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第2章
19「変わらない夜」
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女性体よりも体の回復が早いことなどもあり、産後1カ月半ほどで荷車整備職人として工房での仕事復帰を果たした夾。
いくら丈夫な男性オメガだとしても産後の仕事復帰をするのにはやはり早めだということで、実際はどうなることかと気にする面もあるにはあったのだが、しかしその生活は夾が想定していた以上に順調なのだった。
大体の一日の流れはこうだ。
まず朝起きて朝食や身支度などを済ませた夾が璇より一足先に赤子を連れて荷車整備工房へと出かけていく。そして親方の妻と娘に付きっきりで様子を見ていてもらっている間に仕事をし、ぐずったことを知らされれば適宜授乳などの世話をする。そうして日中を工房で過ごして夕方になる頃になると【觜宿の杯】で働いていた璇が料理を持って迎えに来るので、3人で一緒に自宅へと戻る。
自宅に帰ってきてからは持ち帰ってきた料理で夕食をとり、璇が午前中家を出る前に干しておいた洗濯物を畳んだり湯浴みなどをして就寝を迎える…といった具合だ。
この時間の使い方というのがまた彼らにとっては非常に都合が良かったのである。
さらにいかに時間を有効活用して“親”としてのゆったりとした時間を得るかという工夫などについても、慣れてしまえばそれほど大変なものでもなく、むしろ『今日は先にこういう風にしていたから家事が楽になった』という明らかな成果があることによって次の日に生かすための考えが浮かんでくるのでそれをさらに実践しようという風になるのが楽しかったりするのだ。
その他にも親方の妻と娘の協力が生活の大きな助けになっていた。
親方の妻は娘を立派に育て上げた『子育てにおける先輩』ともいえる存在であるにもかかわらず、あれこれと口を出すことなく見守りながらどうするべきかと迷いが生じたときには的確な助言をしてくれるため、夾としてはとても心強かったのである。(その上、実は自宅よりもこの工房の方がかかりつけ医の医院にも近くなるのでむしろ安心感があった)
そうした要素によって仕事復帰をしたからといってとりわけ大きな不安に見舞われることもなく、夾と璇は毎日を過ごすことができていた。
仕事と、家事と、赤子の世話と。
それに明け暮れる生活は忙しいものであるとはいえ、万事順調といえるくらいの平和を保つことができている璇と夾。
赤子が生まれてからの毎日はそんなこんなであっという間に過ぎ、生後3ヵ月半を迎えた彼らの息子の“いなみ”も『赤ちゃん』というよりは『乳幼児』らしくなってきていた。
どちらもこの頃の子供を示す言葉ではあるのだが、なんとなく“赤ちゃん”というよりは“乳幼児”と言う方がしっくりくる体つきなどになってきているのだ。
それほどまでにしっかりと成長した赤子のために、璇と夾はこのところ、かかりつけ医などの助言に従って赤子用の寝台と自分達の寝台の間を分厚い布などで仕切ることで意図的に空間を分離させるようにし始めていた。
というのもずっと同じ空間で過ごすことに慣れてしまうとさらに成長していったときに“一緒にいるのが当たり前”になり、1人で眠るのが難しくなってしまうなどの事象が起こり得るからだそうだ。
とはいえ、まだ完全に子供部屋である2階に1人で寝かせるのは少々心配なので、2人はその折衷案としてこの“布で空間を仕切る”という方法をとることにしているのである。
いずれは2階で1人で眠ることになるだろうが、そのために今から少しずつこうしていくことが良いに違いない。
まだまだ手がかかるのは当然としても、胎内で育てていた時から少しずつそうして成長するに従って我が子が自らの手を離れていくような気がしてならない夾はすでに心の内で少々寂しく思ったりしている。
だがそれも健康に育ってくれていればこそのことなので、やはり喜んでもいるのだった。
さて。
そうして空間が分けられたことで、完全ではないにせよ“夫夫の寝室”というものが久しぶりに2人の元に戻ってきたのである。
元々、互いに触れ合いをよくしていた2人がその寝室で過ごす時間をただの睡眠に費やすはずもないというのは明らかなことなのではないだろうか。
産後にはそうした触れ合いを持つことに抵抗を感じる人があったとしても、それは璇と夾にはまったく関係のないことで、彼らは親密さを深めることに夢中になっていたのだった。
