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第2章 荒廃した異世界
第31話:家族3人、川の字で寝る(寝られません)
しおりを挟む転移魔法は行ったことのある地点へ瞬間移動できる。
某国民的RPGの呪文に準えて、“ルーラ”とも呼ばれていた。
しかし、この異世界では使えない。
1度でも行ったことのある印象深い土地(大砂竜との戦闘とか、ジャジャたちの墓がある場所)になら飛べるのだが、アルマゲドンの既知エリアにはどこにも飛ぶことはできず、拠点のある街にさえ帰れなかった。
転移はできないが──召喚ができたのは不幸中の幸いだ。
以前ミサキたちの前でしたように、中庸の街マイスレトンにあるツバサたちの拠点を喚び出すことはできた。
土魔法で適当な岩山を作ると、そこに洞窟を設けて中に拠点を召喚する。周囲にはマリナが防御結界を何重にも張り巡らせた。
もし破られたら警報が鳴るのでセコム代わりになる。
日が暮れてきたので、今夜はここでビバークすることになった。
「いや──家があるから野宿じゃないか」
~~~~~~~~~~~~
「──で、なんでアタシら飯食ってるわけ?」
「食いながら訊かれても困るな」
拠点内のダイニングテーブルを囲む3人。
ツバサはエプロン姿のまま知恵の鮭のムニエルをおかずにご飯をかき込み、ミロも鳳凰の骨付きもも肉にかじりついている。
マリナは神茸の和風パスタをチュルチュルと啜っていた。
「日が暮れたから夕飯を食うのは当たり前だろ?」
「そりゃツバサさんはお母さんだから、そう考えるのが普通だけどさ」
「誰がお母さんだ」
ここまではテンプレ──ミロは改めて食事の理由を問う。
「アタシらってば神族になってるんでしょ? ご飯を食べなくても寝なくても平気なイモータルボディ! なら、晩御飯なんていらないじゃん」
言いながらミロはローストドラゴンにかじりつく。
「なら、おまえはどうして飯を食っている?」
「そりゃ目の前にお母さんの手料理があったら食うに決まってるじゃん」
誰がお母さんだ、と繰り返してツバサは続ける。
「確かに俺たちの肉体は神族になっているらしい」
だが──中身は別だ。
「中身って……?」
「心、精神、意識──そこら辺は人間のままと言っていい」
肉体は神族となっているが、中身は羽鳥翼や君原美呂という人間のままだ。
人間の精神はいくら鍛えようと脆弱である。
「肉体が不老不死で疲れ知らずの神族になっても、俺たち人間の精神はまだそれに追いついていないはずだ。人間とは食事、睡眠、休息、娯楽……こういったものを欠かすことができない」
肉体は求めずとも精神が求めようとする。
疲れた心身を癒やすためには、眠りやご飯は欠かせないものだ。
だから食べておけ、とツバサは仙草サラダを頬張る。
恐らく、この肉体は飲食や睡眠を必要としない。
この半日、ツバサ自身やミロとマリナの動向から見当がついた。
だが、不要だからといってできないわけではない。
ツバサは現実に戻れた時のことや、娘たちの精神衛生上の観点から熟慮した結果、一日三食と適度な睡眠は必要と判断した。
今後は休息や娯楽の必要性も考えなくてはならないだろう。
「別に神族だからって食ったり飲んだり眠ったりできないわけじゃない。単に不要ってだけだからな。嗜好品みたいな感覚で食べればいいんだよ」
「大人が煙草を吸いたがるみたいな感じ?」
俺は呑まんけどな、とツバサは嫌煙家なのをアピールする。
「食事が済んだら一休みして、今日はもう寝なさい」
ツバサでさえ精神的に疲れていた。
二十歳の男の精神力でもこうなのだから、ミロやマリナはもっと疲れているに違いない。実際、ミロも巨大猪の肉を噛みながら眠たげだ。
「あ、すげー、マリナちゃん食べながら寝てる」
「さっきから静かだと思ったら寝てるのかそれ!?」
