黒色の翼は水色の夢を見る

柏木あきら

文字の大きさ
6 / 11

6.通じ合った気持ちと新たな災難

しおりを挟む
 草むらのベッドで二人、仰向けになる。オークツリーの身体の中に、オークツリーのヒト型がいるなんて本当に不思議でたまらない。キスだけで幸福感で満たされるなんて、思わなかった。ベッドの上がいつもより暗いのは、ヒト型となって『分身』になっているから。木であるオークツリー本体と分離してしまっている以上、どこかしら影響が出るのだと言う。
「なあ、どうしてヒト型を見せてくれなかったのか聞いていい?」
 俺がそう言うと、少し言いにくそうに話し始めた。
「初めて会ったとき、ヒト型だったのはね、クロウが泣いていたからです。遠くから聞こえた泣き声が気になって。ヒト型になって様子を見に行ったんです。最初はカラスってことに気が付きませんでした。子供なのに私を見て、ぐっと泣くのを我慢して。それを見てたらいじらしくなってね。それでここを提供したんです。それからクロウが通って来てくれるようになって、だんだんと慈しみではなくて愛しさに変わって来たんです。私もヒト型になってクロウの元に行きたいと何度も思ったんです」
「じゃあ、なんで」
「以前言いましたよね。私はうんと長生きしているんです。だからクロウがいなくなった後もずっと一人で生きていくことになるんです。幸せな時間を知ってしまえば、その後が辛すぎるんです。なら、いっそヒト型で会わなければ、ただの木であれば恋愛のような関係にならず寂しさも幾分和らぐはずだろうと。私の独りよがりなんです」
「でも今日、こうしてヒト型になって会ってくれた」
「限界でした。フォックスに襲われそうになったなんて。自分が寂しくなるからなんて言ってられないと。私がクロウを守らなければと思ったんです。だから、クロウ。私を呼んで」
 オークツリー の言葉に胸がいっぱいになり泣きそうになった。俺はその回答の代わりに再度、唇を重ねる。俺は鼻の頭をかきながら笑う。
「思いっきり呼ぶから。だから、俺のこと、守って」
 今までもこのウロの中で守ってくれたオークツリー。今度はもっともっと守ってくれる。俺とオークツリーはお互いに抱き合った。その時、羽根の羽ばたくような音が聞こえた気がしたけど、俺は気のせいかと思っていた。オークツリーの分身の影響で、いつもなら俺以外入れないウロが空いていて誰かが入っていたことに、気づかなかったんだ。

***

 それから数日して。俺がいつものように餌場に行こうとしていたところを、ウッドペッカーが血相変えて近づいて来た。
「クロウ、大変だ! フォックスが!」
 フォックス、と聞いて俺は身体をビクンと揺らした。大丈夫だ、オークツリーがいる。あの日と、違うんだ。
「フォックスが、どうかしたのか?」
 俺は努めて冷静に、ゆっくりウッドペッカーの方を向いた。すると彼は慌てた様子で自分の後ろについてこいと促して来た。いつもならこんなに強引なことを言わないので相当、緊急なのか、と驚く。仕方ない、とウッドペッカーの飛行するあとをついて俺も飛ぶ。

数分後ろについて行っている間に森の端まで飛んで来た。突然、ウッドペッカーが地上に向けて降下した。それを見て俺も降下を始める。そのうち目に入って来たのは、大きな尻尾のヒト型。フォックスだ。拳を握り、尻尾の毛が逆立っていつもより太く見える。そして何より『近寄ってはならない』と直感で気づいた。
 地上に降り立ち、俺は翼を閉じた。フォックスは俺に気づくと細い目をいきなり、大きく開いた。
「よお、クロウ。単刀直入に言うけどよ、教えてくれ。お前、オークツリーと出来てんのか」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...