ーーーーー
夜が深まりきっていない陸国。
まだ人々の大半が起きてくつろぎの時間を過ごしているであろうという中、一日のすべてを終えた璇と夾は寝台で寄り添っている。
一日中赤子の生活時間に合わせてうまく立ち回れるようにと動いている2人は、毎日ではないにせよ、おおよそ就寝するには早いだろうという時間にはなるべく家事や翌日のためのことなどを終えて寝台に入ることにしているのだ。
寝支度を終えた夾が寝台にやってくると、璇は彼が定位置で横になれるようにと片側の空間を空ける。
さらさらとした手触りのいい寝具に包まれながら伸びをすると一日の疲れがすべて癒されていくような気がして、夾は微笑んだ。
「今日もお疲れ様、韶」
目一杯に伸びをしていた夾を見つめながら璇が一日の労をねぎらうと 夾も微笑んで答える。
「璇さんだって今日も大変だったのに。洗濯も料理もなにもかも…」
「俺はただ洗濯物を干してから【觜宿の杯】に仕事をしに行ってるだけだから」
「でも帰ってきてからずっとあの子を抱っこしたり沐浴をさせたり、その上洗い物までしてたじゃないですか」
「俺にできるのはそれぐらいだからな」
「もう…またそんなことを…」
こんなにも献身的なのは当たり前ではないだろうと思っているからこそ、夾は璇のしていることが尊くて堪らない。
夾は言葉では表わせない思いを伝えるべく璇へと擦り寄い、耳を彼の胸元へぴったりとくっつけた。
直接響いてくる璇のトクトクという鼓動。
それをうっとりとして聴く夾。
璇も彼の額に口づけるなどしてさらに親密に触れてくる。
2人にとってはこうして互いに身を寄せ合う時間というのは、互いの結びつきを確認し合うための大切なものだ。
さりげなく太ももをすり寄せればすぐにそれと同じような反応が返ってきて、互いに足を絡めることになる。
静寂の中で相手の反応を探りながらじわじわと期待感を高めていくのには駆け引きをしているかのような妙な楽しさがあって、そしてくすぐったい。
そんな風にまだ油灯の明かりを消していない明るい寝台の上でひとしきりベタベタとくっついた後、夾は躊躇いがちに「…あの、璇さん」と口を開いた。
「その…もう少ししたら“いなみ”が産まれてから4ヶ月になるじゃないですか。だから、その……」
「…次のことも、考えてみませんか…?」
ズバリ直接言うのは気がひけるのか、夾は含みを持たせる。
彼がそっと視線を上向けると、璇も同じように彼のことをじっと見つめていた。
生後4ヶ月。それは一般的に出産した男性オメガが産後初めての発情を迎える頃だとされている。
夾は再び発情を迎えることになるだろうということを示唆しているのだ。
つまり“次”というのは“2人目”ということである。
「…韶はいいのか?随分辛い思いをしただろうに」
労わるように背を撫でてくる璇に、夾は「それは…たしかに楽じゃないですけど…」と苦笑いを浮かべた。
「つわりは大変だったし、出産だって大変だったし、今も周りの協力があってこその生活ではあります。でも不思議なことに…またお腹の中に赤ちゃんがいる感覚を味わいたいって、もう1人産みたいって思うものなんです。でも、きっとそうすると璇さんの方が大変になるじゃないですか?俺はまた臥せっているしかできなくなるし、その上 生後4ヶ月の子の世話ももっと頼むことになるし、その他にも色々と…だから……」
「璇さんがどう思うかを、ちゃんと知っておきたくて…」
『たとえ自分の本心を打ち明けたとしても それをきちんと受け入れた上で璇は本当の想いを包み隠さず応えてくれる』
その信頼があるからこそ打ち明けることができた想いだ。
しかし、かねてより家族計画についてきちんと話し合ってきたとはいえども実際に生活をしてからでは見方が変わることもあるだろう。夾は答えを聞くのに緊張してしまう。
「どう…でしょうか……」
すると璇は「…うん、韶がいいなら俺もすごくいいと思う」と頬を緩ませながら応えたのだった。
「ちっちゃいのが2人も横並びでいたらきっとすごく可愛いだろ?韶がいいなら俺も2人目がいたらいいと思うよ、それこそ俺達は前からそういう話をしてたんだし…うん、俺もそうなったらすごくいいと思う」
璇は夾の髪を撫でながらこの穏やかな夜の雰囲気に合う声で話す。
「本当に?賑やかで可愛さも増しますけど、その分大変にもなるんですよ?」と念を押すように確かめると、璇は頷いた。
