マスコット・ロールプレイ ―人外珍道中なんて聞いてない―

結城あずる

文字の大きさ
9 / 19
霊峰珍道中

第8話 強行ミッション

しおりを挟む
見渡す限りの黒い大地。そこを、ミスマッチ要素満載のピンクのウサギがトボトボと歩いている。

倫太郎が今いる場所はエルラの領域の一つである"黒凱"。

黒曜石のような岩石で形成さているここは溶岩地帯となっていて、あちらこちらでプスプスと黒煙を立ち込めさせている。

黒凱の只今の気温は70℃。地面は熱々の鉄板状態である。

言うまでもなく人が活動できる環境ではない。

さらに、黒曜石のような岩石はどれも刃物のように鋭利になっており、まともに歩けば足裏からスッパリと両断されるほど切れ味抜群である。

そんな、ある種の地獄のような場所になぜ倫太郎がいるのかと言うと、話は少し前に遡る。



ー少し前ー
「さて。出来る限り転送で飛ばしたがそう猶予もない。奴が舞い戻る前に策を練る」
「策?えっと、具体的に何をするつもりで?」
「罠を張る」
「罠?」
「万全ならまだしも、こっちのダメージが抜けていない状態で真っ向から挑むのは分が悪い。その劣勢を埋める為の罠じゃ」
「ふうむ。なるほど」
「お主。罠を卑怯などとは思っておらんか?」
「え?いや!全然!滅相も!」
「本来なら支配主同士で拮抗する間柄だが、今回は侵入者への措置を講じるためにほんの一瞬付け入る隙を与えたのだ。のせいでのぉ」
「(ブルッ)奇襲みたいなマネする敵が悪いね!もう100%悪いね!!だから罠とか全然OK!むしろ一番いい手段じゃないでしょうか!!!やったりましょうよ!!!」
「そうか。分かってくれるか」
「そりゃもちろん!!」
「ではしっかりと働いてもらおうかの。この策の鍵は有無もなく主じゃからな」
「へ……?」




そのまま転移で強制派遣をさせられたのが事の顛末である。

見知らぬ地プラス敵地。

もうそれだけで心細さはK点を超えているが、逃げる事も隠れる事も出来ない現状で倫太郎にはもう腹を括る以外の選択肢が無かった。

「ん?あれは……」

進行方向の少し離れた先に、何かが動くが見えた。

よーく見るとそれは魔物である。

姿はまるでアルマジロ、というよりまんまアルマジロ。しかし、色は鉄のようなねずみ色をしていて、象と遜色ないアルマジロとは言えないサイズ感である。

当然そのまま何も起こらないはずがない。

互いに目と目が合う。

黒凱に生息する巨大アルマジロことタイトマルロは、その身をくるりと丸めてキレイな球体となる。

そこからの高速回転。

唸りを上げて地面を抉り、その回転エネルギーをそのまま推進力に変換し、勢いよく倫太郎目掛けて突っ込んでくる。

そのスピードはまるでF1カー並み。

ラビ太ボディの機動力では、そのF1カーばりのスピードを出すタイトマルロの突進を避けられずあれよあれよの間に追突を許す。

「ぼふっ!?」

呻く倫太郎。当然受け止めきれる訳もなくそのまま突き飛ばされる。

しかし、目に見えて異変を来したのはタイトマルロの方。

倫太郎に追突したと同時にズドンッと鈍い音が鳴り響き、タイトマルロの硬質な体表が大きく陥没し崩落する。

よろめき混乱するタイトマルロ。

ダメージを負いつつも、再度丸まって臨戦態勢を取る。

魔物にも学習をするタイプは存在するが、タイトマルロは完全な野生型。本能のままに敵に向かう。

そして、二撃目を倫太郎に放ったところでタイトマルロは絶命した。

激しい追突のせいで頭がクラクラしている倫太郎であるが、体はしっかりと優良体をキープしている。

今タイトマルロを混乱の波に追いやったのは、倫太郎が新たにである。

黒凱に来る前に倫太郎はスキルの整理をさせられ……もとい、していた。

期待を込めて取得した〈転移〉が現状で使いものにならないという事で、〈転移〉と〈演算処理〉の二つをきっぱりとアンインストールし、戦いに備えて代わりとなるスキルを取得していた。

タイトマルロにダメージを負わせたのは〈カウンターミラージュ〉というスキル。

性懲りもなく受け身系のスキルである。

受けた分のダメージを倍加して攻撃に変える〈カウンターブレイク〉とは違い、このスキルは受けたダメージを同時に丸々相手にも与えるというもの。

俗に言う"痛み分け"という奴である。

つまり。威力が強ければ強いほど、手数が多ければ多いほど効果が高まる。

しかし。お気付きの通り、このスキルも基本は捨てである。

防御力や耐性値に開きがあれば条件が全く同じという訳でもなく、発動条件として必ず攻撃を受けないといけないので、下手をしなくても強者相手では無駄死に率が絶望的に高い。

