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最終章 白雪姫
148話 王妃
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これは銀髪の騎士がマロリーとサンドリオンと離れた直後の出来事である。
「それでは我々も行くとしましょうか」
銀髪の騎士を見送った3人はローズを先頭にして部屋を出る。
「どこに寄るのですか?」
「それは……ついてからのお楽しみにしましょうか」
ローズは笑いながら階段を下る。そのまま1階まで下りたのでどこに向かうのか見当がつかない二人だったがローズは更に下に、地下の階段を下り始めた。
「ずいぶんと暗いわね……」
地下へと続く階段は薄暗く、明かりもともされていないせいもあって不気味な雰囲気を醸し出していた。
「もうすぐ着きますよ」
ローズはそういうとやがて一つの部屋の前にたどり着く。よく見ると天井のいたるところにクモの巣が張り巡らされており、とてもではないが同じ白亜の城の中とは思えなかった。
ローズは無言のまま扉を開ける。
「ここは……?」
「ここは王妃の実験部屋ですよ」
「王妃の……?」
ローズは部屋の明かりをつける。部屋につけられていたランタンに明かりがともっても薄暗さはなかなか晴れなかった。
サンドリオンはあたりを見回すとローズの言う通りへの中には不気味な薬や大きな窯があった。
「ほら、そこにいますよ」
ローズが指さしたのはマロリーとサンドリオンの背後だった。振り返るとそこにはいつのまにかローブを被った人間が二人の目の前に立っていた。
「ひゃっ!」
女性二人は驚いて飛び上がってしまう。
背後に突如現れた人間はゆっくりと被っていたローブを脱いで顔をあらわにする。長い黒髪に色白な肌、そして何よりも気品のあるとても美しい女性だった。
「ごきげんよう……私はこの国の王妃を務めさせていただいております」
女性は丁寧にお辞儀するとローズの横に立つ。
「お久しぶりです王妃、玉座にいなかったのでこちらにいると思いましたよ」
「ほんとに久しぶりですね……あなたが来たということはこの世界はなんとかなりそうなのかしら」
「えぇ、もちろん」
ローズの言葉を聞いて王妃は嬉しそうな表情をした。
「良かった……私の方でもいろいろ模索していましたが……白雪姫と王子の代役を務められる方はいませんでした」
王妃はローズに言われた「白紙の頁」所有者をこの世界で探し続けていたらしいがどこにも見つからなかったらしい。
「「白紙の頁」の人間は世界に一人生まれるだけでも珍しい存在です……あなたが気負う必要はありませんよ」
「しかし……外から来た人間に役割を担わせるのはあまりにも……」
王妃は申し訳なさそうに顔を下に向ける。すでにローズからどのようにこの世界を救おうとしているのか聞かされているようだった。
「でも……あなたが白雪姫を演じる方ですね……とても奇麗な方」
王妃は顔を上げるとサンドリオンを見てそう言った。
「あの子がいなくなった事は本当に悲しいけれど……あなたならきっとこの世界の人々も受け入れてくれるわ」
「王妃は白雪姫の事を憎んでいるはずでは?」
サンドリオンの問いに対して王妃はふふっと笑う。
「それは立場じょうのものですよ……私個人としてはあの子の事をとても愛していました」
彼女の台詞を聞いてサンドリオンはシンデレラの世界の自身の境遇を重ねてしまう。
嫌うのは役割でしかないことはサンドリオン自身が一番わかっていた。
「……王子の役割を担う人間はもうこの世界にいるのですか?」
「じきにやってきますよ……」
王妃の言葉にローズは意味深な回答を返した。
「あの……私は外の世界の事を存じ上げておりません……もしよろしければですが皆様がどのような経験をしてきたのか教えていただけませんか?」
王妃の言葉にサンドリオンとマロリーは快諾した。