「それはもちろんそうだ、“子育て”だからな。でも俺はどっちかっていうと前よりも今の方がそういう心配がなくなってるんだ。もっと向きに考えることができてる」
肯定的なその姿を嬉しく思った夾が「去年の冬はあんなに渋ってたのに…まるで別人ですね?」とからかうように言うと、璇は「その話はもういいだろ…あの時はこういう生活がどうなるかを詳しく思い浮かべることができなかったんだよ」と苦笑した。
「あの時は生活がどんな風に変わるのかがよく分からなかったからあんな感じだったけど、でも今はわりとそういう生活にも慣れてきたし…まぁ、もう1人いてもなんとかなるだろ。とにかく俺はもっと俺達の間にちびっちゃいのが来てもいいと思うし、そうなったら嬉しいと思ってるってことだ」
寝具の中で密着している体はじわじわと体温を伝え合って心を満たしてゆく。
夾はちゅっと軽く璇の唇に口づけると、大胆にも彼の上に覆いかぶさるようにしながらさらなる深い口づけをしだした。
唇を触れ合わせたり舌を絡め合ったりしているとたちまち淫らな雰囲気がそこに漂い始める。
あまり夜遅い時間になってからこういうことをしだすと璇に『明日起きられなくなるだろ?』と止められてしまう夾は、今この瞬間は自分のすることすべてがそのまま受け入れられているので嬉しくなっているようだ。
彼らの体の半分は寝具に包まれて隠れているものの、その下では太ももなどが少しの隙間もないほど密着し合っていて、まったく大人しくはしていない。
耳に直接響いてくるような舌に吸い付いたりするその口づけの密やかな音。そしてそれぞれから放たれる【香り】。
夾が口内の柔らかさを堪能するように目を閉じたまま夢中になって口づけていると、璇は夾を抱きしめていた手を肩から背や腰、腹、そして尻の方へと這わせてくまなく愛撫し始める。
ちょうどぴったりと重なった彼らの股座は夾が体を揺すると顕著な反応を示し、窮屈さをもたらしてさらに情欲を焚き付けてゆく。
荒くなり始めている呼吸を整えるかのように夾が璇の肩口に顔を埋めたところで、璇は手探りで夾と自らの下衣の留め紐を解いた。
緩んだ腰の辺りから手を滑り込ませて形の整っている尻の肉を一撫ですると、首筋にかかる吐息も一層熱を帯びたものになる。
夢中になりながらも布で仕切った向こう側にいる赤子のことを思うとこれ以上大胆にするのは気が引けてならない2人は、そうしてできうる限りの愛情表現をした。
距離はさらに近く、まとわりつくような手つきで、声が漏れないようにして。
もどかしさもあるその触れ合いで徐々に情熱を高め合う璇と夾。
璇は夾の尻の肉をかき分け、そしてその奥にある秘部へと指を伸ばした。
「ん…せん、さん……」
身震いをする夾の秘部を外から優しく揉みほぐし、そして中にも迫ってゆく璇の指。
だがそこは触れるまでもなく もうすでにいくらか柔らかく濡れていた。夾は湯浴みをしながらそこの手入れをしてきていたらしい。
内側へ触れられている夾は眉根を寄せながらも璇の上衣の留め紐を解き、露出させた胸部へと熱心に頬擦りをしたり口づけたりしている。
「くすぐったいな…そんなに俺の胸に吸い付いてどうするんだ?」
「…好きなんです、璇さんのこの胸が…綺麗で、あったかくて、すごく…良い香りがするから…」
「そうなのか?」
その体温を唇で感じ取りたいというように胸元へとしきりに顔を埋める夾はなんだかとてもいじらしい感じがして璇は堪らない。
すでに指3本分、それぞれ第一関節が難なく飲み込めるほどの柔らかさにまでなったことを確認した璇はさらにその手で彼の会陰、陰嚢、陰茎の方へと触れてそこを扱いだした。
限られた狭い空間の中で行われるその手淫がいかに気を昂ぶらせるものかはもはや言うまでも無いだろう。
夾はもぞもぞと自らの下衣を蹴って脱ぎ捨てると、勃起している肉棒を璇の腹へと擦るようにしながら挿入を懇願した。
「璇さんっ…もう、シて下さい…我慢できないです、俺の中をいっぱい…」
言葉で伝える以上に体を揺すって強請る夾。
すでに先端から滴り始めている透明な愛液を璇の腹に塗り拡げるかのようなその動きはあまりにも煽情的だ。
覆いかぶさられている璇は自らのいきり勃ったそれを手で支え持つと、きつく抱きしめて動きを止めさせた夾の体内へとそれを挿入した。
夾は「俺…柔らかくなりすぎてる…かも……」と不安げに囁くが、実際はちっともそんなことはなく、挿入ってきたものをキツく咥え込んでいる。
「すごく締まってるけどな……」
璇が興奮を抑えながら囁き返すと、夾の体内はさらに璇のものをギュッと締め付けた。
