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《第3章》
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クロード達が進む道を作るため、化け物で溢れた道をジョーイは1人で進んでいた。彼に言われた定刻まで待ち、先へと進むクロードとカッシア。
道中ではジョーイが倒した化け物の死骸が数え切れないほど転がっており、妨害無く進むことが出来た。
ジョーイに少しでも追いつこうと、クロード達は急いで進むと、その先に人影を見つけ足を止めた。
「……なんでお前がここに……」
クロードはその人物に驚きを隠せなかった。その人物は、見た目はクロードたちと同じ軍人に見えるが実際は軍人ではない。ミリタリージャケットに身を包んだ人物は全く生気のない目でクロード達を見るとため息をついた。
「はぁ……まさかこんなところで君たちに出会うなんて……いるなんて聞いてないんだけど?……報酬も見合わねぇし……最悪だよ、クソ……」
カッシアも驚きを隠せないようだったが、平然を装い口を開いた。
「報酬、と言ったな。ワルデン。誰に雇われている。……あとジョーイを知らないか?」
ワルデンと呼ばれた人物は少し何か考える仕草をし、表情ひとつ変えず口を開いた。
「……まぁ。元々乗り気じゃなかったから、口外したところで問題はなさそうだな。僕は、アドラーに雇われた。護衛という役目らしいが……面倒くさい上にこんな広い地下水路とかも見回れって命令で……これで報酬金は100万。見合ってないと思わないか?」
見るからに落ち込んでいるワルデン。
「アドラー……か。まぁ、あいつはそういう奴だからなぁ。俺らの軍部にも協力金は入れてくれているらしいが……」
カッシアは苦笑した。
「……あぁ、そうだった。ジョーイならあっちで伸びてるよ。僕に銃を向けるもんだから、防衛本能で殴った。命に別状はないから安心して」
ワルデンはそう言うと脇通路を指さした。そこにはジョーイが倒れていた。それを見た後クロードは小さくため息をついた。
「まあ、先輩が無事ならいいや……お前、本当に報酬金以外見てないんだな」
ワルデンは首を傾げた。
「それの何が問題なのさ?僕の仕事上、それ以外見るものがないからね。……あ、そうそう。君たちに取っておきの情報を2つ、『特別』にタダで教えてあげる」
そういうと、ワルデンはスボンのポケットから1枚の紙を取り出し、クロードに手渡した。
「まずひとつ。これは地下の最新の地図。僕は覚えたからもう必要が無い。……あと、もうひとつは」
ワルデンの言葉を遮るように化け物が音もなく襲いかかってきた。ワルデンは微動だにせず静かに右手を持ち上げた。すると、化け物の頭が弾け飛びそれは動かなくなった。
カッシアとクロードは何があったのか全く理解できなかった。
「……今……何が……?」
と、カッシアが口にしたのを気にもせず、 ワルデンは話の続きを始めた。
「もうひとつの情報だが……早くカルダーノを助けてやれ。でないと、あいつが危ない。取り返しのつかないことになる可能性が極めて高い」
クロードはその言葉に小さく息を飲んだ。
「わかった。情報提供感謝する。……で、さっきのはどうなったんだ?」
ワルデンは死人のような目をクロードに向けた。その目はクロードが何を聞こうとしているのか理解していないように思えるほど虚無だった。
「だ、だから、さっきの……化け物の……」
ワルデンはハッとした。
「……あれは……生まれつき持った『チカラ』だ。僕はそれを上手く活用して、仕事をこなしているんだ。だから僕自身、護衛を必要としたことがないんだ。『牽制』することに特化しているから」
ワルデンはジャケットを着直すと、クロードたちに背を向けた。
「……アドラー……奴には、特に気をつけた方がいい。僕もこの件を話したことはバレてるだろうから……この先僕と共に行動したら危険だ。だから、僕はお先に失礼するよ。恐らくこの件で関わるのもこれが最後だ」
ワルデンはそう言い残すと音もなく走り去った。
カッシアはジョーイの近くにしゃがみ込んで、どうやって起こそうかと考えていた。
「なぁ、カッシア。ワルデンの言っていた『チカラ』ってなんだ?お前なら何か知ってるだろ?」
クロードの質問にカッシアはジョーイの背中を落ちていた枝のようなものでつつきながら口を開いた。
