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そのきゅう
そのきゅう-2
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「みのりーっ!」
おかんが階段の下で叫ぶ。
「なにーっ!」
部屋でベッドに転がりながら、返事する。
「マヨネーズ買ってきてーっ!」
「仕事中っ!無理ーっ!」
「してないやん」
ドアを開けて、おかんが言った。
く、くそ。
階段昇ってくる音、聞こえんかったぞ。
オノレは忍びの者かっ!?
「どうせ仕事してないんやったら、買い物くらい行ってき!」
パシらされた。
帰ってきてダウンを脱ごうとした時、ある事を思い出した。
ポケットに手を突っ込む。
手に当たる感触。
あの日、ポケットに入れてそのままにしてた。
取り出すと。
薄紫の、和紙。
藍河 リカ。
別に。
尊の過去を詮索したいワケじゃ、ない。
あんな顔して眠る尊が、かわいそうで。
なんなのかわかれば、尊の気持ちを。
少しは楽にしてあげられるのかな。
そう、思っただけで。
名刺にある番号に、電話した。
『もっと早くかけてくると思ってたのに』
リカは、笑いながら言った。
『あたしとアイツの関係、教えてあげるわ。あたしん家に来なさいよ』
リカは、繁華街に近い住所を言った。
仕事が終わってから。
と、夜中の2時に来る様に、と言った。
なんで上からな態度なん。
ちょっと、ムカついた。
でも、約束の時間にリカを訪ねた。
ただ、黙ってると尊に怒られるから。
リカん家に行ってくる
と、部屋に入る前、尊にメールした。
「まあ、座ったら?」
ピンク色のソファーに座った。
リカは向かい側のベッドに、腰を下ろす。
一つ、気になるのは。
リカの隣にいる、男。
リカの彼氏で、一緒住んでる、と言った。
「あたし、あんたの事、可哀想だと思ってんのよ?」
リカは、タバコに火をつけながら言った。
「なんでよ?」
少し、挑戦的な態度をとってみた。
「だって、アイツが今まで何してきたかも知らないで付き合ってんでしょ?」
「…別に。過去とか気にしてないし」
「あら。ホントに何も知らないんだ?早く別れた方がいいわよ」
なんでオマエにそんな事言われないかんのよ!?
リカを睨み付けた。
あたしの視線なんて、気にも止めずに煙を吐く。
「だって…」
あたしに顔近づけた。
「アイツ。人、殺してんのよ」
真剣な眼であたしを、見た。
なに、言ってるん、コイツ。
バカやないの。
「信じらんない?」
「一体、なんのハナシよ」
人なんか殺すワケ、ないやん。
てか、んな事したら、普通に生活出来てないやん。
アホくさ。
「帰る。ハナシにならんから」
立ち上がろうとした。
「待てって」
男が、あたしに近づく。
「うるさいな。付き合っとられんし」
バッグを持って、腰を上げようと。
動いた。
「なにすんのよっ!!」
男があたしに乗しかかる。
「離してよっ!!」
両手をソファーに押し付けられた。
「人の話は最後まで聞きなさいよ」
「なにっ!離せってば!!」
「あんた、普通のコでしょ。水商売なんかした事無い」
「だからなによっ!?」
「水商売なんて、裏側は汚い世界よ。あたしもそうだけど」
タバコを灰皿になげる。
「離せっ!!」
男の手はびくともしない。
「あたしら、恋愛ごっこして客から金巻き上げるけど」
リカが、テーブルの下からなにかを出す。
ごそごそと、手を動かす。
「ホストなんて、その上前ハネてんのよ。汚いわよね」
バッグの中から、wild worldが聞こえる。
男の手から逃れ様ともがく。
電話に。
出なきゃ。尊だ、絶対。
仕事中やのに。
やっぱ、また、怒られるな。
押さえつける力は強くなる。
「アイツはね、あたしのお姉ちゃんを殺したの」
お姉ちゃん。あんたの!?
「お姉ちゃんも水商売してたけど」
リカが、あたしに近付く。
「アイツのために、店通って。お金無くなってもまだアイツに会いたくて、いっぱいお金借りちゃって」
リカの手に、注射器。
背中に汗が流れる。
「どうしようも無くなって。薬、いっぱい飲んで死んじゃった。可哀想なお姉ちゃん」
リカが哀しそうに言った。
尊が、悪いの!?
尊の、せいなん!?