男性オメガの秘部は女性体の“それ”よりも真正面からでは深く中まで入り込めない角度になっていて、通常であれば腰を少し浮かせた状態にするか、そうでなければ後ろから抱き合うようにしなければならない。
だが今の彼らはそのどちらもできないという体位だ。
そのため挿入できたとしても先端の方だけで、夾が求めるような奥の部分での快感は得ることができない。
璇によってごく浅い場所を繰り返し擦られるばかりの夾はじれったくて身悶える。
だが、それでも彼はやがて前のほうだけでの絶頂を迎えたのだった。
《は、ぁっ…せんさん…っ……イク…イッちゃう……》
璇が支え持って導いていたおかげで夾のその白濁はすべて一滴残らず璇の腹部の上へと散らばる。
絶頂を迎えたことで、夾はぐったりと璇の胸の上に倒れ伏した。
だが、男性オメガである彼がそれだけで満足するなどということはありえなかった。
璇が枕元にある薄紙の束から数枚とって腹の上を拭っている間も夾は“本当の結合”を求めて中にある璇のものをキツく締め上げるかのように再びぎゅうぎゅうと収縮している。
より深く繋がることで得られる快感を味わうためには、このままの体位ではいささか都合が悪いだろう。
《韶…》
璇は囁きながら夾に体の向きを替えるよう促し、横になったまま後ろを向かせる格好にさせた。
それによってちょうど挿入に適した角度になった秘部。
上になっている右足を軽くまげて前の方に出し、尻の肉を左右に押し広げれば秘部はもう晒されたも同然だ。
璇はその中心めがけて肉棒の切っ先を突き立てると、そのまま腰を動かしてほとんど一息に根元に至るまでのすべてを夾の体内へと納めていった。
《……っ!!》
声を出すまいとして両手でしっかりと口を覆う夾を抱きしめながら、璇は体の奥深くにあるという男性オメガだけが持つその特別な器官めがけてごつごつと硬い先端を打ち付ける。
2人は胸元まで掛け具で覆ったまま繋がっているので外に洩れ出ている音も寝具が擦れたりわずかに寝台が軋むくらいのものしかないが、もしおおっぴろげになっていれば恐ろしく卑猥な激しい水音と肌のぶつかる音が寝室中に響いているに違いない。
できうる限りの勢いで璇に内側を突かれる夾は、すがりつくようにして寝具を手当たり次第に掴み、呻いた。
《うぅっ、きもちい…きもちいぃっ……うっ…くぅっ……!!》
璇はさらに大胆になって、夾の右の膝裏を抱えながらより一層猛々しく攻める。
苦しげにも聞こえる荒い吐息にはやがて抑え切れない「あっ…は、ぁっ……!という声が混じり始めた。立ち込める【香り】も更に濃厚になっている。
いよいよ強い射精感を堪えきれなくなった璇はさらにもう何度か素早く強く夾の中を突くと、一気にそれを抜き出して夾の腰の辺りへと白濁を放った。
太く濃い一筋の後に断続的に放たれる精液。
その最後の一滴までもがすべて放出されてから、璇は再び夾の中へと自らを挿入し、びくびくと収縮しながら快感の波に打ち震えている彼と共に余韻に浸る。
夫夫として子が産まれてもなお、彼らの夜は情熱を一切失っていなかった。
ーーーーー
ひとしきり快感を味わい終えてようやく穏やかさを取り戻した寝台。
その上で、精液や愛液などを拭っただけの璇と夾はうつらうつらとしながら抱きしめ合っている。
こうして互いの温もりを感じるには少々暑くなり始めている季節だが、そんなことはお構いなしだと言わんばかりに2人は離れない。
激しく動いて射精した後にもたらされる眠気に苛まれながらも ちらりと時計に目を遣った璇は、ようやく口を開いて「はぁ…もっと眠くなってくる前にさっさと湯を浴びてこないとな」と夾に湯浴みを促す。
薄紙で拭っただけでは眠るのに気分がよくないだろうというための湯浴みだ。(璇がいくら夾に中での射精を促されたとしても応じようとしないのは、こうした事後の負担などを少しでも軽減させようとしているためである)
しかし夾は気だるげに額を璇に擦りつけるだけで動こうとはせず、その上「もう少しだけ、このままで…」と囁いてくる。
璇は同じ思いを抱きながらも「だめだって、このままじゃ」と深く息を吐いた。
「もし今あの子がぐずったらどうするんだ?こんな状態じゃ諸々良くないだろ」
「うぅ…」
「ほら、体を綺麗にしてきてから寝よう」
時間的にはまだそこまで夜が深いわけではないものの、彼らにとってはもう明日に備えて休まなければならないくらいの刻限だ。
薄目を開けて時間を確認した夾はのそりと肘をついて起き上がると、璇の頬に口づける。
