執愛気質の幼馴染に全てを奪われていたお話

月咲やまな

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第2話(辻涼葉・談)

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 夜になり、仕事を終えた咲真君が、実家ではなく、辻家ウチの方に帰って来た。昔から彼は、私の母親が仕事で帰れない日や遅くなる時はウチに泊まる。子供の頃からずっとそうだったからすっかり習慣化していて、大人になった今でも流れでそうしてくれているんだと思う。ウチの親は母だけだし、それも結構仕事で忙しくって留守にする方なので、一人で留守番をする私を心配しての事だろう。
 狩谷家が隣に越して来る前までは、私の部屋の隣室は、元々は押し入れみたいな使い方をしていた。なのに今ではすっかり咲真君の私室と化している。着替えもベッドも、仕事へ行く時に必要な物一式どころか、最近では実験でもするのか化学系の機材すらも持ち込んでいるから、狩谷家にある彼の自室よりも充実しているんじゃないだろうか。

狩谷家向こうには私の部屋は無いのに。母さんったら、咲真君の事だけ可愛がり過ぎでしょ)

 パジャマ姿で自室のベッドに座り、随分前に行った水族館で咲真君に買ってもらったクラゲの大きなぬいぐるみをぎゅっと抱き締める。
 まぁ、彼の家は一人っ子の私と違って兄弟も多いし、そもそも余っている部屋が全く無いから当然か。きっとそのうち咲真君の部屋すら『使わないなら寄越せ』って、弟達に奪われてしまうんだろうな。

(そうなったら、彼はきっと自立して、職場の側にでも引っ越すんだろうなぁ)

 ……そう考えると少し寂しくなってくる。五歳という年齢差のせいで一緒の学校に通ったのはほんの数年だったけど、その分、それ以外の時間はほぼ一緒だった弊害かな。

(こんなん、ブラコンみたいで嫌だなぁ。彼の方はシスコン感ゼロだっていうのに)

 寝る為にと布団の中に潜り込み、そんな事をちょっと思った。

 今頃、隣室ではお風呂上がりの咲真君がのんびりとしているはずだ。今夜の彼はいつもよりもご飯を多めに食べていた気がするから、お腹いっぱいになったせいで眠くなって、そのまましっかり休んで欲しいものだ。
 うつらうつらと重くなっていく瞼を閉じながら、ギリギリまで、少しでも彼の疲労感が軽減してくれる事を心から願った。


       ◇


 ……体が、ずんとすごく重たい。普段はちっとも意識していないのに、不思議と重力を過度に感じる。それに少し寒い気もする。瞼は重たくって一切開かず、腕も脚も全然動かせない。

(ま、まさか、コレが金縛りってやつなんじゃ!?)

 そ、そ、そんなっ。まさか、ゆ、ゆ、幽霊がウチに居るって事なんだろうか。だけど『これって霊障では?』と疑う様な被害はどんなに思い返したって一度も無い。霊感だって私には無いと思う。幽霊が視えた気がする瞬間すらも全くの未経験だ。

「……今日は、新しいパジャマを着てたのか」

 ぼそっと呟く様な声が聞こえた。多分男性の声だ。でも声がすごく小さくって上手く聞き取れない。これって幽霊の声なの、か、な?——いやいやいや!無い無い、無いって誰か言って欲しい!此処は生まれた時からずっと私の部屋で、今の所引っ越しの予定なんか無いのだから。
「一昨日買ったって言ってたやつ、だよな……。に、『似合ってる』って直で言いたかったなぁ……」

(え?まさか、誰かに『似合ってる』って一言が言えなかっただけで、幽霊に?)

 それが後悔として残っていて、地縛霊になったとか?だとしたら、ちょっと理由が可愛過ぎる。そのくらいだったらいくらでも聞いてあげるから、是非ともすぐ、す・ぐ・にっ!成仏して欲しい。

 ぐっと軽くパジャマの前側が持ち上がり、ボタンが外されていっている気がする。瞼が全然開かないままなので何も見えてはいないが、少しずつ肌が外気に触れていく感じがするから多分間違いない。コレが所謂ポルターガイスト現象ってやつなんだろうか。強い霊力を持った幽霊じゃないと扱えない能力だなんだと、本か何かで読んだ気がする。

(——ヒィッ!)