「……『チカラ』か。久しいな、その言葉。言ってなかったと思うが……カルダーノも知らないが俺は元々その『チカラ』ってやつを持ってたんだ。まあ、意図的に消されたんだが……」
クロードはカッシアの隣に座るとスマホを開いた。
「知らなかった。お前があんな感じの持ってたなんて」
カッシアは苦笑した。
「いや、俺が持ってたものなんて戦闘には使えない。精々索敵、偵察程度だ。っと、ワルデンの言っていた『チカラ』というものは数パーセントの『人間』に宿る兵器としての能力のことだ。色々な組織から特に狙われる種類は『牽制』『殺戮』『生成』『支配』『捕縛』の5種類だ。俺の場合は『偵察』の能力だったから特になんともなかったが……」
クロードはスマホの機能を使ってメモをしている。カッシアはその様子を見ながら説明を続けた。
「さっき話した5種類は稀な存在で兵器としての能力を持って生まれた中でも更に0.5パーセントにも満たない。それらは世界の軍部で奪い合いが発生したり、裏社会では高額で取引もされている。見たところ、ワルデンは『牽制』に部類され、それもかなりの手練だ。威力を常に制御しているのだろう」
クロードはメモを取る手を休めず、口を開いた。
「でも、なんでそんなに必要とされるんだ?俺らの軍部には居ないだろ?」
カッシアは少し苦い顔をした。
「居ない……訳では無い」
クロードは顔を上げた。
「俺の予想では、カルダーノがそうだと思う。何故か、と聞かれたら答えようがないが……元兵器の勘としか言えない」
クロードは静かにカッシアの話を聞いていると、ジョーイがようやく目を覚ました。
「……あのクソワルデン。殴りやがって……」
カッシアはサッと手に持っていた物を隠すと立ち上がった。
「目覚めたか、ジョーイ。全く……ただの優秀な情報屋のワルデンに1本取られるとはな」
ジョーイは立ち上がると服に着いた砂と泥を叩き落としている。
「うるせぇなあ……まさか生きてる人間が出てくるなんて思わねぇだろ?!」
クロードは笑いをこらえるのに必死だったが、ジョーイに気づかれてしまった。
「お前、何笑ってんだよ。クロード?」
クロードは笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら口を開いた。
「やぁ、だって……近距離最強の先輩がやられたんですよ……フッ……そりゃ、面白いじゃないですか」
ジョーイはため息をついた。
「お前らなぁ……」
カッシアはその様子を見ながら口を開いた。
「とりあえず、この先に進もう。ワルデンから貰った地図によればまた小部屋があるようだ。そこで地図の確認と、あの話の続きをしよう」
そう言うとカッシアは歩き始めた。それをクロードとジョーイは追いかけた。
進むこと20分。3人の前に鉄製の扉が見えてきた。
「ここか。とりあえず入ろう。また襲撃でもされたら厄介だ。とりあえず、俺が先にクリアリングするから待っててくれ」
ジョーイはそう言うとショットガンを構え、扉の奥へ入った。少しして、ジョーイが戻ってくると、カッシアとクロードは部屋の中に入った。
部屋の中にはダンボール箱が沢山置かれていた。クロードはそのひとつを開けた。
「何だ、これ。……『ターゲット調査報告書』?」
クロードはその書類をジョーイとカッシアの元に持って行った。
「報告書が入ってた」
カッシアはクロードが持ってきた書類を受け取ると、その中を読み進めた。そして、とあるページで手を止め部屋備え付けの机の上に置いた。
「ここ、俺らの軍部のことが書いてある。俺の名前は書いてあるだけだが……もう1人兵器がいる、との記載がある」
ジョーイが眉をひそめながら口を開いた。
「待て待て。待ってくれ。兵器ってあの?」
カッシアは涼しい顔で頷いた。
「俺聞いたことないんだが……軍にいるって」
カッシアは少し目を逸らした。
「そうだろうな。いたとしても幹部しか知らない……俺は元兵器だ。今はなんの力も持たないただの人間だ。能力が使える方の眼はもう機能してないからな」
クロードがその言葉に反応をした。
「機能してない?」
カッシアは少し焦ったように笑った。
「あ。これ……話すなって言われてた気がする……ま、まぁ、口に出したが最後だ。教える、俺の能力のことと機能していない理由を」
カッシアは右側の前髪を軽くかきあげた。そこには開いてはいるものの、ワルデンと同じ生気のない目があった。
