執愛気質好きの私が職場の先輩に全部奪われたけど、『幸せ♡』でしかないだけのお話

月咲やまな

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【第6話】腑に落ちる(神楽井道真・談)

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 朝から全然仕事が手に付かない。一応PCの画面を開いてはいるのだが、夢見心地と罪悪感との間をずっと行き来している様な状態だ。

 この週末。共に過ごした明智はすごく可愛かった。二日間以上、視界も言葉もオレに奪われた状態だったのに、彼女はあまり抵抗もせず、されるがままに蹂躙されていた。何度も何度も何度も奥に中出しされ、食事などの管理をされ、赤子みたいに面倒を見られて屈辱的だったろうに、怖かったろうに、今では職場で真面目に仕事をしている。
 オレに痴態を撮られ、脅されてもいるから通報も出来ない。職場も同じで監視でもされているみたいな状態だから、信頼出来る相手に相談も出来ずに不安だろう。席は近かろうが、きっとオレの事なんか明智は知らなかったはずだ。担当部署も違うし、仕事での接点もなく、話した事だって無い。いつもオレだけが一方的にじっと見ていただけだから。

 入社した当初から『可愛い』と思って見ていた。

 何度も来る好条件の転職話をほぼ全て切ったのも(断ったのに、まだ来るものを除く)、彼女との出逢いがきっかけだった。他の職場に行ったら明智をそっと見守る事が出来なくなるからだ。仕事の隙間でちょっとその容姿を見られればいい。そんな想いだけで充分だった。
 オレじゃ彼女よりも四歳年上だし、見た目ももっさいから見向きもされていないのはわかっていた。話す機会も無い相手から見られているのは怖いだろうけど、募る気持ちはどうにも出来なかった。

 諦められず、でも何も行動出来ないまま一年半が経った頃。明智が急に変わった。世間一般的には可もなく不可もなくといった雰囲気だったのが、急にもっと可愛く変身し始めたのだ。しかも、一ヶ月おきくらいでその雰囲気がどんどん変貌していく。可愛い系だったのが、綺麗めになったり、かと思えばボーイッシュな容姿になったりと。だからか周囲の社員達の反応も随分変わった。
『明智、なんか最近可愛くないか?』
『雰囲気が随分変わるけど、全部似合ってるとかすごいよね』
 そんな話を周囲がする様になった。明らかに気のある男どもも増えてきたし、同じビル内に入っている別会社の社員達まで明智の姿に目を奪われている事まである。そのせいで最近は焦りを感じ始めた。

(……誰かと、明智が付き合い始めたらどうしよう?)

 不安で胸がいっぱいになって、物理的に爪を噛む事が多くなった。だけどやっぱり何も出来ないままでいたのだが、強制参加させられた飲み会で偶然明智の介抱を任され、タクシーで送る事になり、寝てしまったのを『これ幸い』とばかりに自分の家に連れ込んでからは、知っての通りだ。
 無理矢理滅茶苦茶抱いた事自体は後悔していない。たっぷり中出しもしたから責任を取ろうとも思っている。だけど……いくら体を奪われたとはいえ、よく知りもしない男に脅され続ける日々は苦痛でしか無いのだろうなと思うと胸が苦しくなる。申し訳ない気持ちでもいっぱいだ。怖いだろうに叫びもせず、逃げようとしたのも最初だけだった。

 優しいのか、ただ気が弱いのか。

 どちらかはわからないが、このままでいていい訳がないなと思うと、もうどうしていいのかさっぱりだ。——そんなふうに頭を悩ませていると、明智がゴソゴソと動き始めた。目が合いそうになると慌てて逸らしてしまう。この行動のせいで俺への不快感が更に強くなったら?とまた怖くなった。
 それでもまた、そっと彼女の様子を伺っていると、とんでもない光景を目にしてしまった。

(……明智が、結婚情報誌を見ている?)

 その事実が胸に刺さる。彼女がこの会社に入社してからの二年間。彼氏がいる気配は一度もなく、飲み会にもほぼ参加せず、真面目に仕事を頑張ってきた彼女の姿を見続けてきたが……こんな事は初めてだ。

(まさか、明智には結婚の予定が……あった、のか?)

