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そのご

そのご-3

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バタン。と。

ドアが開いた音がした。

尊、帰って来たんかな。

ベッドで、転がってたらいつのまにか眠ってた。

まだ酒残ってるな。

足音が部屋に近付いて来る。

寝室のドアが開いて。

尊、帰って来た。

「……みのりさん」

身体揺すられた。

「……ん…」

もう、朝かな。

「起きて。みのりさん」

「…ん…今何時…?」

「4時半」

ん?早くない?

店終わって、すぐ帰って来たんかな。

「起きて。俺、時間無いから」


ん?どゆこと?

「アフター抜けて来たから、戻らないといけないから」

「んー…」

抜けてきた、てなんでまた。

重たい頭を持ち上げ上半身を起こした。

「……みのりさん」

ベッドの傍に立ち、腕組みして。

あたし見下ろす尊。

「ひゃあっ!」

尊があたしの腕乱暴に掴んで。

ベッドから引き摺りおろした。

なに。

いったい、なにされてるんだあたし。

混乱して、その場に座り込んで尊を見上げる。

尊はゆっくりしゃがんで。

あたしの眼の高さに顔合わせる。

その顔は、怒ってるような。

哀しいような。

いつもの優しい顔じゃない。

「みのりさん。着てるもの、全部脱いで」

冷たい声で、言った。 

い。

「いや…だ」

よくわからない、得体の知れないもの。

あたしの目の前にはいつもの優しい顔じゃない尊。

それは、とても怖くて。

怖いもの、の記憶集めたみたいな。

「みのりさん」

尊の手が、頬に近付いて。

身体が、ビクン、と跳ねた。

尊は指先だけほっぺたに触れた。

「みのりさん。どうして…」

尊の声はいつもよりも低くて、あたしの好きな声じゃなくて。

自分の服の胸の辺り。

両手でぎゅっと握り締めて、ふるふると、頭を横に振る。

下瞼の際に、涙が溜まってくる。

「そんなに、俺の言う事、聞けないの?」

嫌だ。

怖い。

怖いよ、尊。

「みのりさん」

尊はあたしの名前を呼んで、微笑んだ。

でも、それは。

とても。

冷たい微笑みだった。

「これ以上、俺を怒らせないで?」

ぽろぽろと、溜まった涙が零れる。

唇が痺れて、震える。

「みのりさん」

身体が動かない。

尊が、あたしの服を掴んだ。

抵抗すら出来ないでいるあたしから。

身に付けてるもの、全部脱がした。 
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