ミロが指摘で初めて気付いた。
マリナはこっくりこっくり船をこぎながらパスタを啜っており、もうほとんど寝入っている状態だった。
食事の後は風呂──と思ったが彼女たちも限界らしい。
食事を終わらせるとミロやマリナは自室に送って休ませ、ツバサも後片付けをして自分の部屋へと戻っていった。
~~~~~~~~~~~~
ここからは──大人の時間だ。
ツバサは自分の部屋に戻ると、厳重に鍵をかけた。
そして、浴衣のような長襦袢のような和風っぽい寝間着に着替える。
我ながら閨で客を待つ遊女のようだ。
まさかこれを着る日が来るとは思わなかった。
「ハルカ様々だな……」
ハルカはツバサたちを「上客ですから!!」と会う度に歓迎してくれて、あれやこれやと自作の衣装をくれたのだ。これはそのひとつ。
ベッドの上に腰を下ろして、何度も何度も深呼吸する。
「……………………よしっ!」
気合いを入れたツバサは自分の大きな胸を見下ろした。
俯瞰的な位置から見ると、特盛りの巨大乳房に邪魔される。
足下どころか下半身も見えない。
かれこれ一年、この化身でやってきたが……。
「まさか、本当の神族に……それも女神になってしまうなんて……」
完璧に女神化したことについては誠に遺憾である。幼少期から女の子と間違われてきたツバサにしてみれば、女性化したことは未だに受け入れられない。
こんな身体はイヤだ! 早く男に戻りたい!
これは紛れもない本心であり、掛け値無しの本音でもある。
それはそれとして──この女体に興味がないわけではない。
ツバサとて健全な男子。目の前に自由になる女の身体がいれば、いやらしい気持ちのひとつやふたつは込み上げてくる。ちゃんと性欲だってあるのだ。
例えそれが自分でも──女性の肉体には興味をそそられる。
この異世界に初めて来た時は無様に取り乱してしまったが、あの経験を経たことで耐性ができた。この身体を確かめたくなるぐらいには……!
ましてやツバサはおっぱい星人。
同好の士である獅子翁とはおっぱい談義で盛り上がったものだ。
「あの夢にまで見た爆乳が今……この胸にある!」
何故だろう……あんまり感動できない。
なにせ自前だから気持ちは複雑だ。見下ろせば最高の俯瞰が広がり、極上の谷間をいつでも覗けるが、それは自分の胸なのだ。
「なんだろう……ムラムラするのに、このガッカリ感は」
興奮するのだがいまいち盛り上がれなかった。いくら素晴らしい女体美といっても、自分自身には淫らな気持ちになりにくいのだろうか?
「しかし、我ながらスゴいよな……Jカップだっけ」
もっと大きいような気がする。気のせいか?
そっと両手を乳房に添える。添えただけなのに、張りのある肌から心地良い弾力が返ってきた。おまけに乳房その物は感動ものの柔らかさだ。
ミロに揉まれたのを教訓に、繊細な指使いを心懸ける。
「んっ……胸が大きいと鈍感だと聞くけど……」
そんなことはない。
ツバサが例外なのかも知れないが、この胸は酷いくらい敏感だ。乳房の肌に指を添えただけでゾクゾクするし、身体のあちこちも疼きを誘発される。
「あはっ……す、すごい……」
両手でポンポンと弾ませるように持ち上げると、乳房の肉がダイナミックに波打っている。こんな光景、その手の動画でも早々お目にかかれない。
両手に掛かる重圧も凄まじいのに素晴らしい。
例えようもない柔らかさなのに、確かな弾力と張りのある乳房。
いつまでも触っていたくなる心地良さだ。
自分の胸を揺れ動かして遊んでいると、その先端が寝間着にこすれて程良い硬さを帯びてきた。段々と快感が増幅していき、漏れる吐息が荒くなる。
昼間と同様、乳房をもてあそんでいるとその頂点に変化が現れてきた。
襦袢に覆われたままでもわかるほど乳首が硬く隆起してきて、その基盤となる乳輪までもがふっくらと盛り上がってきたのだ。乳房で快感を得ているという生理的変化なのだろうか?