「私もこの世界の事を教えてほしいかな」
「やれやれ……とても崩壊を危惧している人とは思えませんね」
ローズの言葉に王妃は口を膨らませて文句を言っていた。王妃といい役割を持っているが彼女の容姿はサンドリオンとほとんど変わらなく、その反応にはかわいさがあった。
「そうね……まずは私の前世の記憶でも話しましょうか」
「前世!?」
王妃は目を輝かせてサンドリオンに詰め寄った。王妃のリアクションに驚きつつも前世の記憶がある前例がない時点で興味を引くのは納得だった。
「王妃、何か飲み物はありませんか?」
王妃の興奮に水を差すようにローズは尋ねる。
「そちらの奥の戸棚に飲み物が入っています……あ、くれぐれも赤い蓋のついた方は手を付けないでくださいね」
王妃の指をさした先にはボトルがいくつか並んでいた。容器の形は同じものだが、キャップの部分だけ色が赤色と白色に分かれていた。
「赤色の方は毒が入っています」
なんでそんな危険なものが置いてあるのかとサンドリオンは言葉に出そうとしてすぐに理解する。ここは王妃が魔女としての役割をこなす場所と言っていた。
あたりを見れば薬のようなものが入ったガラスの便や呪いのまじないの類がいくつも乱雑に置かれていた。物語の中で王妃が白雪姫を殺すための毒をこの部屋で作成しているのは誰が見てもわかった。
「わざわざ毒と普通の飲み物を同じ場所に置かなくてもいいでしょうに……」
「だ、だまりなさい……私がずぼらと言いたいのかしら!」
白色の蓋のついたボトルを手に取り、キャップを開けて飲み始めたローズに対して王妃は顔を赤くしながら物申した。その様子は王妃というよりも少女のようでかわいらしいとサンドリオンは思った。
軽く咳払いをして向き直った王妃はサンドリオンに再び距離を詰める。
「さ、さぁお話を聞かせてください!」
「えぇ……まず初めは私がシンデレラの世界で意地悪なシンデレラの姉の役割を持っていた頃……」
王妃は目を輝かせていた。サンドリオンは目を閉じてゆっくりと今までの旅の記憶を語り始めた。
「それでは我々も行くとしましょうか」
銀髪の騎士を見送った3人はローズを先頭にして部屋を出る。
「どこに寄るのですか?」
「それは……ついてからのお楽しみにしましょうか」
ローズは笑いながら階段を下る。そのまま1階まで下りたのでどこに向かうのか見当がつかない二人だったがローズは更に下に、地下の階段を下り始めた。
「ずいぶんと暗いわね……」
地下へと続く階段は薄暗く、明かりもともされていないせいもあって不気味な雰囲気を醸し出していた。
「もうすぐ着きますよ」
ローズはそういうとやがて一つの部屋の前にたどり着く。よく見ると天井のいたるところにクモの巣が張り巡らされており、とてもではないが同じ白亜の城の中とは思えなかった。
ローズは無言のまま扉を開ける。
「ここは……?」
「ここは王妃の実験部屋ですよ」
「王妃の……?」
ローズは部屋の明かりをつける。部屋につけられていたランタンに明かりがともっても薄暗さはなかなか晴れなかった。
サンドリオンはあたりを見回すとローズの言う通りへの中には不気味な薬や大きな窯があった。
「ほら、そこにいますよ」
ローズが指さしたのはマロリーとサンドリオンの背後だった。振り返るとそこにはいつのまにかローブを被った人間が二人の目の前に立っていた。
「ひゃっ!」
女性二人は驚いて飛び上がってしまう。
背後に突如現れた人間はゆっくりと被っていたローブを脱いで顔をあらわにする。長い黒髪に色白な肌、そして何よりも気品のあるとても美しい女性だった。
「ごきげんよう……私はこの国の王妃を務めさせていただいております」
女性は丁寧にお辞儀するとローズの横に立つ。
「お久しぶりです王妃、玉座にいなかったのでこちらにいると思いましたよ」
「ほんとに久しぶりですね……あなたが来たということはこの世界はなんとかなりそうなのかしら」