「俺が幼少の頃、この目のせいで家族を危険に晒したことがある。……かなり遠い距離だったり、壁を隔てていても敵の動きがわかってしまうこの『チカラ』があったことで俺は盗賊や裏社会の商人に狙われた」
カッシアは髪から手を離すと、近くの椅子に座った。どこか遠くを見つめ、すぐに視線を足元に落とした。
「その時に、親父に伝えたんだ。全て……そしたら……俺の家には薬が作れるよう代々伝えられていて、その毒を右目に使われ、暫く部屋から出るなと言われた」
淡々と語るカッシアをクロードとジョーイは途中で口を出すことなくただ静かに、聴いているだけだった。
「最初の2週間程は死ぬほど痛みが強く、辛かった。でも、痛みが治まるにつれて気づいたんだ。『チカラ』が使える方の眼が死んだことに。それで、俺の『チカラ』は消えたわけだ」
話を聞き終えたクロードは資料に目を通していた。
「でも、何でヘルツォークの奴らがそれを知っているんだ?」
ジョーイはクロードの横から資料を覗き込んだ。
「あいつらは色んな施設や組織の情報を高額で買い取ってるんじゃないか?そんな噂が確かあったんだ。まあ、当人たちは否定しているが」
カッシアは顎に手を当てながら口を開いた。
「でも、どうやって俺以外の兵器がいるかもしれない、なんて思ったんだろうな。何か裏がありそうだ」
3人はしばらく考え込んだが、答えが導き出せなかった。そんな中、ジョーイがカッシアに向き直った。
「そういえばお前、さっき俺の事つついてたよな」
カッシアはサッと目を逸らした。
「さぁ、なんの事だか」
ジョーイは深々とため息をついた。
「お前なぁ……とりあえず、ほかの箱を漁ってはみたが特に何か手がかりになるもんはなさそうだったぞ。で、この先は何がある?」
カッシアはワルデンから受けとった地図を開いた。
「今俺らがいるのはこの地下保管室ってやつか。このまま進めば……研究室があって、その中に上に通じる梯子?階段?らしきものがあるみたいだな。そこに辿り着けば、この地下通路から出られるかもしれないな」
カッシアは地図を畳むとポケットに仕舞った。
「少し休んでから進もう。もうすぐでカルダーノのいる施設に着くかもしれないし、この先の研究室で誰と出会うか分からないから」
クロードは自分の銃に装填されている弾倉を確認しそれを胸元に抱えた。ジョーイはショットガンの弾をリロードし、カッシアはハンドガンを取り出した。
「……そろそろ行く?」
クロードはそう言うと2人の方を見た。カッシアたちは黙って頷き、部屋の奥の扉を開け先に進んだ。少し進んだところで、通路奥から誰かの走る音と化け物たちの呻き声が響いてきた。
「他に人がいるのか?……助けに行こう」
クロードは銃を握る手に力を入れると音のする方へ走っていった。それを見たカッシアとジョーイも後に続いた。向かった先には灰色の髪の青年が化け物に通路の行き止まりに追い詰められていた。
「あれは……司令官と話してた奴だ。何かカルダーノについて分かるかもしれない……助けよう」
クロードは銃を構えると化け物の足を撃ち、地面に転ばせるとそれをジョーイが仕留める。カッシアはその音を辿ってくる化け物が居ないかクロードたちの背後を警戒していた。
暫くして全ての化け物を倒したクロードは青年に手を差し伸べた。
「大丈夫か、お前」
青年はクロードの手をとると立ち上がった。
「まあ。なんとか……その、助けてくれて……ありがとう」
青年はクロードたちの方を見ると小さく息を飲んだ。
「君たちは……シュラハトの」
クロードは頷いた。
「そうだ。俺たちは精鋭部隊の幹部だ。お前はその服を見る限りではここの研究員かなんかだろ?」
青年は頷いた。
「う、うん。僕はケール・ヴェルナ。この施設の研究員。でもなんで、君らがここに?」
ジョーイがため息混じりに答えた。
「何も知らないわけがないだろ?お前は。副司令官がここの施設にさらわれたと情報を貰ったんだ。だからきたんだ。ついでに聞くと、あの化け物はなんだ?」
ケールは視線を泳がせつつも、口を開いた。
「君たちの副司令官がここにいることは間違いない。でも……化け物が何なのかは僕は知らない。僕は上司の命令で……その、地下通路を調べに来ただけだから。と、とりあえずこの先にある研究室に行こう。もしまた襲われでもしたら……」
ケールの言葉にクロードは頷き、ついて行った。進むこと数分。重々しい鉄製の扉が見えてきた。
