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秘書は蜜愛に濡れる
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赤坂に最近オープンしたと、雑誌で紹介された割烹料理。毎年恒例の暑気払いに、その料亭にしようと云い出したのは、細川製薬会社社長、細川大樹だ。
薬品研究者も交えての飲み会を前に、大樹はネクタイを締めながら鼻歌を歌う。
此処は大樹のお気に入りの社長室。寛げるようにと観葉植物や、花々が活けられている。
愛しい専属秘書、高平奈緒が大樹の為にコーディネートした空間だ。
「社長、お支度は整いましたか?」
ドアをノックして入って来たのは、高平奈緒だ。大樹はにっこりと微笑して振り返る。
淡いグレーのスーツに身を包んだ奈緒は、華奢なラインを美しく見せていた。
「どうだい? イタリアで買った物なんだが」
ストライブの入ったシルバーのネクタイを、歩み寄って来た奈緒が指先に触れる。
大樹はドクンと胸を震わせ、両手で奈緒を優しく抱き締める。
「……曲がったネクタイを直せませんよ?」
見上げて来る奈緒の双眸は濡れ、桜色の唇から紅い舌が怪しく覗く。
「奈緒…愛しい奈緒、キスをする事を許してくれるかい?」
問えば奈緒ははんなりと微笑して、爪先立ちすると大樹の唇の端に刹那的なキスをした。
「な…お?」
「愛しています…社長…あぁ大樹、私をあなたの者にして下さい」
双眸を閉じて唇を開いた奈緒へ、大樹が歓極まって覆い被さった。
「ん…ふっ」
ぬちゅりと濡れた水音を響かせて、舌を絡め合わせて互いの唾液を吸い合う。
大樹はまだ足りないと、深いキスを仕掛ければ、奈緒も負けじと大樹の頭を抱き寄せた。
華奢なラインの背を撫でられて、奈緒は熱い吐息を吐きながら大樹に縋り付く。
「あぁ…大樹、なんだかとても身体が熱いです…脱いでも宜しいですか?」
云いながら、奈緒の右手がワイシャツの釦に向かい、それを見詰めていた大樹はゴクリと息を呑んだ。
「…私が脱がしてあげよう、ああなんて白い肌なんだ! しっとりとしていて、胸の飾りが可愛いピンク色だ。此処にキスをしても良いかい?」
興奮した大樹が息を弾ませ、右手の人差し指で乳首をくにっと押し上げた。「あぁんっ、あなたの好きなようにして…」
全裸になった奈緒がソファーに横たわる。
「もう我慢出来ない! 止めてと泣いても止めてあげないよ!?」
「大樹…」
艶やかな吐息と共に奈緒が囁く。
「起きて下さい社長」
「…ん…?」
新人社員の有沢が大樹を揺り起こす。が、奈緒と勘違いされた有沢が抱き付かれ、びっくりして暴れた。
「奈緒? まだ可愛がっていないよ…? ベッドから逃げちゃダ…ふご!?」
奈緒が投げたお手拭きが、大樹の顔面直撃。
「~~面白い冗談はお止めなさい? 後でお仕置きしますからねっ?」
畳から上半身を起こした大樹が辺りを見回し…暑気払いでやって来た料亭内だと思い出す。
部下達は見なかった事にして明後日の方向へ流し見る。
「さあ~皆さん、今夜は無礼講ですよ? 楽しんで下さいね?」
天使の微笑で奈緒が云うと、総勢百人ほどの役員達が惚けた。
「あれえ?……夢かよ」
大きな溜め息を吐いた大樹を、こっそり奈緒が熱い視線を送ったのは内緒だ。
後日談。
「奈緒…あぁ、もう無理だよ…私も体力の限界だ…」
「私はまだ平気ですっ」
汗を流す大樹に、奈緒は潤んだ瞳で見上げる。大樹はゴクリと息を呑み……。
「我が家の芝生は広いですから、社長が手伝ってくれて助かります」
「……どうせ身体を動かすなら、ベッドの上が良かったんだが」
「何かおっしゃいましたか?」
笑顔の奈緒に大樹は黙る。
「終わったらご褒美をあげますからね?」
「褒美!?」