「ちっ違うやんっ!そんなの尊のっ」
「アイツのせいよ!!全部アイツが悪いのよっ!!」
男に押さえられた、手。
リカが、あたしの手に針を近付ける。
「なにすんのよっ!!止めてっ!!」
wild worldが鳴り続ける。
Oh baby baby it's wild world
どうしても行くなら気を付けて。
外は危険がいっぱいだから。
おかんが階段の下で叫ぶ。
「なにーっ!」
部屋でベッドに転がりながら、返事する。
「マヨネーズ買ってきてーっ!」
「仕事中っ!無理ーっ!」
「してないやん」
ドアを開けて、おかんが言った。
く、くそ。
階段昇ってくる音、聞こえんかったぞ。
オノレは忍びの者かっ!?
「どうせ仕事してないんやったら、買い物くらい行ってき!」
パシらされた。
帰ってきてダウンを脱ごうとした時、ある事を思い出した。
ポケットに手を突っ込む。
手に当たる感触。
あの日、ポケットに入れてそのままにしてた。
取り出すと。
薄紫の、和紙。
藍河 リカ。
別に。
尊の過去を詮索したいワケじゃ、ない。
あんな顔して眠る尊が、かわいそうで。
なんなのかわかれば、尊の気持ちを。
少しは楽にしてあげられるのかな。
そう、思っただけで。
名刺にある番号に、電話した。
『もっと早くかけてくると思ってたのに』
リカは、笑いながら言った。
『あたしとアイツの関係、教えてあげるわ。あたしん家に来なさいよ』
リカは、繁華街に近い住所を言った。
仕事が終わってから。
と、夜中の2時に来る様に、と言った。
なんで上からな態度なん。
ちょっと、ムカついた。
でも、約束の時間にリカを訪ねた。
ただ、黙ってると尊に怒られるから。
リカん家に行ってくる
と、部屋に入る前、尊にメールした。
「まあ、座ったら?」
ピンク色のソファーに座った。
リカは向かい側のベッドに、腰を下ろす。
一つ、気になるのは。
リカの隣にいる、男。
リカの彼氏で、一緒住んでる、と言った。
「あたし、あんたの事、可哀想だと思ってんのよ?」
リカは、タバコに火をつけながら言った。
「なんでよ?」
少し、挑戦的な態度をとってみた。
「だって、アイツが今まで何してきたかも知らないで付き合ってんでしょ?」
「…別に。過去とか気にしてないし」
「あら。ホントに何も知らないんだ?早く別れた方がいいわよ」
なんでオマエにそんな事言われないかんのよ!?
リカを睨み付けた。
あたしの視線なんて、気にも止めずに煙を吐く。
「だって…」
あたしに顔近づけた。
「アイツ。人、殺してんのよ」
真剣な眼であたしを、見た。
なに、言ってるん、コイツ。
バカやないの。
「信じらんない?」
「一体、なんのハナシよ」
人なんか殺すワケ、ないやん。
てか、んな事したら、普通に生活出来てないやん。
アホくさ。
「帰る。ハナシにならんから」
立ち上がろうとした。
「待てって」
男が、あたしに近づく。
「うるさいな。付き合っとられんし」
バッグを持って、腰を上げようと。
動いた。
「なにすんのよっ!!」
男があたしに乗しかかる。
「離してよっ!!」
両手をソファーに押し付けられた。
「人の話は最後まで聞きなさいよ」
「なにっ!離せってば!!」
「あんた、普通のコでしょ。水商売なんかした事無い」
「だからなによっ!?」
「水商売なんて、裏側は汚い世界よ。あたしもそうだけど」
タバコを灰皿になげる。
「離せっ!!」
男の手はびくともしない。
「あたしら、恋愛ごっこして客から金巻き上げるけど」
リカが、テーブルの下からなにかを出す。
ごそごそと、手を動かす。
「ホストなんて、その上前ハネてんのよ。汚いわよね」
バッグの中から、wild worldが聞こえる。
男の手から逃れ様ともがく。
電話に。
出なきゃ。尊だ、絶対。
仕事中やのに。
やっぱ、また、怒られるな。
押さえつける力は強くなる。
「アイツはね、あたしのお姉ちゃんを殺したの」
お姉ちゃん。あんたの!?
「お姉ちゃんも水商売してたけど」
リカが、あたしに近付く。
「アイツのために、店通って。お金無くなってもまだアイツに会いたくて、いっぱいお金借りちゃって」
リカの手に、注射器。
背中に汗が流れる。
「どうしようも無くなって。薬、いっぱい飲んで死んじゃった。可哀想なお姉ちゃん」
リカが哀しそうに言った。
尊が、悪いの!?
尊の、せいなん!?
「ちっ違うやんっ!そんなの尊のっ」
「アイツのせいよ!!全部アイツが悪いのよっ!!」
男に押さえられた、手。
リカが、あたしの手に針を近付ける。
「なにすんのよっ!!止めてっ!!」
wild worldが鳴り続ける。
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どうしても行くなら気を付けて。
外は危険がいっぱいだから。
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