「えぇ、もちろん」
ローズの言葉を聞いて王妃は嬉しそうな表情をした。
「良かった……私の方でもいろいろ模索していましたが……白雪姫と王子の代役を務められる方はいませんでした」
王妃はローズに言われた「白紙の頁」所有者をこの世界で探し続けていたらしいがどこにも見つからなかったらしい。
「「白紙の頁」の人間は世界に一人生まれるだけでも珍しい存在です……あなたが気負う必要はありませんよ」
「しかし……外から来た人間に役割を担わせるのはあまりにも……」
王妃は申し訳なさそうに顔を下に向ける。すでにローズからどのようにこの世界を救おうとしているのか聞かされているようだった。
「でも……あなたが白雪姫を演じる方ですね……とても奇麗な方」
王妃は顔を上げるとサンドリオンを見てそう言った。
「あの子がいなくなった事は本当に悲しいけれど……あなたならきっとこの世界の人々も受け入れてくれるわ」
「王妃は白雪姫の事を憎んでいるはずでは?」
サンドリオンの問いに対して王妃はふふっと笑う。
「それは立場じょうのものですよ……私個人としてはあの子の事をとても愛していました」
彼女の台詞を聞いてサンドリオンはシンデレラの世界の自身の境遇を重ねてしまう。
嫌うのは役割でしかないことはサンドリオン自身が一番わかっていた。
「……王子の役割を担う人間はもうこの世界にいるのですか?」
「じきにやってきますよ……」
王妃の言葉にローズは意味深な回答を返した。
「あの……私は外の世界の事を存じ上げておりません……もしよろしければですが皆様がどのような経験をしてきたのか教えていただけませんか?」
王妃の言葉にサンドリオンとマロリーは快諾した。
「私もこの世界の事を教えてほしいかな」
「やれやれ……とても崩壊を危惧している人とは思えませんね」
ローズの言葉に王妃は口を膨らませて文句を言っていた。王妃といい役割を持っているが彼女の容姿はサンドリオンとほとんど変わらなく、その反応にはかわいさがあった。
「そうね……まずは私の前世の記憶でも話しましょうか」
「前世!?」
王妃は目を輝かせてサンドリオンに詰め寄った。王妃のリアクションに驚きつつも前世の記憶がある前例がない時点で興味を引くのは納得だった。
「王妃、何か飲み物はありませんか?」
王妃の興奮に水を差すようにローズは尋ねる。
「そちらの奥の戸棚に飲み物が入っています……あ、くれぐれも赤い蓋のついた方は手を付けないでくださいね」
王妃の指をさした先にはボトルがいくつか並んでいた。容器の形は同じものだが、キャップの部分だけ色が赤色と白色に分かれていた。
「赤色の方は毒が入っています」
なんでそんな危険なものが置いてあるのかとサンドリオンは言葉に出そうとしてすぐに理解する。ここは王妃が魔女としての役割をこなす場所と言っていた。
あたりを見れば薬のようなものが入ったガラスの便や呪いのまじないの類がいくつも乱雑に置かれていた。物語の中で王妃が白雪姫を殺すための毒をこの部屋で作成しているのは誰が見てもわかった。
「わざわざ毒と普通の飲み物を同じ場所に置かなくてもいいでしょうに……」
「だ、だまりなさい……私がずぼらと言いたいのかしら!」
白色の蓋のついたボトルを手に取り、キャップを開けて飲み始めたローズに対して王妃は顔を赤くしながら物申した。その様子は王妃というよりも少女のようでかわいらしいとサンドリオンは思った。
軽く咳払いをして向き直った王妃はサンドリオンに再び距離を詰める。
「さ、さぁお話を聞かせてください!」
「えぇ……まず初めは私がシンデレラの世界で意地悪なシンデレラの姉の役割を持っていた頃……」
王妃は目を輝かせていた。サンドリオンは目を閉じてゆっくりと今までの旅の記憶を語り始めた。
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