おまけに──胸が熱を持ちながら張り詰めてきた。
心なしか膨らんできたような、大きく重みを増してきた気がする。
頬どころが肩まで紅潮するように熱くなってきた。
指や手まで女らしいほっそりしたものに変わっている。
そんな指ではこの巨大すぎる乳房はうまく揉めないが、それでもおかしくなりそうな快感が込み上げてきた。次第に胸だけでは満足できなくなる。
お尻や太股……男の時にはなかった女性らしい肉の集まった部分も気になり、そっと手を伸ばしては感触を確かめる。
どこもかしこも敏感で、指先が触れただけでビクンと痙攣してしまう。
そんな通過儀礼を経てから、ゆっくり女体を堪能していく。
いつしか──自分の女体を舐るようにまさぐっていた。
気分は高揚する一方だ。「自分じゃ興奮しない……」とかしょんぼりしていたのは過去のものとなり、女性の快楽に染まりつつあった。
「……ぁ……っ! ……ぅ………………ぃっ!? ………………ぅぅっ♪」
何度も嬌声が出そうになるが、唇を噛んで耐える。
こんな恥ずかしい声で寝ている娘たちを起こすわけにはいかない。
もう──我慢できない。
ベッドに浅く腰をかけて足を開くと、まだ触れていない秘所へ手を伸ばす。
「…………ひっ!?」
ショーツ越しだがそっと股間に指を這わせたのだが、触れただけで腰を浮かせるほどの衝撃が背筋を駆け上った。激痛にも似たそれが快感だと気付くのに、しばらくの時間を要する。
「ちょ、ちょっと触っただけで……こうなるのか?」
女性になったばかりのツバサに耐性がないのもあるだろう。
そっと指を戻してみると、粘りのある湿り気が指先を濡らしていた。
人差し指と親指をこすり合わせてみると、透明な粘液がほんの少しだけ糸を引いていた。熱を帯びた頭では理解するのに時間がかかる。
「これが……もしかして……女性の…………」
愛液というやつなのか、という言葉は最後まで出てこなかった。
あの衝撃的な快感を味わおうとして、再び股間の秘所へ手を伸ばし──。
「ツーバサさーん──なぁーにしってるのかなぁー?」
「&%#¥?!#♪:*+@>Z%$=S#X~!!!!?」
ツバサは言語として聞き取れない悲鳴を上げ、ベッドから跳び上がった。
その勢いで床に倒れ込んでしまう。
情けない格好のまま藻掻きつつ、何とか振り返る。
部屋の天井──そこの一角からミロが逆さに生えていた。
ショーツ1枚に“エロラノベ大王”と書かれたバカTシャツ。これもハルカ製なのだが、どうして現実の寝間着と大差ないのだろうか?
「な、な、な……ん、ん、ん……ででで……?」
震える指先でミロを指すが、まだ言語機能は復活していない。
「あーこれ? ツバサさんの部屋とアタシの部屋を繋ぐ秘密の抜け穴」
ジンちゃんに内緒で作らせたのー♪ とミロ。
あの変態マスク野郎! とツバサは心の中で大激怒する。
「そんなことよりツバサさん……エッチなことしてたでしょー?」
ミロは天井の穴から降りてくると、いやらしいジト目でニタニタ笑いながら、床に尻餅をついて動けないツバサを見下ろしている。
見られた──よりにもよってミロに!
羞恥心は限界突破、顔から火を噴きそうなほど恥ずかしい。
真っ赤になりながら冷や汗は止まらず、ツバサの全身を艶やかに濡らして寝間着が肌に張りつき、より一層のエロスを醸し出しているような気がした。
「あ、あう……こ、れこれは……そ、そその……ああの」
まともに喋れず、ツバサは言い訳もできない。
そして──ミロが雌豹の瞳で舌なめずりをする。
「大丈夫、わかってるよ。ツバサさんだって男の子だもんねー♪」
ミロは優しさと意地悪さが入り交じった笑顔で近付いてくると、また腰が抜けて立てないでいるツバサをヒョイッと抱き上げた。
これ、お姫様だっこだ──まさか自分がミロにされるなんて!?
