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第5章 義兄の告白
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クラリッサ夫人とアランの姿を見たあの夜から、胸の奥の痛みは消えない。
彼の声、仕草、微笑み――どれも今は信じられなくなってしまった。
翌朝の朝食の席。
アランは私の顔を一度も見ず、食事を淡々と終えると、すぐに執務室へ向かった。
背中に声をかけようとしたが、足がすくみ、結局何も言えなかった。
(……もう、私たちは夫婦ではなくなったのかもしれない)
そう思うと、胸が締め付けられた。
そんな私を見ていたのは、やはりレオニードだった。
「顔色が悪い。……散歩に行かないか」
彼の誘いを断る理由はなかった。
この屋敷に籠もっていると、息が詰まりそうになる。
馬車で少し離れた湖畔へ。
冬の澄んだ空気の中、湖面は静かに光を反射している。
しばらく並んで歩いていると、レオニードが足を止めた。
「……ずっと言えなかったことがある」
真剣な声色に、心臓が跳ねる。
彼の視線はまっすぐ私を捉え、逸らすことはなかった。
「俺は……昔からお前を愛していた」
その言葉は、冬の空気よりも鋭く胸に突き刺さった。
「……やめてください。そんなことを言われても――」
「分かっている。お前は今、あいつの妻だ。けれど……二年後、契約が終わったら俺と――」
「やめて!」
声が震える。
「今は、何も考えられない……」
レオニードの表情に影が落ちる。
それでも彼は、そっと私の手を包み込んだ。
「……泣くな。お前の涙は、俺が全部拭ってやる」
その瞬間、背後から低い声が響いた。
「……ずいぶんと親しいな、義兄上」
振り返ると、アランが立っていた。
冷たい瞳が二人を射抜き、空気が一気に凍りつく。
「……今の言葉、もう一度言ってみろ」
「何度でも言う。俺は彼女を愛している」
レオニードの宣言に、アランの眉間が深く寄る。
「ふざけるな。エリシアは俺の妻だ」
「二年だけの、だろう?」
二人の間に見えない火花が散る。
私は止めようとしたが、声が出なかった。
ただ、二人の視線の間に立たされている自分の存在が、息苦しかった。
湖畔からの帰り道、アランは一言も話さなかった。
しかし、彼の握る手綱は白くなるほど力がこもっていた。
馬車の窓から差し込む冬の光が、その横顔を硬く照らしていた。
(……この二人の争いは、もう止まらない)
そう思いながらも、心の奥では別の痛みが広がっていた。
アランの瞳に宿る怒りが、嫉妬なのか、それともただの所有欲なのか――その答えが欲しかった。
彼の声、仕草、微笑み――どれも今は信じられなくなってしまった。
翌朝の朝食の席。
アランは私の顔を一度も見ず、食事を淡々と終えると、すぐに執務室へ向かった。
背中に声をかけようとしたが、足がすくみ、結局何も言えなかった。
(……もう、私たちは夫婦ではなくなったのかもしれない)
そう思うと、胸が締め付けられた。
そんな私を見ていたのは、やはりレオニードだった。
「顔色が悪い。……散歩に行かないか」
彼の誘いを断る理由はなかった。
この屋敷に籠もっていると、息が詰まりそうになる。
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冬の澄んだ空気の中、湖面は静かに光を反射している。
しばらく並んで歩いていると、レオニードが足を止めた。
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「俺は……昔からお前を愛していた」
その言葉は、冬の空気よりも鋭く胸に突き刺さった。
「……やめてください。そんなことを言われても――」
「分かっている。お前は今、あいつの妻だ。けれど……二年後、契約が終わったら俺と――」
「やめて!」
声が震える。
「今は、何も考えられない……」
レオニードの表情に影が落ちる。
それでも彼は、そっと私の手を包み込んだ。
「……泣くな。お前の涙は、俺が全部拭ってやる」
その瞬間、背後から低い声が響いた。
「……ずいぶんと親しいな、義兄上」
振り返ると、アランが立っていた。
冷たい瞳が二人を射抜き、空気が一気に凍りつく。
「……今の言葉、もう一度言ってみろ」
「何度でも言う。俺は彼女を愛している」
レオニードの宣言に、アランの眉間が深く寄る。
「ふざけるな。エリシアは俺の妻だ」
「二年だけの、だろう?」
二人の間に見えない火花が散る。
私は止めようとしたが、声が出なかった。
ただ、二人の視線の間に立たされている自分の存在が、息苦しかった。
湖畔からの帰り道、アランは一言も話さなかった。
しかし、彼の握る手綱は白くなるほど力がこもっていた。
馬車の窓から差し込む冬の光が、その横顔を硬く照らしていた。
(……この二人の争いは、もう止まらない)
そう思いながらも、心の奥では別の痛みが広がっていた。
アランの瞳に宿る怒りが、嫉妬なのか、それともただの所有欲なのか――その答えが欲しかった。
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