混沌藍皿

柏木あきら

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2.太陽の店主

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 それから二十年後。大きく手を広げた様な木が中心にある城下町の一角では毎月、定期的にマーケットが行われている。果物や衣服、古本や楽器などジャンルに捉われないものが売られており、会場を回り尽くすには半日はかかりそうなほど、広くてたくさんの露店が所狭しと並んでいた。
 ここで露店として物を売るにはクエスタ国王の許可が必要で、それゆえに安心安全な物を購入できるため、国営マーケットはいつも繁盛している。また出店する露店側としても国内で開催されているマーケットの中で、国営マーケットに出店するのは憧れだ。厳しい検閲に無事通過し出店することができたとしても、年に一度の更新申請時にはまた検閲があり、なかなか気を抜くことはできないのだ。
 それでもこのマーケットに出店したいのは、利益が大きいこともあるが百二十年続いているマーケットの一員になれるという誇りだ。数十年だけ戦争による中断はあったものの、これだけ長く続いているマーケットはクエスタ国以外に近隣には存在しない。
 石畳の広場に木枠で作られた露店が所狭しと連なっている。何処からか聞こえる楽器の奏でる音楽と人々の活気。

「その手鏡の装飾は名工のヤエによるものでね。ヤエは今や宮廷専属になってるからもう手に入らないよ。お姉さんにはよくお似合いだしオススメだ」
 銀の見事な装飾が施された手鏡を手にして購入を悩んでいた客に、エミリオ・ヴァンニはそれがいかに貴重なものかを勢いよく説明した。前髪をセンターで分けたサラサラな金髪に、印象的な深い青の瞳。身長はそれほど高くなく少し痩せ気味ではあるが、はつらつと声を出す元気な青年だ。
「どうします? もう手放したら手に入らないよ。お姉さん、前回のマーケットでも悩んでたよね」
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