ミロはツバサを抱き上げるとベッドに乗せる。
ベッドに横たわるツバサの上に、ミロが覆い被さってきた。
「オンナノコの快感──アタシが教えてあげよっか?」
「……へ、あ……うぁ……んんっ!?」
ミロは顔を近付けてくると、ツバサの唇に吸いついた。
まるで奪い取られるように唇を吸われ、それどころか口内まで……ミロの舌が入り込んできたかと思えば、隅々まで味わい尽くされた。
「んふ……現実の時と違うね。ツバサさんの唇、ふっくらしてる」
「み、みろ……やめ……て……ひあっ!」
ミロの唇がツバサの口を「まだ足りない!」とばかりに蹂躙しつつ、彼女の両手はツバサの敏感そうなところを好き勝手にいじくり始めた。
既に火照っていたツバサの性感帯は、あっという間に燃え上がる。
「待って、ミロ……これ以上はダメ……あっ……んッ!?」
「いいじゃない。アタシたち、現実でだって誰にはばかれることもなく、こーいうことをしてるじゃない……ウチの親たちも黙認してるし」
そこは事実だから反論できない。
「ちっ、違っ……ここ、現実……じゃ……あっ……だめ……」
これはダメだ! こんなの違う!
俺は男としてミロと愛し合っている! それが普通なんだ!
こんな、女にされて、一方的に遊ばれるなんて……!!
抵抗したいのにできない──身体が快感で痺れている。
「曲がりなりにも16年間美少女をやって来たミロさんにだ、昨日今日オンナノコになったツバサさんが……ベッドの上で敵うと思ってる?」
勝てるわけがない! 経験値が違いすぎる!
「さ、ツバサさん……観念して本当のお母さんになっちゃいなよ♪」
「い、いやだぁぁぁーっ!? やめ…………っ!!」
その時──部屋の扉がノックされた。
「……センセェ……起きてますか、センセェ……センセェ……ッ!」
扉の向こうからマリナのか細い声が聞こえてくる。
ツバサとミロはすぐさま我に返ると、ミロはベッドから飛び降りて部屋に備えつけの椅子に腰をかけると寛いでいるフリをして、ツバサは汗まみれの寝間着を瞬時に着替えると髪を整えて、落ち着いている態を装った。
この間0.5秒──そして、マリナを招き入れる。
「どうした、マリナ……怖い夢でも見たのか?」
扉を開けると、寝間着姿で枕を抱いたマリナが飛び込んできた。
ツバサの胸にしがみつき、泣きながらぐずっている。
「なんだか……怖くなっちゃって……1人で寝てるのが怖くて……」
一緒に寝てもいいですか? とマリナは懇願してくる。
「……いいよ。おいで」
ツバサはマリナを部屋に招き入れる。
内心「天の助けだ!」と安心して大歓迎していた。
「おっ、いいねー♪ じゃあ親子3人、川の字で寝よっか?」
しかし、ミロの一言ですぐに雲散霧消した。
~~~~~~~~~~~~
マリナの寝付きは思った以上に早かった。
『お父さん……大丈夫かなぁ……』
『GMなんだろう? この世界に来ている可能性も高そうだけど、俺たちより全然強いはずだ。それに、この世界についても何か知っているかも知れない』
きっと会えるさ、とツバサは胸に抱いて慰める。
『はい、センセイ……おやすみなさい……』
マリナはツバサの胸に縋りついたまま、安らかに寝息を立てていた。
「……いいか、マリナがいるんだ。変なことするなよ?」
「へいへい、わかってますよーだ」
マリナを抱いて右向きに寝るツバサの背中、左側にはミロが横になっている。
3人で寝るためにキングサイズのベッドまで用意したのだ。
「しかし、小さいお子さんのいるご夫婦ってどうやってるんだろうね?」
「おまえ……この状況でそれを話題にするか?」
ジョーダンよ、とミロは「シシシ!」と妙な笑い方で流した。
「こっちの世界にいる限り、ツバサさんを堕とすチャンスはまだまだいっぱいあるもんねー♪ 今夜はマリナちゃんにお母さんを譲ってあげただけ」
アタシって優しいでしょ? とミロは自画自賛する。
「誰がお母さんだ……おまえも寝ろ!」