『もっとずっとこのままでいたい』
そんな意思を伝えてくるその唇に、璇も同じく口づけで応えたのだった。
いくら丈夫な男性オメガだとしても産後の仕事復帰をするのにはやはり早めだということで、実際はどうなることかと気にする面もあるにはあったのだが、しかしその生活は夾が想定していた以上に順調なのだった。
大体の一日の流れはこうだ。
まず朝起きて朝食や身支度などを済ませた夾が璇より一足先に赤子を連れて荷車整備工房へと出かけていく。そして親方の妻と娘に付きっきりで様子を見ていてもらっている間に仕事をし、ぐずったことを知らされれば適宜授乳などの世話をする。そうして日中を工房で過ごして夕方になる頃になると【觜宿の杯】で働いていた璇が料理を持って迎えに来るので、3人で一緒に自宅へと戻る。
自宅に帰ってきてからは持ち帰ってきた料理で夕食をとり、璇が午前中家を出る前に干しておいた洗濯物を畳んだり湯浴みなどをして就寝を迎える…といった具合だ。
この時間の使い方というのがまた彼らにとっては非常に都合が良かったのである。
さらにいかに時間を有効活用して“親”としてのゆったりとした時間を得るかという工夫などについても、慣れてしまえばそれほど大変なものでもなく、むしろ『今日は先にこういう風にしていたから家事が楽になった』という明らかな成果があることによって次の日に生かすための考えが浮かんでくるのでそれをさらに実践しようという風になるのが楽しかったりするのだ。
その他にも親方の妻と娘の協力が生活の大きな助けになっていた。
親方の妻は娘を立派に育て上げた『子育てにおける先輩』ともいえる存在であるにもかかわらず、あれこれと口を出すことなく見守りながらどうするべきかと迷いが生じたときには的確な助言をしてくれるため、夾としてはとても心強かったのである。(その上、実は自宅よりもこの工房の方がかかりつけ医の医院にも近くなるのでむしろ安心感があった)
そうした要素によって仕事復帰をしたからといってとりわけ大きな不安に見舞われることもなく、夾と璇は毎日を過ごすことができていた。
仕事と、家事と、赤子の世話と。
それに明け暮れる生活は忙しいものであるとはいえ、万事順調といえるくらいの平和を保つことができている璇と夾。
赤子が生まれてからの毎日はそんなこんなであっという間に過ぎ、生後3ヵ月半を迎えた彼らの息子の“いなみ”も『赤ちゃん』というよりは『乳幼児』らしくなってきていた。
どちらもこの頃の子供を示す言葉ではあるのだが、なんとなく“赤ちゃん”というよりは“乳幼児”と言う方がしっくりくる体つきなどになってきているのだ。
それほどまでにしっかりと成長した赤子のために、璇と夾はこのところ、かかりつけ医などの助言に従って赤子用の寝台と自分達の寝台の間を分厚い布などで仕切ることで意図的に空間を分離させるようにし始めていた。
というのもずっと同じ空間で過ごすことに慣れてしまうとさらに成長していったときに“一緒にいるのが当たり前”になり、1人で眠るのが難しくなってしまうなどの事象が起こり得るからだそうだ。
とはいえ、まだ完全に子供部屋である2階に1人で寝かせるのは少々心配なので、2人はその折衷案としてこの“布で空間を仕切る”という方法をとることにしているのである。
いずれは2階で1人で眠ることになるだろうが、そのために今から少しずつこうしていくことが良いに違いない。
まだまだ手がかかるのは当然としても、胎内で育てていた時から少しずつそうして成長するに従って我が子が自らの手を離れていくような気がしてならない夾はすでに心の内で少々寂しく思ったりしている。
だがそれも健康に育ってくれていればこそのことなので、やはり喜んでもいるのだった。
さて。
そうして空間が分けられたことで、完全ではないにせよ“夫夫の寝室”というものが久しぶりに2人の元に戻ってきたのである。
元々、互いに触れ合いをよくしていた2人がその寝室で過ごす時間をただの睡眠に費やすはずもないというのは明らかなことなのではないだろうか。
産後にはそうした触れ合いを持つことに抵抗を感じる人があったとしても、それは璇と夾にはまったく関係のないことで、彼らは親密さを深めることに夢中になっていたのだった。
ーーーーー
夜が深まりきっていない陸国。
まだ人々の大半が起きてくつろぎの時間を過ごしているであろうという中、一日のすべてを終えた璇と夾は寝台で寄り添っている。