ケールはそれを開けるとクロードたちを中に入れ、自分も入った。
そこには別の研究員が2人いた。
「遅かったな、ケール。何が……」
1人の男がケールの方を向くと言葉を切った。
「すみません、リンドウさん。この人たちに助けられて……それで」
リンドウと呼ばれた男は隣で作業をしている男の肩を叩き、何かをその男に伝えていた。もう1人の男はクロードたちの方を見ると立ち上がった。
「……その身なりからして、シュラハトの軍人だな。ちょうどいいところに来た。大事な話がある。客人に立ち話は不躾だ。その辺の椅子に座ってくれ。少し長くなる」
カッシアは静かに口を開いた。
「座ったら俺らを捕まえるつもりか?」
座るよう勧めた男は首を横に振った。
「そんなわけないだろ。お前らの存在は少し前に予測できていた……何とかして接触したかったんだ。お前らの副司令官様の話がしたくてな」
カッシアはジョーイたちの代わりに聞いた。
「どんな話だ。まず結論から言ってくれ。話を聞くか聞かないかはそれからだ」
男はため息とともに頷いた。
「わかったよ。話す。あぁ、まだ名乗ってなかったな。俺はコレウス・ホープ。隣のヤツはリンドウ・ミスティン。ここの研究員であり、専務だ。結論から言おう。お前らの副司令官が危ない。」
クロードは眉をひそめた。
「何がどう危ないんだよ」
コレウスは手に持っていた紙を机に置いた。
「何が、と言われたら困るが……ピンと来るかは分からないが副司令官、カルダーノ・ミカエラに『支配』のチカラが作用する日が近づいている、とでも言っておこう」
クロードは構えていた銃を降ろした。
「『支配』のチカラ……?それを受けたらどうなる?助かる方法は?」
コレウスが答えるか悩んで黙っていると横からリンドウが口を挟んだ。
「もし支配されたらカルダーノは確実に自我も何も無くなる。対処法はあるが、その薬がまだ完成してない。今はその薬の研究を最終段階まで持って言ったところだ」
ジョーイはなにかに気づいた。
「自我を失う……今まで崩壊した都市の原因の暴徒がそうだ。自我がなく、ただの殺人兵器だだった……まさか」
コレウスは頷き、ケールにケースに入った薬を渡した。
「あぁ。その通り。この世界が崩壊を始めたのもそのせいだ。……ケール、それを捕まえてある変異途中のやつに投与してくれ。多分大丈夫だと思うが……」
カッシアは首を傾げた。
「少し不思議に思ったんだが……なぜお前らはここで研究をしている?もっと立派な施設があるだろ」
コレウスが答えようとした時、リンドウがコレウスを止め小さな声で話した。
「待て。今はまずい。『支配』のチカラを一瞬感じた。恐らく、あいつが警戒している」
コレウスは頷き、黙り込んだ。暫く沈黙が場を支配していたがようやくリンドウが口を開いた。
「大丈夫だ。消えた。問題は無い」
リンドウの行動にカッシアが薄ら笑いをうかべた。
「お前、持ってるんだな『チカラ』を」
リンドウは満更でも無い様子で頷いた。
「また珍しいチカラを持っているんだな。『探知』というやつだったか……」
リンドウは頷いた。
「お前はカッシアだったか。『偵察』のチカラを持つスナイパーだと聞いたが、チカラはもうなさそうだな」
カッシアは頷いた。
「目を失ってもうチカラは使えないとは言っているようだが……いや、なんでもない。とりあえず、先の質問に答えよう。俺たちのこの研究は極秘なんだ。ある人物にバレると……殺される」
リンドウはコレウスの代わりに答え、クロードは頷きながら聞いていた。
「タイミングがいいのか、仕組まれたのか……何にせよこれは何かの縁だ。それに……カルダーノを助けたければ完成した薬を持って行く必要がある。しばらくここで待って欲しい」
コレウスの提案にクロードは頷いた。
「闇雲に突っ込んだところで、カルダーノを助けるためにはしっかりと手順がある。それを無視したら無駄だってことだな」
コレウスの提案でクロードたちは研究室で暫く待つことし、その間薬品の実験のために何体か化け物を捕まえる協力をした。
コレウスは部屋の中が静かになったのに気づくと顔を上げた。クロードたちは寝る間も惜しんで進み続けていたため、座ったまま仮眠を取っていた。
その様子を見たコレウスは少し困ったような笑みを浮かべたが、すぐに資料へと向き直った。
「なぁ、リンドウ。あいつらにこの3枚見せとくか?多分必要な情報だ」
リンドウはコレウスが持っている資料を覗き込むと頷き、ファイルに入れクロードの前にある机に置いた。