へいへい、とミロは寝返りを打ってツバサに寄り添ってくる。
「ツバサさん、おやすみなさーい…………zzz……」
相変わらず、寝ると決めたら一秒フラットで寝るアホ娘だ。狸寝入りではないのは呼吸でわかる。ミロはもう完全に熟睡していた。
ともかく、これで今夜は命拾いした──男としてのプライドがだ。
しかし、またミロに迫られたら拒める自信はない。
女性の身体が催す快感は猛毒のように強烈だ。
男の精神では抗えず、あっという間に堕とされてしまう。
あの甘美すぎる感覚は魅力的だが──恐ろしい。
「今後、対策を練らないと……なんっ!?」
その甘美すぎる快感が胸からぶり返してきた。
見ればしがみついていたマリナが、寝ぼけてツバサの寝間着をはだけさせ、まるで赤ん坊のように右の乳房に吸いついたのだ。
「お母さん……ママ……お母さん……ママ……ママァ……」
マザコンなのは知っていたがここまでとは!?
しかもこれ、寝ぼけてやっているのだから性質が悪い。加減なしで吸いついてくるから、ただでさえ火照っていたツバサの胸はすぐに熱をぶり返す。
またしても漏れそうな嬌声を抑えるだけで精一杯だ。
そこへ──追い打ちが来る。
「う~~~ん……ツバサさぁ~ん、うぇへへへぇ~~~……」
寝ぼけたミロまで背中から抱きついてくると、その手は左の乳房を鷲掴みにして弄ぶ。あろうことか首を伸ばして、マリナのように乳首へ吸い付いてきた。
両足は蟹挟みの容量でツバサの腰に絡ませる。
ミロの両足の踵が──ちょうどツバサの股間に当たっていた。
あろうことか、その両踵は狙い澄ましたかのような動きを繰り返す。
「ちょ……やめ……くっ……あああっ♪」
その気もないのに、彼女たちに責められると甘い声が出た。
2人の娘に弄ばれる左右の乳房は過剰なくらい性的な反応を示し、男だったツバサが感じたことない胸からの快感という未知の領域で翻弄する。
「む、胸……ダメだって! ヤバイ、変になる……ッ!?」
初めて感じるおっぱいの快楽に、ツバサの男性的精神は限界を迎えていた。
やがて──その乳房に異変が生じる。
ミロとマリナに吸いつかれて感じていたツバサの乳房は、まるで風船のように内部から張り詰める感覚が強くなってくると、胸の奥底から出口を求めてあふれ出そうとするものを感じた。
濃厚かつ流動的なそれは、一気にこみ上げてくる。
「ひっ……な、なにか……来る! 出てき…………うっ、ん!?」
ツバサが身を強張らせると、乳房が波打つように痙攣した。
次の瞬間──飛沫を散らす音をさせ、胸から白い流体があふれ出す。
夢見心地でツバサの乳首に吸いつく娘たちは、無意識のままその液体をゴクゴクと美味しそうに喉を鳴らして飲んでいた。
量が多すぎるのか、口元からあふれ出すほどだ。
ミロとマリナが飲んでいる──ツバサの胸からあふれた白い液体。
女性の乳房から分泌されて子供に与えるもの。
思い当たるものはたったひとつしかない。それを自分の豊満な乳房からあふれ出させたことに、ツバサは泣き顔のまま笑うしかなかった。
「ま、まさか俺、本当に……お母さんになっちゃったのか……?」
この時、ツバサは錯乱寸前だったので気付けなかった。
神族である地母神へとランクアップした際に習得した“乳母”という認めたくない技能が、いつの間にか“乳母神”へと進化していたことに──。
母としてミルクを放出し、愛する子供たちに飲まれる。
そのことに母性本能的な充足感を覚えるものの、それよりも目覚めたばかりの女性的快楽にツバサの神経は押し流されていくばかりだ。
子供たちに吸われるおっぱいの気持ちよさもヤバいが──。
「ミロッ、おまっ……本当に、寝てるの……くぁ!?」
蟹挟み状態でツバサの腰をホールドしつつ、踵で狙い澄ましたように股間を絶妙な力加減で刺激してくるミロの足捌きがハンパではなかった。
もうダメだ! こんなの無理──絶対に耐えられない!
