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第二章 凰雅side 10

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....痛ってぇ...

...あのくそ親父思いっきり殴りやがった。

本気でやり合ったら空手をやっている俺が勝つ。
でも もっと殴ってくれてもよかったんだ...
もっと痛め付けてくれて。そうしたら胸の痛みも紛れるだろうに。


夏休み前からここ最近まで結にメールを送っていた。
全く返って来ない返事。

本当に結はいなくなった。
....これからずっとか?

恐ろしさに吐き気がする。
胸が苦しくて息が浅くなる。

結....

結を思い浮かべてつぶやいた。心が痛い。

馴染みのない 目頭が熱くなってから頬を伝う冷たさに驚く。



体中の力が入らず 気がつけば涙が溢れていた。


そんな俺を自分自身が嫌に冷静に見ている。
最後に泣いたのはいつだった?

ガキの頃から冷めた性格で泣かなかったから覚えている限り泣いた覚えはない。
母親なら覚えてるか...。

どうでもいいことを考えながら涙がまだ止まらない。

胸が苦しくて手で胸を押さえてみるけど苦しさも変わらなかった。


....分かっていた。
結を失う事ほど恐ろしい事はない。
どうしていない...?
こんなにも愛してるのに。こんなにも必要なのに...。
涙が止めどなく後から後から溢れ出る。
嗚咽しながら行き場のないやるせない気持ちを壁にぶつける。
二度ぶつけ壁に大きな音をたてながら穴が二つ出来た。

まぬけ だ 俺は。
何をしてるんだ。何の為に頑張ってきた?
結居ればこそ...結の為に。
...俺が結に一番何でもしてやる為に。


愛してる 結

伝えさせて欲しい...



結が居なくても息はしている。
でもこれは息をしているだけ。

生きる屍しかばねだ。

脱け殻の状態でも嫌でも結との糸口を まだ模索する。


一度アメリカまで会いに行こう。
そうだ このまま終わる訳にはいかない。
ここで失う訳にはいかない。
また始めたらいい。

俺も結の近くに住んでまた口説こう。
今度は間違えない。
独りよがりじゃなくて結と一緒に何でも築いていけばいいい。
時間をかけたらいい。それもまた素晴らしいと思う。
結がいるなら。


でも

朝目覚めると恐ろしく...虚しい。
結の居ない現実がのし掛かる。

結に会いに行く。結の傍に居る。
...その方法でいいのか。
今度こそ間違えない。今度こそ...
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