 一瞬にして目の前が真っ暗になった。結婚目前であったのだとしたら、オレのした事は想像以上の愚行だったのでは?誰かから奪ってやれたと誇るべきか、彼女の幸せを踏み躙ったのだと頭を抱えるべきなのか。もう胸の中がぐちゃぐちゃだ。
 これでは仕事になりそうにない。もう帰りたい……。あぁ、でも帰るなら明智を連れ帰ってしまいたい。『知った事か』と閉じ込めて、『結婚ならオレとすべばいい』と意地悪く囁いて蹂躙してしまいたくなる。

(そのくらい、彼女の痴態は最高だった……)

 思い出すだけで体がゾクッと震えてしまう。既に俺の子を孕んでいたらいいのにと心から願ってもしまった。


       ◇


 基本的な終業時間となり、今度は、『この後はどうしたものか』と頭が痛くなってきた。朝の時点では家に連れ帰る気満々だったが、『結婚したい程の相手がいた様な子を、本当に連行してもいいものなのか?』と気にしてしまう。
 オロオロとしながら彼女の様子を伺っていると、メッセージの着信でもあったみたいでスマホを確認し始めた。すると急に顰めっ面になり、鞄を持ってスマホを中にしまうと、足早にエレベーターの方へ歩き始めた。

(何処に行く気だ?まさか、帰るんじゃ?)

 気になって明智が今まで座っていた席に行ったが、慌てて立ち去ったからか、戻るつもりなのか、ノートパソコンがそのままだ。しかも鞄の中に入れ損ねたスマホまで座席に残っている。
 拾い、『届ける』という、すぐに追いかける理由を手に入れたオレは彼女の後を追った。


 社内から出て、廊下で一人になると、今度は急に目の前のスマホの中身が気になった。覗きは駄目だとわかってはいても、明智の結婚相手が気になってしょうがない。『悪いやつかも、騙されてたら大変だ』とか、そんな言い訳をしながらこの二年間の間にこっそり入手済みであったパスワードを打ち込んでロックを解除した。
 連絡先、SNS、ショートメッセージなんかも確認したがそれらしい相手が何故か見当たらない。画像が保存されているアプリを開いても、不思議なくらいに男の影はなかった。

(ネットでの検索記録の方を確認してみるか)

 他にも色々と弄っているうち、ログインしっぱなしになっていた動画投稿サイトに行き着いて、「あ……(察し)」と呟いてしまった。明智が視聴したシュチュエーションボイスドラマの一覧記録に行き着いてしまったからだ。並ぶタイトルはかなり壮観だった。

『孕ませ彼氏。私とは別れたと思っていなかった元彼に無理矢理襲われ監禁生活スタートです』
『愛情激重ヤンデレ隣人との快楽堕ちから始まる同棲生活』
『親友だと思っていた彼が激重ヤンデレ属性に豹変して美味しく頂かれちゃいました』
『囚われの花嫁~座敷牢から始まる溺愛生活』

 ——などなど。随分と、かなりハードなタイトルのオンパレードだった。どれもこれも執愛モノやヤンデレモノばかりで普通の恋人同士の甘い恋愛物語の類は見事なまでに見当たらない。いくら遡ってもゼロだ。いっそ清々しいくらいに突き抜けている。きっと明智は自分の性癖をきっちり自認し、受け入れているのだろう。

(……コレって、脈あり、なのでは?)

 よくよく考えると、明智の様子は終始本気で抵抗する者のそれではなかった。今朝の様子なんかも思い出し、全てが全て腑に落ちていく。結婚情報誌を見ていたのも、段々と『オレとの未来を想像していたんじゃ?』とまで思えてきた。——そんなふうに考えていると、会社の方から騒がしい声が聞こえてきた。トラブルだろうか?と気になって戻ろうとすると、社員達が口にしている言葉の中に『明智』というワードが混じっていて聞き耳を立てる。

「——明智が、会社の前で男に絡まれてるぞ」

 その言葉が聞こえた途端、オレは一目散に問題の場所へと向かって走り出した。
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