一日中赤子の生活時間に合わせてうまく立ち回れるようにと動いている2人は、毎日ではないにせよ、おおよそ就寝するには早いだろうという時間にはなるべく家事や翌日のためのことなどを終えて寝台に入ることにしているのだ。
寝支度を終えた夾が寝台にやってくると、璇は彼が定位置で横になれるようにと片側の空間を空ける。
さらさらとした手触りのいい寝具に包まれながら伸びをすると一日の疲れがすべて癒されていくような気がして、夾は微笑んだ。
「今日もお疲れ様、韶」
目一杯に伸びをしていた夾を見つめながら璇が一日の労をねぎらうと 夾も微笑んで答える。
「璇さんだって今日も大変だったのに。洗濯も料理もなにもかも…」
「俺はただ洗濯物を干してから【觜宿の杯】に仕事をしに行ってるだけだから」
「でも帰ってきてからずっとあの子を抱っこしたり沐浴をさせたり、その上洗い物までしてたじゃないですか」
「俺にできるのはそれぐらいだからな」
「もう…またそんなことを…」
こんなにも献身的なのは当たり前ではないだろうと思っているからこそ、夾は璇のしていることが尊くて堪らない。
夾は言葉では表わせない思いを伝えるべく璇へと擦り寄い、耳を彼の胸元へぴったりとくっつけた。
直接響いてくる璇のトクトクという鼓動。
それをうっとりとして聴く夾。
璇も彼の額に口づけるなどしてさらに親密に触れてくる。
2人にとってはこうして互いに身を寄せ合う時間というのは、互いの結びつきを確認し合うための大切なものだ。
さりげなく太ももをすり寄せればすぐにそれと同じような反応が返ってきて、互いに足を絡めることになる。
静寂の中で相手の反応を探りながらじわじわと期待感を高めていくのには駆け引きをしているかのような妙な楽しさがあって、そしてくすぐったい。
そんな風にまだ油灯の明かりを消していない明るい寝台の上でひとしきりベタベタとくっついた後、夾は躊躇いがちに「…あの、璇さん」と口を開いた。
「その…もう少ししたら“いなみ”が産まれてから4ヶ月になるじゃないですか。だから、その……」
「…次のことも、考えてみませんか…?」
ズバリ直接言うのは気がひけるのか、夾は含みを持たせる。
彼がそっと視線を上向けると、璇も同じように彼のことをじっと見つめていた。
生後4ヶ月。それは一般的に出産した男性オメガが産後初めての発情を迎える頃だとされている。
夾は再び発情を迎えることになるだろうということを示唆しているのだ。
つまり“次”というのは“2人目”ということである。
「…韶はいいのか?随分辛い思いをしただろうに」
労わるように背を撫でてくる璇に、夾は「それは…たしかに楽じゃないですけど…」と苦笑いを浮かべた。
「つわりは大変だったし、出産だって大変だったし、今も周りの協力があってこその生活ではあります。でも不思議なことに…またお腹の中に赤ちゃんがいる感覚を味わいたいって、もう1人産みたいって思うものなんです。でも、きっとそうすると璇さんの方が大変になるじゃないですか?俺はまた臥せっているしかできなくなるし、その上 生後4ヶ月の子の世話ももっと頼むことになるし、その他にも色々と…だから……」
「璇さんがどう思うかを、ちゃんと知っておきたくて…」
『たとえ自分の本心を打ち明けたとしても それをきちんと受け入れた上で璇は本当の想いを包み隠さず応えてくれる』
その信頼があるからこそ打ち明けることができた想いだ。
しかし、かねてより家族計画についてきちんと話し合ってきたとはいえども実際に生活をしてからでは見方が変わることもあるだろう。夾は答えを聞くのに緊張してしまう。
「どう…でしょうか……」
すると璇は「…うん、韶がいいなら俺もすごくいいと思う」と頬を緩ませながら応えたのだった。
「ちっちゃいのが2人も横並びでいたらきっとすごく可愛いだろ?韶がいいなら俺も2人目がいたらいいと思うよ、それこそ俺達は前からそういう話をしてたんだし…うん、俺もそうなったらすごくいいと思う」
璇は夾の髪を撫でながらこの穏やかな夜の雰囲気に合う声で話す。
「本当に?賑やかで可愛さも増しますけど、その分大変にもなるんですよ?」と念を押すように確かめると、璇は頷いた。
「それはもちろんそうだ、“子育て”だからな。でも俺はどっちかっていうと前よりも今の方がそういう心配がなくなってるんだ。もっと向きに考えることができてる」
肯定的なその姿を嬉しく思った夾が「去年の冬はあんなに渋ってたのに…まるで別人ですね?」とからかうように言うと、璇は「その話はもういいだろ…あの時はこういう生活がどうなるかを詳しく思い浮かべることができなかったんだよ」と苦笑した。