 喉の奥で悲鳴が溶けて消えた。此処まで体の自由が効かないとか、金縛りってやつはとても厄介で怖過ぎる。
 パジャマの前側が全て開くと、今度は体がぐっと仰け反った。まるで背後に腕が回されたみたいに上半身が不自然に持ち上がり、ブラジャーのホックでも外した後かの如く胸元が心許なくなっていく。
「……小さくって、可愛いなぁ」
 貧乳である事を昔から気にしているんだ、せめて慎ましやかだと言って欲しい。幽霊にそんな期待をしても無駄だろうけど。
「毎日揉んでんだけどなぁ。やっぱ、関係無いのか?なら女性ホルモンの問題か……もっと太らせるか?んでも、細くて小柄なのも、子供の頃のまんまみたいで可愛いしなぁ……」

(ま、ま、毎日?毎日幽霊に胸を揉まれていたの?そんな馬鹿なっ!)

 次々に聞こえてくる言葉のせいで一気に体温が奪われていく気がする。だからなのか、穿いているはずのパジャマのズボンすら次第に存在感がなくなっていった。脱がされた?霊障で消えたとか言わないよね!?セールでとはいえ買ったばかりなのに!
 内心泣きそうになっていると、今度は胸の辺りが急に熱くなった。胸の先を変な感覚が包んでいる。熱くって、ヌルついている小さな何かが這っている気がする。この幽霊は蛇みたいな姿をしたモノなんだろうか?

(やだ、怖い、助けて!)

 そうは思うのに体は相変わらず微動だにせず、意識も何処か少し遠くにある感じだ。いっその事気絶でもしてしまえばいいのに、悲しいかな、意識だけは保ち続けてしまっている。
 ぬちゅっ、ちゅぱっと変な音がひたすら続き、胸が何かに包み込まれたみたいに温かい。冷えた室温のせいか一層温かく感じる。幽霊って冷たいモノかと思っていたけど、どうやら違うみたいだ。
「あぁ……美味しい。甘い、ずっと食べていたい」
 飴じゃないんだから人の体が美味しいはずがない。なのにそんな発言をするとか、幽霊ってモノが益々わからなくなっていく。
「……時間も遅いし、とっととぶっ込むか」
 熱い何かが胸元から離れていき、脚が大きく開かれていく。恥ずかしくって堪らないのにちっとも抵抗出来ない事が残念でならない。……それにしても『ぶっこむ』とは?ゴソゴソと脚の間で何かが動いている気がするが、ぶっこむ、ぶっこむ、何を、何処に?と動きの鈍い頭で必死に考えていると、秘裂に沿ってぬるりとした熱いモノが突如当たった。「……はぁ、毎晩だろうが、この瞬間はやっぱ緊張すんな」と熱い吐息を吐き出しながら言う、幽霊らしき者の声が耳にまで届いた。

(——ちょ!ま!無理!)

 今この瞬間、自分がどういう状況にあるのかにやっと思い至り、頭の中では必死に叫ぶけど今尚体は動かず声も出ない。金縛りのせいなのか無反応を突き通してしまっている。どうして?何で?幽霊にこんな事をされてしまう覚えは無いのに!
 男性経験皆無な体なのにぬるりとした何かが秘裂を割って挿入ってきた。絶対に痛い、痛いに決まっている!と心の中では身構えたのだが、不思議とソレは奥までズンッと、至ってスムーズに挿入り込んできた。その形を前々から知っているみたいに、あるべき場所に収まったみたいに不思議と違和感がない。重たくって熱くって、少しの苦しさを感じはするけど、痛いといった感覚は少しも無かった。

「あー……気持ちっ。こうするようになってもう十五年超えたけど、全然飽きないし、ちっとも萎えないな。……やっぱ俺達、相性がいいのか?ははっ」

 サッと血の気が引いていく感覚に陥る。十五年間霊障の被害に遭っていたとか、今更知りたくもなかった。慣れ過ぎて気が付かなかった?臭いとかもずっと嗅いでいるとちっとも気にならなくなっていくみたいに、体の不調やこういった被害も回数を重ね過ぎたせいで今の今まで知らずにいたとか……

(絶対に、お祓いに行こう!)

 ぬぐぬぐと肉壁をナニかが擦りあげていく感覚のせいで頭がぼぉとしていくが、体の自由が効かないせいか、おかげと言うべきか、何処か他人事に感じられる。だけど例え様のない心地良さも正直あって、ふわりとした眠気が急に襲ってきた。たまに腰が跳ねそうになる程の強い刺激を感じて意識が引き戻されるが、無反応なままの体はやっぱり微動だにせず、何かが出挿入りしている状態を享受している。
「ふっ、んっ……いぃ……ぁっ——」
 初めてだったのに、初めてのはずだったのに、いつの間にか幽霊なんかに大事な初体験を奪われていたのかと思うと段々泣きそうになってきた。なのに体は快楽に浸っているのか甘い痺れが体を包む。その感覚が頂点に達した時、私の意識はやっと眠りの奥深くに沈んでいってくれた。
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