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1ー12、皆んながそう言うから

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 「あのー大分ここの店はなんというか、大分年期入っていますね。」
 「そうだねーもうガタガタだよこの家は。」
 「失礼ですが、貴方は武器職人ですよね?おまけにドワーフ、この家くらいすぐ直せそうだけども。」
 「そうなんだがね、材料がないいんだよ。なんせ魔族が裏の鉱山を制圧しているらしく、危険だから出入りを禁じられているんだ。」
 
 キーマンの顔が強張る。
 「キーマン、落ち着け。」
 「その話詳しく聞かせてもらえませんか。」
 「いいけど、俺らはあくまでそう聞かされているだけなんだよ。」この方はどうも何かに納得していないような顔だ。

 「失礼ですが、お名前は。」
 「私の名は、クックだ。」
 「ではクックさん、その魔族が鉱山を制圧しているとの情報は誰からいつ頃言われた、もしくは聞いたのですか。」
 「裏の鉱山が魔族に制圧されているという情報が入ったのは、もう数年前だ。それを報告したのはここの国王だ。」
 「だが、俺はその時からなんかこの国の金まわりが急におかしくなったのが気がかりなんだが、みんな魔族のせいということを完全信じ切っていて誰も調査に声をあげてくれなくてね。挙げ句俺はいつしか悪者扱いさ。」

 「クックさんでは、この私、ウスミがご協力致しましょう。」
 「おいおい、それではお前さんも悪者扱いだぜ、よそ者を巻き込むわけには…」
 「いいえ、クックさんこれは機密事項ですが、私はとある国よりここの国の鉱山が魔族により制圧されていると聞き、調査に向かうように指示されてここへ来たのです。」
 「はあ…」

 急にこんな人が現れたらそうなるはな。今まで誰にも協力してもらえず、きっとここに閉じこっていたのだろう。

 「私はまず、国王に会ってきます。2人はここで待機を。」
 「キーマン、ここでクックさんといてそのほかの事や今こうしている間にもこの家に色々投げつけて来るバカがいる。護衛も頼む。」
 「わかりました。ウスミさん。任せてください。」

 そうと決まれば国王のところへっと行きたいところだが、国王にはそんなに頻繁に会えるわけでもないだろうし、何か都合の悪い者が来たとなれば2回目はないだろう。まずは国民へ聞き取りだ。

 「すみません。」1人のドワーフに声をかけてみた。
 「おお!冒険者か!しかも隣国の。」
 「まあ。ええ。」
 「この国ではそんなに隣国の冒険者は英雄的な存在なのでしょうか?」
 「英雄もなんも、裏の鉱山に魔族がいることを真っ先に知らせてくれて、しかもこの間主犯格を捉えたって報告に来てみんな大感謝だよ。ありがとう。」
 「この間とはいつですか?」
 「おや知らないのかい?まああの国はそういうことが当たり前なんだろうね。優秀な国だ。」「あー悪いね、ついつい、えっとね3ヶ月くらい前だったかな確か。」

 ゴイの方々が誘拐された時期とは合う。まあたまたまかもしれない。他の国民にも聞いて回ろう。
 「ありがとうございます。」
 「いい旅を~。」

 次はクックさんについて聞いて回ろう。
 「あのーすみません。」
 「おっ英雄さんじゃないの、この間はありがとうね。」

 この方も同じ反応だ。
 
 「あの屋敷の方について少々おたづねしたく。」

 急に相手の顔が変わった。

 「あーあいつか、あんたさんに目をつけられたということはあちつはもうおしまいだな。」
 「確かあの屋敷にお住まいの方はクックさんでよね?」
 「そういう名だったね。」
 「もうおしまいとは?」
 「あれ?あんたさんあいつを拘束しに来たんじゃないのかい?まだ、あいつはここにいるつもつもりなんか。早く拘束して持っていってくれ。」
 「大分、嫌気がさしているようで。何をされたんですか。」
 「あいつは、鉱山に魔族が来たってことも、主犯格を捉えたことも隣国のでっち上げだって声をあげていたんだよ。本当に恩知らずなやつだ。隣国の報告があったから、こうして今安全に暮らせるのにさ。」
 「主犯格は捕まったのに、出入りはできないと。」俺はさらに質問してみた。
 「だって、もう主犯格拘束するまでに何年もかかってなんも残ってないって言われて、みーんな出稼ぎしてるよ。別の鉱山へね。」
 「あなた、さっきから、言われた、聞かされたとばかりですが、見てはいないのですか?現場を。」
 「見てないな。」
 「私から貴方に一つ置き言葉を…」

 

 「では、ご協力いただきありがとうございました。」
 「お、おう。」

 この国のドワーフ族は恐らく誰かに洗脳されている。何か強い信じ込みにより、ここでは隣国、国王の言ったことは全て正しいという思考になっており、疑うことをしないんだ。ただ、クックさんはなんらかの事情により洗脳されていないんだ。

 その後も結構な数の国民に聞き取りを行ったが、皆反応は同じで隣国は英雄であり正しい、あいつらを疑うなんて罰当たりだと言う。

 この王国凄い悪事を働いているか、隣国とやらに利用されているのかもしれない。ひとまずクックさんの元へ戻ろう。
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