他にも制約があるので使い勝手も悪い。

特にネックとして挙げられるのが、発動には相手を視認していないとダメというのがある。

つまり。奇襲や集団戦闘などには効果を発揮しにくい"タイマン型"なのである。

率先してこのスキルを取得しようとする者は、かなりイレギュラーの存在として扱わるのが現実なのである。

しかし。奇しくも、カウンター系のスキルは〈ダメージ無効〉との相性が引くほど良い為、自衛目的を優先していた倫太郎はこのスキルを迷わず選んだのだった。

速攻カウンターの〈ミラージュ〉。
一撃必殺の〈ブレイク〉。

世界でも類を見ないカウンター戦法がここに誕生した。

「これで何体目だよ……」

嫌気がダダ漏れる倫太郎。

それもそのはず。今の襲撃で返り討った魔物の数は二桁を越えていた。

数メートル進めば魔物に出会い、また数メートル進めば魔物と出会う。

まるで倫太郎に吸い寄せられるかのように、ひっきりなしに魔物とエンカウントする。

ただでさえ、世界に同じ姿が無いピンクの二足歩行ウサギが歩いていれば否が応でも目立つ。それが侵入者であれば襲われない理由が無い。

ある程度は予想と覚悟をしていた倫太郎であったが、その予想と覚悟が揺らぐほどの高エンカウント率に打ちのめされていた。

もちろん、必殺のカウンター戦法の甲斐あって危険という危険には陥っていない。

ただただ単純に、アウェーの夥しい洗礼にまたもや心細くなっているのであった。

『敵方の眷属相手に危なげなくか。上々かの』

姿のないミストラの声だけが倫太郎へ届く。

スキル〈念話〉である。

「危なげなくないよ?すげぇ怖いけど?」
『戦地で恐怖があることは尚いい事だ』
「あれ?どうしてだろう?噛み合わない」
『小手調べはここまでじゃ。本命に心血を注げよ』
「本命って言ったって、全然出会さないぞ?いや、出来れば出会したくないんだけどさ」

キョロキョロと辺りを見渡しながら、のそのそ敵地を歩く倫太郎。

慣れない魔物からの襲撃と一人ぼっちの寂しさが、倫太郎の気持ちと連動して足取りを重くする。

倫太郎が「自分は一体なにをしているのだろうか」と問答をし始めていたその時だった。

パキンッ!!

何かが割れるような音が倫太郎にもしっかりと聞こえた。

「ん!?」

感知系のスキルを持っていない倫太郎でも、空気が一変したのを直に感じる。

直後。倫太郎の前方の空間に裂け目が生じ、そこから赤銅色した獣の前足なるものが乱暴に飛び出す。

次第に裂け目は無理矢理広げられるように拡大していき、そこから這い出るように一匹の見覚えある獣が姿を現す。

「!!!」

空気が一変すると言うには生易しい、大気が張り詰める存在感。

黒凱の支配主・バリオスは、ドスの効いた低い唸り声を出しながら倫太郎の前に立ち塞がる。

「何も無い所から出て来たけど!?」
『〈次元転送ディメンション・ゲート〉で次元の狭間に追いやっていたが、奴の力を考えたらそろそろ這い出て来る頃合いじゃな』
「なんで目の前!?」
『そりゃわしの匂いがついてるんじゃろ』
「え?匂い?」
『わしの匂いがつくように何発もお主に手数食らわしたのだからな。狙い通りじゃ』
「なにそれ!?初耳!?」
『この為にお主をそこに送ってるんじゃからな』

倫太郎の視界が歪む。

作戦の大まかな内容は黒凱に送られる前にミストラから伝えられてはいたものの、いつ・どこで・どのタイミングというのは何も聞かされていなかった。

思いもしないタイミングで眼前に敵が現れるとは微塵も思っていなかった倫太郎は、情報と気持ちの整理で頭がグラつきそうになった。

しかし。視界が歪んだ理由は実はそれじゃない。

基本環境が灼熱の大地である黒凱であるが、その気温や地熱をも上回る高熱が辺りの視界を歪めせていた。

その高熱の元凶はもちろんバリオス。

すでに臨戦態勢である。

ミストラアイツの匂いを辿って出てきたら、まさか居るのはあの邪魔虫とはな〕
「いやー……参っちゃいますよねー」
〔丁度いい。この場で制裁してやろう〕
「参っちゃうなーーーー!!」





倫太郎が叫んでいたその頃。白麓では―――

邂逅は狙い通り。

あとは手筈通りいけるかどうか……じゃな。

仕込みもいくつかしたが、わしの力と倫太郎あ奴の力の掛け合わせがどこまでバリオスに通用するか……これはわしにも分からん。

吉と出るか、凶と出るか。

最悪、相打ちでも構わんな。

うむ。良い出目であることを願おう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

碧天のノアズアーク

世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。 あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。 かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。 病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。 幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。 両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。 一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。 Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。 自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。 俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。 強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。 性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして…… ※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。 ※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。 ※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。 ※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...