「いずれは知ることになる。見せてやればいいさ」
リンドウたちが作業を再開してから5時間。
クロードたちは目を覚ました。
「仮眠のつもりが普通に寝たわ。睡眠時間削るもんじゃねぇな」
カッシアは軽く伸びをしながら苦笑した。
「非番の前日毎回徹夜してる奴の言うことじゃないだろ」
クロードはカッシアのほうをちらっと見たが、何も言い返さなかった。
リンドウはパソコンから顔を上げることなくクロードに資料のことを伝えた。
「そこにお前らが知ってる奴らの資料置いといた。遅かれ早かれ知ることになると思うから先に読んでおけ。内容は何であれ、しっかりと把握しておけ。対処がしやすくなるだろう」
クロードは頷きファイルを手に取ると中を確認した。それを横からカッシアたちも覗き込んだ。
「これは、カッシアとカルダーノ、バルトの資料?」
クロードはそう呟くと資料に目を通した。そこには各個人の詳細情報が明記されていた。
「裏社会にいたら調べきれないと思っていたが……そんなことは無い、ということか」
カッシアも暗殺者家系の者として素性を隠して生きることが多かったが、資料の内容を見て驚いていた。
「まあ……とある優秀な情報屋のおかげだ」
コレウスはそう言うと、パソコンの画面へと向き直った。
「優秀な情報屋?……え、あいつじゃないか?優秀だけど、ボッてくるやつ」
ジョーイはそう呟いた。
クロードとカッシアも頷いていた。
「だろうな。あいつなら余裕だろう、この程度」
クロードはそんな会話を聞きつつ、資料をめくった。次の資料にはバルトの情報が載っていた。
「先輩、この資料見ます?」
クロードはジョーイにそう言うと資料を手渡した。バルトの資料には任務前に聞かされていない情報まで載っていた。
「思ったより酷いな、これは」
クロードはジョーイの言葉に資料から顔を上げた。
「なんて書いてあるんですか?」
ジョーイはクロードに資料を返した。クロードは資料を受け取ると目を通した。
資料には……
『バルト・ルディアス。ルディアス家の長男で常に家族思いの青年だった。兄弟、2人の弟が産まれ、彼らが武術や勉学の方で秀でた才能があると親が気づいた時、彼はペットのように扱われるようになった。弟たちからも酷いイジメにあっていたようだ。その弟たちが高等科に進学する直前、その環境に耐えきれずずっと隠されていた『チカラ』が覚醒。聞いた話では2、3分程度で家族全員を惨殺したとのこと。それが事実かは不明だが、短時間で全滅させたことに間違いはないだろう。事件が発覚するとバルトは殺人罪として警察に追われる身となったが、裏社会の住人たちによって設立されたフリューゲル市へと流れ着き、人並みの生活ができるように。しかし、政府からの命令を受けたシュラハトの軍人によってこの市は制圧。その際、重罪人としてリューゲ収容所に送られる予定だったが、シュテルベン研究所所長の申し出により引き取られる。その後、政府の命令により捕縛され8月末処刑される』
と、記されていた。しかし、ジョーイは資料の左下を指さした。クロードはその先を見ると小さな文字で『処刑されたのは身代わりの盲目の青年。余命わずからしく、本人の意思により身代わりになった。バルト本人は生きている。僕の情報網はごまかせないよ by.ワルデン』とあった。クロードは資料を机に置くと、カッシアの方を向いた。
「バルトも『チカラ』を持ってる。それに、惨殺なんて……危険なんじゃ?」
カッシアは頷いた。
「その資料の内容的にあいつのチカラは『殺戮』だろうな。仮に、出会ったとしても変に刺激しない方がいいかもしれない」
クロードは頷いた。
「しかし、バルトの家族も殺されたことは可哀想だとは思うがやったでたことを考えると自業自得だよな」
ジョーイは資料をもう一度手に取り、口を開いた。
「秀でた能力があったとしてもそれを誰かのために使わないと意味がない……しかもその差を理由に家庭内で争いを起こした、なんてなぁ……」
クロードとカッシアは頷いた。
「あぁ。まったくだ」
クロードは手元の資料に再び視線を落とした。そこには『カルダーノ・ミカエラ』と書かれていた。資料を開こうとしないクロードにジョーイは声をかけた。
「クロード、どうした?」
クロードは少し困惑したような表情をした。
「この先を読んでもいいのかって悩んでて……その、カルダーノが何でシュラハトにいるのかは理由は知っていますがその他のことは何も知らないので」