「社長室に残っていたサインする書類、お持ちしてあります。良かったですね? 社長。お仕事出来て」
「………はい」
逆らうのは止めようと思った大樹であった。
薬品研究者も交えての飲み会を前に、大樹はネクタイを締めながら鼻歌を歌う。
此処は大樹のお気に入りの社長室。寛げるようにと観葉植物や、花々が活けられている。
愛しい専属秘書、高平奈緒が大樹の為にコーディネートした空間だ。
「社長、お支度は整いましたか?」
ドアをノックして入って来たのは、高平奈緒だ。大樹はにっこりと微笑して振り返る。
淡いグレーのスーツに身を包んだ奈緒は、華奢なラインを美しく見せていた。
「どうだい? イタリアで買った物なんだが」
ストライブの入ったシルバーのネクタイを、歩み寄って来た奈緒が指先に触れる。
大樹はドクンと胸を震わせ、両手で奈緒を優しく抱き締める。
「……曲がったネクタイを直せませんよ?」
見上げて来る奈緒の双眸は濡れ、桜色の唇から紅い舌が怪しく覗く。
「奈緒…愛しい奈緒、キスをする事を許してくれるかい?」
問えば奈緒ははんなりと微笑して、爪先立ちすると大樹の唇の端に刹那的なキスをした。
「な…お?」
「愛しています…社長…あぁ大樹、私をあなたの者にして下さい」
双眸を閉じて唇を開いた奈緒へ、大樹が歓極まって覆い被さった。
「ん…ふっ」
ぬちゅりと濡れた水音を響かせて、舌を絡め合わせて互いの唾液を吸い合う。
大樹はまだ足りないと、深いキスを仕掛ければ、奈緒も負けじと大樹の頭を抱き寄せた。
華奢なラインの背を撫でられて、奈緒は熱い吐息を吐きながら大樹に縋り付く。
「あぁ…大樹、なんだかとても身体が熱いです…脱いでも宜しいですか?」
云いながら、奈緒の右手がワイシャツの釦に向かい、それを見詰めていた大樹はゴクリと息を呑んだ。
「…私が脱がしてあげよう、ああなんて白い肌なんだ! しっとりとしていて、胸の飾りが可愛いピンク色だ。此処にキスをしても良いかい?」
興奮した大樹が息を弾ませ、右手の人差し指で乳首をくにっと押し上げた。「あぁんっ、あなたの好きなようにして…」
全裸になった奈緒がソファーに横たわる。
「もう我慢出来ない! 止めてと泣いても止めてあげないよ!?」
「大樹…」
艶やかな吐息と共に奈緒が囁く。
「起きて下さい社長」
「…ん…?」
新人社員の有沢が大樹を揺り起こす。が、奈緒と勘違いされた有沢が抱き付かれ、びっくりして暴れた。
「奈緒? まだ可愛がっていないよ…? ベッドから逃げちゃダ…ふご!?」
奈緒が投げたお手拭きが、大樹の顔面直撃。
「~~面白い冗談はお止めなさい? 後でお仕置きしますからねっ?」
畳から上半身を起こした大樹が辺りを見回し…暑気払いでやって来た料亭内だと思い出す。
部下達は見なかった事にして明後日の方向へ流し見る。
「さあ~皆さん、今夜は無礼講ですよ? 楽しんで下さいね?」
天使の微笑で奈緒が云うと、総勢百人ほどの役員達が惚けた。
「あれえ?……夢かよ」
大きな溜め息を吐いた大樹を、こっそり奈緒が熱い視線を送ったのは内緒だ。
後日談。
「奈緒…あぁ、もう無理だよ…私も体力の限界だ…」
「私はまだ平気ですっ」
汗を流す大樹に、奈緒は潤んだ瞳で見上げる。大樹はゴクリと息を呑み……。
「我が家の芝生は広いですから、社長が手伝ってくれて助かります」
「……どうせ身体を動かすなら、ベッドの上が良かったんだが」
「何かおっしゃいましたか?」
笑顔の奈緒に大樹は黙る。
「終わったらご褒美をあげますからね?」
「褒美!?」
「社長室に残っていたサインする書類、お持ちしてあります。良かったですね? 社長。お仕事出来て」
「………はい」
逆らうのは止めようと思った大樹であった。
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