「あの時は生活がどんな風に変わるのかがよく分からなかったからあんな感じだったけど、でも今はわりとそういう生活にも慣れてきたし…まぁ、もう1人いてもなんとかなるだろ。とにかく俺はもっと俺達の間にちびっちゃいのが来てもいいと思うし、そうなったら嬉しいと思ってるってことだ」
寝具の中で密着している体はじわじわと体温を伝え合って心を満たしてゆく。
夾はちゅっと軽く璇の唇に口づけると、大胆にも彼の上に覆いかぶさるようにしながらさらなる深い口づけをしだした。
唇を触れ合わせたり舌を絡め合ったりしているとたちまち淫らな雰囲気がそこに漂い始める。
あまり夜遅い時間になってからこういうことをしだすと璇に『明日起きられなくなるだろ?』と止められてしまう夾は、今この瞬間は自分のすることすべてがそのまま受け入れられているので嬉しくなっているようだ。
彼らの体の半分は寝具に包まれて隠れているものの、その下では太ももなどが少しの隙間もないほど密着し合っていて、まったく大人しくはしていない。
耳に直接響いてくるような舌に吸い付いたりするその口づけの密やかな音。そしてそれぞれから放たれる【香り】。
夾が口内の柔らかさを堪能するように目を閉じたまま夢中になって口づけていると、璇は夾を抱きしめていた手を肩から背や腰、腹、そして尻の方へと這わせてくまなく愛撫し始める。
ちょうどぴったりと重なった彼らの股座は夾が体を揺すると顕著な反応を示し、窮屈さをもたらしてさらに情欲を焚き付けてゆく。
荒くなり始めている呼吸を整えるかのように夾が璇の肩口に顔を埋めたところで、璇は手探りで夾と自らの下衣の留め紐を解いた。
緩んだ腰の辺りから手を滑り込ませて形の整っている尻の肉を一撫ですると、首筋にかかる吐息も一層熱を帯びたものになる。
夢中になりながらも布で仕切った向こう側にいる赤子のことを思うとこれ以上大胆にするのは気が引けてならない2人は、そうしてできうる限りの愛情表現をした。
距離はさらに近く、まとわりつくような手つきで、声が漏れないようにして。
もどかしさもあるその触れ合いで徐々に情熱を高め合う璇と夾。
璇は夾の尻の肉をかき分け、そしてその奥にある秘部へと指を伸ばした。
「ん…せん、さん……」
身震いをする夾の秘部を外から優しく揉みほぐし、そして中にも迫ってゆく璇の指。
だがそこは触れるまでもなく もうすでにいくらか柔らかく濡れていた。夾は湯浴みをしながらそこの手入れをしてきていたらしい。
内側へ触れられている夾は眉根を寄せながらも璇の上衣の留め紐を解き、露出させた胸部へと熱心に頬擦りをしたり口づけたりしている。
「くすぐったいな…そんなに俺の胸に吸い付いてどうするんだ?」
「…好きなんです、璇さんのこの胸が…綺麗で、あったかくて、すごく…良い香りがするから…」
「そうなのか?」
その体温を唇で感じ取りたいというように胸元へとしきりに顔を埋める夾はなんだかとてもいじらしい感じがして璇は堪らない。
すでに指3本分、それぞれ第一関節が難なく飲み込めるほどの柔らかさにまでなったことを確認した璇はさらにその手で彼の会陰、陰嚢、陰茎の方へと触れてそこを扱いだした。
限られた狭い空間の中で行われるその手淫がいかに気を昂ぶらせるものかはもはや言うまでも無いだろう。
夾はもぞもぞと自らの下衣を蹴って脱ぎ捨てると、勃起している肉棒を璇の腹へと擦るようにしながら挿入を懇願した。
「璇さんっ…もう、シて下さい…我慢できないです、俺の中をいっぱい…」
言葉で伝える以上に体を揺すって強請る夾。
すでに先端から滴り始めている透明な愛液を璇の腹に塗り拡げるかのようなその動きはあまりにも煽情的だ。
覆いかぶさられている璇は自らのいきり勃ったそれを手で支え持つと、きつく抱きしめて動きを止めさせた夾の体内へとそれを挿入した。
夾は「俺…柔らかくなりすぎてる…かも……」と不安げに囁くが、実際はちっともそんなことはなく、挿入ってきたものをキツく咥え込んでいる。
「すごく締まってるけどな……」
璇が興奮を抑えながら囁き返すと、夾の体内はさらに璇のものをギュッと締め付けた。
男性オメガの秘部は女性体の“それ”よりも真正面からでは深く中まで入り込めない角度になっていて、通常であれば腰を少し浮かせた状態にするか、そうでなければ後ろから抱き合うようにしなければならない。