カッシアは首を傾げた。
「カルダーノがシュラハトにいるのは親に捨てられたからだろ?軍部のみんな知ってると思うが……?」
クロードはその言葉に首を横に振った。
「確かに、カルダーノの件は軍部に人と見た目が違う『バケモノ』として捨てられた、と伝わってはいるが……本当は違う。カルダーノは父親に『売られた』んだ。理由は……分からないけれど」
3人のやり取りをずっと無言で見ていたリンドウが口を開いた。
「軍部で高額で引き取られたのであれば『チカラ』があったからだろうな。しかも、そいつが持っているの軍にとってプラスになるような『チカラ』ということだ」
クロードは目を伏せた。大体の予想はついていたが、ただの噂であって欲しかったからだ。重苦しい沈黙が流れる中、ケールが戻ってきた。
「コレウスさん、先程の薬品の結果出ました」
コレウスは椅子から立ち上がるとケールの方へ近づいた。
「どうだった?効果は」
ケールは手に持っていたスマホの画面を見せ、口を開いた。
「念の為、証拠がいると思って撮影しました。効果はしっかりありました。完成だと思います。効力としては変異してから半日程度であれば変異は治まり元の姿に戻ります。更に、『チカラ』への抵抗力が上昇したことを確認出来ました。ですが、数日たっていると治療どころか変異値の歯止めすら効きませんでした。そして、『チカラ』への抵抗力の上昇も確認できました」
コレウスは報告を聞き終わると、パソコンにコードを入力し作れるだけの薬品作成した。完成した薬品の本数は4本。1本はコレウスが持ち、残りの3本をケースに入れ、クロードに渡した。
「俺はとあるやつを守るために1本必要だ。あとの分は全部お前らに渡す。うまく使え」
コレウスは薬品をケースに仕舞い、パソコンを閉じると研究室を出ていった。それに続くようにケールとリンドウも出ていった。
研究室に残された3人はワルデンから貰った地図を確認した。
「この先が研究施設だ。何があるかわからねぇ。装備の確認をしてから行こう」
ジョーイの提案にクロードたちは頷き、手持ちの装備を机の上に広げた。装備の確認をしていると、自分たちが入ってきた扉に何かがぶつかる音がし、クロードはハンドガンを構えるとそっと扉を開けた。
そこには誰もいなかったが、不自然に真新しい血溜まりが残っていた。クロードは扉を閉めようとしたが、血溜まりの中に何か光るものを見つけ手を伸ばした。血塗れのそれを研究室内にあった布で拭き取るとクロードは驚きのあまり、それを机に取り落としてしまった。
「これって……」
クロードの手から落ちたものは、情報屋のワルデンの右耳にいつも引っ掛けられていた通信機だった。それにはヒビが入り半壊しており危険な状況だったのを直ぐに察することが出来た。
「ワルデンに何かあったんだ。ついさっき」
カッシアは通信機を手に取るとそれを調べ始めた。
「これは落とした時にできたヒビじゃない……な。なにか強い衝撃によるものだ。恐らくさっきの音が……原因だろう」
暫く3人が押し黙っていると、扉の外からなにか金属を引き摺るような音が少しずつ近づいてきた。それに合わせて不規則な足音も近づいてきた。
「まずい……装備を急いで片付けて身を隠せ」
クロードたちは持ち物を素早く纏めると大きめの棚の影に身を潜めた。少しして扉が開き、ひとつの人影が入ってきた。その正体はワルデンだった。彼の姿は、少し前とは全く違っておりミリタリーベストは血に濡れ、髪も血でところどころ赤く染っていた。クロードは助けようとも思ったものの、状況がただ事ではないと思い、その場で待機することにした。
ワルデンは左の脇腹を抑えつつ、入ってきた扉の方を向いた。閉じられていなかった扉の外には大鎌を引き摺っているバルトが立っていた。
「お兄さん、逃げちゃダメだよ。だって、あの人に怒られちゃうよ」
ワルデンは後退りしながら余裕が無いことを隠すために軽く笑って見せた。
「はっ、お前人の顔色伺うんだな。僕は絶対にあいつのところには行かない。絶対だ」
バルトはワルデンの答えにため息をつくと、大鎌を構えた。
「殺しちゃダメって言われてるんだけど、抵抗するから仕方ないよね」
そう口にしたバルトの目は狂気に満ちていた。ワルデンはバルトの様子が変わったのを見ると、血に濡れた手袋を外した。
「僕だって、ここは大人しく捕まる訳には行かないんだ……悪いけど、僕は逃げさせてもらう」