娘2人に(色んな意味で)縋りつかれたツバサ。
その夜は結局、(色んな意味で)一睡もできなかった。
~~~~~~~~~~~~
翌朝──ミロは珍しく自力で目覚めることができた。
「んあっ……ここは?」
アルマゲドンから別の世界に飛ばされたこと、ツバサさんがオンナノコになっちゃったこと、ジャジャのこと、昨日のエロは未遂に終わって残念……。
昨日の出来事を思い出しながら、あくびをして身体を起こす。
寝ぼけてベッドから落ち、床で寝ていたらしい。
「んは……マリナちゃん、赤ちゃんみたい」
ベッドではマリナがまだ寝ぼけており、シーツにチュパチュパと吸いついていた。それも幸せそうな笑顔でだ。
「そういえば……なんか甘い香りが……?」
遠い昔、どこかで嗅いだことのあるような懐かしくも優しい香りだ。
だが、起き抜けの頭ではその正体を思い出せない。
「マリナちゃん、起きてー……多分、ツバサさんもうキッチンにいるよー」
「……ふぇ? ふあひぃ、おひゃよーこしゃいましゅ……」
ミロはマリナを起こすと、2階の寝室からキッチンへと降りていた。
「なーんかいい夢見た気がするんだよねー」
「ミロさんもですか? ワタシもとてもいい夢を見た気がします」
おまけに身体の調子も良い。神族だからというわけではない。
よく効く栄養剤でも飲んだような感じがするのだ。
「ま、いっか! ツバサさーん、おはよ…………うぇおわあああっ!?」
「どうしたんですか、ミロさ…………ひきゃああああっ!?」
キッチンに入ったミロとマリナは絶叫を上げる。
台所で料理をしていたのは──ジン・グランドラックだった。
「な、なんで変態マスクマンがここにーっ!?」
「変態退散! 変態退散! 変態たい…………あ、あれ?」
しかし──彼女はジンではない。
それはジンのマスクを被ったツバサさんだった。マスクからは長い黒髪がはみ出しているし、エプロン姿の爆乳なので正しくツバサさんだ。
あのマスクは──ジンからおまけで貰ったもの。
人に合わせる顔がない、という理由で被っているヒーローマスクだ。
「ツバサさん!? なんで変態のマスクなんか被ってるの!?」
「センセイ、そんなの似合わないから取ってください!」
娘たちが大騒ぎするも、ツバサさんは馬耳東風。
ノーリアクションで何も言わずに朝食を用意して、無言で「食べなさい」と指し示した後、キッチンの奥で体育座りでいじけてしまった。
「おっぱいでかすぎてうまくできないのに……なにやってんの?」
ツバサさんはさめざめと泣きながら悲しそうに呟く。
「……俺、もう……お婿にいけない……」
「ダイジョーブ! アタシがお嫁さんで貰ってあげるから!」
ミロは励ましたつもりだが、ツバサさんはもっと落ち込んでしまった。
「……それ……洒落にならん……」
そしてツバサさんは、かつてない大声で泣き出してしまった。
なんかあったんだろうか? ようわからんけど──。
応援ありがとうございます!
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