だが今の彼らはそのどちらもできないという体位だ。
そのため挿入できたとしても先端の方だけで、夾が求めるような奥の部分での快感は得ることができない。
璇によってごく浅い場所を繰り返し擦られるばかりの夾はじれったくて身悶える。
だが、それでも彼はやがて前のほうだけでの絶頂を迎えたのだった。
《は、ぁっ…せんさん…っ……イク…イッちゃう……》
璇が支え持って導いていたおかげで夾のその白濁はすべて一滴残らず璇の腹部の上へと散らばる。
絶頂を迎えたことで、夾はぐったりと璇の胸の上に倒れ伏した。
だが、男性オメガである彼がそれだけで満足するなどということはありえなかった。
璇が枕元にある薄紙の束から数枚とって腹の上を拭っている間も夾は“本当の結合”を求めて中にある璇のものをキツく締め上げるかのように再びぎゅうぎゅうと収縮している。
より深く繋がることで得られる快感を味わうためには、このままの体位ではいささか都合が悪いだろう。
《韶…》
璇は囁きながら夾に体の向きを替えるよう促し、横になったまま後ろを向かせる格好にさせた。
それによってちょうど挿入に適した角度になった秘部。
上になっている右足を軽くまげて前の方に出し、尻の肉を左右に押し広げれば秘部はもう晒されたも同然だ。
璇はその中心めがけて肉棒の切っ先を突き立てると、そのまま腰を動かしてほとんど一息に根元に至るまでのすべてを夾の体内へと納めていった。
《……っ!!》
声を出すまいとして両手でしっかりと口を覆う夾を抱きしめながら、璇は体の奥深くにあるという男性オメガだけが持つその特別な器官めがけてごつごつと硬い先端を打ち付ける。
2人は胸元まで掛け具で覆ったまま繋がっているので外に洩れ出ている音も寝具が擦れたりわずかに寝台が軋むくらいのものしかないが、もしおおっぴろげになっていれば恐ろしく卑猥な激しい水音と肌のぶつかる音が寝室中に響いているに違いない。
できうる限りの勢いで璇に内側を突かれる夾は、すがりつくようにして寝具を手当たり次第に掴み、呻いた。
《うぅっ、きもちい…きもちいぃっ……うっ…くぅっ……!!》
璇はさらに大胆になって、夾の右の膝裏を抱えながらより一層猛々しく攻める。
苦しげにも聞こえる荒い吐息にはやがて抑え切れない「あっ…は、ぁっ……!という声が混じり始めた。立ち込める【香り】も更に濃厚になっている。
いよいよ強い射精感を堪えきれなくなった璇はさらにもう何度か素早く強く夾の中を突くと、一気にそれを抜き出して夾の腰の辺りへと白濁を放った。
太く濃い一筋の後に断続的に放たれる精液。
その最後の一滴までもがすべて放出されてから、璇は再び夾の中へと自らを挿入し、びくびくと収縮しながら快感の波に打ち震えている彼と共に余韻に浸る。
夫夫として子が産まれてもなお、彼らの夜は情熱を一切失っていなかった。
ーーーーー
ひとしきり快感を味わい終えてようやく穏やかさを取り戻した寝台。
その上で、精液や愛液などを拭っただけの璇と夾はうつらうつらとしながら抱きしめ合っている。
こうして互いの温もりを感じるには少々暑くなり始めている季節だが、そんなことはお構いなしだと言わんばかりに2人は離れない。
激しく動いて射精した後にもたらされる眠気に苛まれながらも ちらりと時計に目を遣った璇は、ようやく口を開いて「はぁ…もっと眠くなってくる前にさっさと湯を浴びてこないとな」と夾に湯浴みを促す。
薄紙で拭っただけでは眠るのに気分がよくないだろうというための湯浴みだ。(璇がいくら夾に中での射精を促されたとしても応じようとしないのは、こうした事後の負担などを少しでも軽減させようとしているためである)
しかし夾は気だるげに額を璇に擦りつけるだけで動こうとはせず、その上「もう少しだけ、このままで…」と囁いてくる。
璇は同じ思いを抱きながらも「だめだって、このままじゃ」と深く息を吐いた。
「もし今あの子がぐずったらどうするんだ?こんな状態じゃ諸々良くないだろ」
「うぅ…」
「ほら、体を綺麗にしてきてから寝よう」
時間的にはまだそこまで夜が深いわけではないものの、彼らにとってはもう明日に備えて休まなければならないくらいの刻限だ。
薄目を開けて時間を確認した夾はのそりと肘をついて起き上がると、璇の頬に口づける。
『もっとずっとこのままでいたい』
そんな意思を伝えてくるその唇に、璇も同じく口づけで応えたのだった。
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