ワルデンはそう言うと指をパチン、と鳴らした。すると、バルトの目の前で空間が弾けた。しかし、それに対する反応速度がバルトの方が速く掠りもしなかった。バルトはワルデンの左横に来ると大鎌を振った。ワルデンはそれに反応が遅れ、受身を取ったもののクロードたちが隠れている棚とは反対側の壁に叩きつけられた。傷口にも大鎌の柄当たっていたため、体制の立て直しが思うようにできない。先程よりも開いた傷によりワルデンは崩れ落ちた床から立ち上がることを諦めた。
「殺すなら殺せば……いい。お前の『チカラ』がここまで厄介なのは誤算だった……」
ワルデンはそう言うと、ギリギリ保っていた意識を手放した。
バルトはワルデンの近くにしゃがみこむと、自分より小柄なワルデンを背負い、元来た道を引き返した。もちろん、大鎌を引き摺りながら……。
大鎌の擦れる音が聞こえなくなるとクロードたちは物陰から出た。
「あれが『チカラ』……勝ち目がない……」
クロードは小さく呟いたが、カッシアはため息混じりに口を開いた。
「クロード。バルトの『チカラ』はあの程度じゃ終わらない。1割も能力を出していないんじゃないか?俺の見た感想だ」
クロードは震える手を隠すためにぎゅっと銃を持つ手に力を入れた。
先程の光景にいつもは脳天気なジョーイまでも黙り込んでしまっていた。暫く3人はそのまま佇んでいたが、クロードが短く息を吐き出すと意を決したかのように顔を上げた。
「この程度でビビってられるかよ。行こう、カルダーノを助けに」
クロードの言葉に2人は頷いき、研究室を出ていき施設内部へと向かった。
研究室から人がいなくなってから数分。
クロードたちが出ていった扉を見つめるひとつの影があった。その影は研究室にある壁の中に姿を消した。
道中ではジョーイが倒した化け物の死骸が数え切れないほど転がっており、妨害無く進むことが出来た。
ジョーイに少しでも追いつこうと、クロード達は急いで進むと、その先に人影を見つけ足を止めた。
「……なんでお前がここに……」
クロードはその人物に驚きを隠せなかった。その人物は、見た目はクロードたちと同じ軍人に見えるが実際は軍人ではない。ミリタリージャケットに身を包んだ人物は全く生気のない目でクロード達を見るとため息をついた。
「はぁ……まさかこんなところで君たちに出会うなんて……いるなんて聞いてないんだけど?……報酬も見合わねぇし……最悪だよ、クソ……」
カッシアも驚きを隠せないようだったが、平然を装い口を開いた。
「報酬、と言ったな。ワルデン。誰に雇われている。……あとジョーイを知らないか?」
ワルデンと呼ばれた人物は少し何か考える仕草をし、表情ひとつ変えず口を開いた。
「……まぁ。元々乗り気じゃなかったから、口外したところで問題はなさそうだな。僕は、アドラーに雇われた。護衛という役目らしいが……面倒くさい上にこんな広い地下水路とかも見回れって命令で……これで報酬金は100万。見合ってないと思わないか?」
見るからに落ち込んでいるワルデン。
「アドラー……か。まぁ、あいつはそういう奴だからなぁ。俺らの軍部にも協力金は入れてくれているらしいが……」
カッシアは苦笑した。
「……あぁ、そうだった。ジョーイならあっちで伸びてるよ。僕に銃を向けるもんだから、防衛本能で殴った。命に別状はないから安心して」
ワルデンはそう言うと脇通路を指さした。そこにはジョーイが倒れていた。それを見た後クロードは小さくため息をついた。
「まあ、先輩が無事ならいいや……お前、本当に報酬金以外見てないんだな」
ワルデンは首を傾げた。
「それの何が問題なのさ?僕の仕事上、それ以外見るものがないからね。……あ、そうそう。君たちに取っておきの情報を2つ、『特別』にタダで教えてあげる」
そういうと、ワルデンはスボンのポケットから1枚の紙を取り出し、クロードに手渡した。
「まずひとつ。これは地下の最新の地図。僕は覚えたからもう必要が無い。……あと、もうひとつは」
ワルデンの言葉を遮るように化け物が音もなく襲いかかってきた。ワルデンは微動だにせず静かに右手を持ち上げた。すると、化け物の頭が弾け飛びそれは動かなくなった。
カッシアとクロードは何があったのか全く理解できなかった。
「……今……何が……?」
と、カッシアが口にしたのを気にもせず、 ワルデンは話の続きを始めた。
