんだけど、と思っていたら、段々近づいてきたバスの行き先には「豊川四丁目」と書いてあった。
康徳さんは、アルプラザが開くまで待って、食品売り場で何か調達してからバスに乗ればいいと言っていたけれど、約束の正午を目安にバスに乗るつもりなら、9時台の便には乗っておきたい。
昨夜の話ではそれで了承し合ったはずなのに、そろそろ出発したい頃合いになっても、康徳さんはMacを開いたまま動かない。バス停までの道のりを考えると、そろそろタイムリミットだ。
「康徳さん?」
声をかけると、彼は少々驚いてこちらを見た。「ごめん、ごめん。もう出ないとね」と食卓に並んだ荷物に目をやった。私は亜衣にトイレを促し、彼女が戻ってくると映美をトイレに連れていく。トイレから出た映美を康徳さんに任せ、自分たちの出発準備を整える。映美にはハーネスリュックを背負ってもらい、康徳さんは私が持つつもりだった大きなバッグを持ってくれた。開いた手で、映美の手を握って外へ出る。
玄関横のガレージには、いつでも出かけられそうなマイカーが鎮座している。ドアにしっかり鍵をかけ、先に歩き出した亜衣たちを早歩きで追いかける。
「本当にバスで行くの?」
康徳さんは頷いた。怪訝そうな面持ちで「ダメだった?」と聞き返された。
「二人ともしっかり歩けるんなら、と思ったんだけど。サンデードライバーも怖いしさ」
子供らは確かに歩けるようにはなったけど、行き帰りの道中で、最後までグズらずに歩けるとは思えない。幸い、バス一本で座っていれば着くけれども、余分な荷物は増えるし、寝入った場合の手が足りるかどうかも不安ではある。
「別に、俺が飲めないからってだけじゃないよ。向こうに長いこと停める場所とかお金とか考えたら、安全も考えてバスでいいじゃん」
連休中の運転は確かにちょっと怖くはある。だったらもっと早い時間帯に出てもいいんだろうけど、今日は無理して動くのも難しい。康徳さんが一杯二杯は飲めないと困るのもよく分かるし、今回はバスしかないか......。
「おっと、まだ開いてないんだっけ」
アルプラザの裏手まで来て、康徳さんは建屋の外周道路に沿って右手へ迂回する。駐車場の出入り口に気をつけつつ、西出入り口の方へグルッと回る。正面の道路を左へ進み、171号線との交差点を渡った。吉野家の前のバス停で、「阪急石橋行き」を待つ。ここまでは、二人の娘は自分の足でしっかり歩いてくれている。
「次は、41分か。一本前の奴は行ったばっかりか~」
彼は腕時計を見ながら、目の前の通りへ目をやった。反対方向は割とスムーズに流れているけど、こちら側、箕面方面行きはいつもより若干交通量が多い気がする。
「向こうにバスが見えるけど、アレが遅れてる奴だったらいいんだけど......」
彼は、「餃子の王将」の向こうに見えるバスをジッと見ている。まだ小さくて行き先表示は見えないけれど、阪急バスであるのは間違いなさそうだ。このままスムーズに、約束の時間に間に合えばいいんだけど、と思っていたら、段々近づいてきたバスの行き先には「豊川四丁目」と書いてあった。
感想 0
あなたにおすすめの小説
専業主婦十年、夫と息子に「何もしてない」と言われたので、自分の名前で稼ぐことにした
「お母さん、何もしてないじゃん」
小学四年生の息子に言われた。翌朝、夫も言った。そっちは家にいるだけだろ、と。
専業主婦十年。渡される生活費は白い封筒の月3万円。家の通帳は見たこともない。
期限切れのファンデーションを塗り、フォロワー48人のアカウントに写真を上げた。「ダメ出しお願いします」。止まらない通知の中に、短い返信が一つ。
――ひとつずつでいいよ。
早朝の新聞配達に、時給1200円の品出し。夜は簿記の参考書を開いた。額面22万円の雇用条件通知書。初めてのPR案件は、2万5千円。
その秋、夫が昼に誰と会っているかを知った。離婚届は12月24日。
一年後、私の会社の月商は500万円、フォロワーは200万人。港区のタワーマンションの鍵は、私の名前で受け取った。
「家にいるだけだろ」と言った人が、その数字を口にする番が来る。
この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
全9話。
届かなかったメール
たった一通の届かなかったメール。
その偶然が生んだ三年間の沈黙と、すれ違った想い。そして再会の日に知る、それぞれの人生。
失われた時間は戻らない。それでも、人は過去にひとつの答えを見つけることがある。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
もてる錯覚? 44歳主婦・好美の冒険
「もてている」という錯覚。その出口で、私は本当の恋を知った。
45歳の誕生日を前に、好美は自らを納得させるように複数の男たちと情事を重ねる。
高いヒールのロングブーツと、短すぎるスカート。それは、乾いた日常と無関心な夫への、ささやかな反逆だった。
主導権を握っているつもりだった。男たちを転がしているはずだった。
――実は、都合のいい女として扱われていることに薄々気づきながらも、彼女はあえてその事実に蓋をし続けてきた。そうしなければ、自分の輪郭を保てなかったから。
けれど、22歳の大学生・優希の真っ直ぐな瞳と、包み込むような「ため口」が、彼女の頑ななプライドと虚飾を溶かしていく。
保身を捨て、一人の女として彼を求めた時、好美が見つけた「本当の居場所」とは――。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】ツンデレ王子は、約束のステージからその先へ
アイドルグループ、dulcis〈ドゥルキス〉のメンバーとしてデビューしたサクヤ(21)
多忙なスケジュールの中、彼がどうしても譲れなかったのは、子どもの頃に通っていたダンスコンクールへのサプライズ出演だった。
そこには、初恋の人であり、ダンスの楽しさを教えてくれた恩師・才加がいる。
怪我によって夢を諦めた才加。
そんな彼女と交わした約束。
『才加も、ステージに連れて行くよ』
ツンデレで不器用な男が、夢の続きを踊る。
切ない青春ダンスストーリー。