「もうひとつの情報だが……早くカルダーノを助けてやれ。でないと、あいつが危ない。取り返しのつかないことになる可能性が極めて高い」
クロードはその言葉に小さく息を飲んだ。
「わかった。情報提供感謝する。……で、さっきのはどうなったんだ?」
ワルデンは死人のような目をクロードに向けた。その目はクロードが何を聞こうとしているのか理解していないように思えるほど虚無だった。
「だ、だから、さっきの……化け物の……」
ワルデンはハッとした。
「……あれは……生まれつき持った『チカラ』だ。僕はそれを上手く活用して、仕事をこなしているんだ。だから僕自身、護衛を必要としたことがないんだ。『牽制』することに特化しているから」
ワルデンはジャケットを着直すと、クロードたちに背を向けた。
「……アドラー……奴には、特に気をつけた方がいい。僕もこの件を話したことはバレてるだろうから……この先僕と共に行動したら危険だ。だから、僕はお先に失礼するよ。恐らくこの件で関わるのもこれが最後だ」
ワルデンはそう言い残すと音もなく走り去った。
カッシアはジョーイの近くにしゃがみ込んで、どうやって起こそうかと考えていた。
「なぁ、カッシア。ワルデンの言っていた『チカラ』ってなんだ?お前なら何か知ってるだろ?」
クロードの質問にカッシアはジョーイの背中を落ちていた枝のようなものでつつきながら口を開いた。
「……『チカラ』か。久しいな、その言葉。言ってなかったと思うが……カルダーノも知らないが俺は元々その『チカラ』ってやつを持ってたんだ。まあ、意図的に消されたんだが……」
クロードはカッシアの隣に座るとスマホを開いた。
「知らなかった。お前があんな感じの持ってたなんて」
カッシアは苦笑した。
「いや、俺が持ってたものなんて戦闘には使えない。精々索敵、偵察程度だ。っと、ワルデンの言っていた『チカラ』というものは数パーセントの『人間』に宿る兵器としての能力のことだ。色々な組織から特に狙われる種類は『牽制』『殺戮』『生成』『支配』『捕縛』の5種類だ。俺の場合は『偵察』の能力だったから特になんともなかったが……」
クロードはスマホの機能を使ってメモをしている。カッシアはその様子を見ながら説明を続けた。
「さっき話した5種類は稀な存在で兵器としての能力を持って生まれた中でも更に0.5パーセントにも満たない。それらは世界の軍部で奪い合いが発生したり、裏社会では高額で取引もされている。見たところ、ワルデンは『牽制』に部類され、それもかなりの手練だ。威力を常に制御しているのだろう」
クロードはメモを取る手を休めず、口を開いた。
「でも、なんでそんなに必要とされるんだ?俺らの軍部には居ないだろ?」
カッシアは少し苦い顔をした。
「居ない……訳では無い」
クロードは顔を上げた。
「俺の予想では、カルダーノがそうだと思う。何故か、と聞かれたら答えようがないが……元兵器の勘としか言えない」
クロードは静かにカッシアの話を聞いていると、ジョーイがようやく目を覚ました。
「……あのクソワルデン。殴りやがって……」
カッシアはサッと手に持っていた物を隠すと立ち上がった。
「目覚めたか、ジョーイ。全く……ただの優秀な情報屋のワルデンに1本取られるとはな」
ジョーイは立ち上がると服に着いた砂と泥を叩き落としている。
「うるせぇなあ……まさか生きてる人間が出てくるなんて思わねぇだろ?!」
クロードは笑いをこらえるのに必死だったが、ジョーイに気づかれてしまった。
「お前、何笑ってんだよ。クロード?」
クロードは笑いすぎて浮かんだ涙を拭いながら口を開いた。
「やぁ、だって……近距離最強の先輩がやられたんですよ……フッ……そりゃ、面白いじゃないですか」
ジョーイはため息をついた。
「お前らなぁ……」
カッシアはその様子を見ながら口を開いた。
「とりあえず、この先に進もう。ワルデンから貰った地図によればまた小部屋があるようだ。そこで地図の確認と、あの話の続きをしよう」
そう言うとカッシアは歩き始めた。それをクロードとジョーイは追いかけた。
進むこと20分。3人の前に鉄製の扉が見えてきた。
「ここか。とりあえず入ろう。また襲撃でもされたら厄介だ。とりあえず、俺が先にクリアリングするから待っててくれ」
ジョーイはそう言うとショットガンを構え、扉の奥へ入った。少しして、ジョーイが戻ってくると、カッシアとクロードは部屋の中に入った。
部屋の中にはダンボール箱が沢山置かれていた。クロードはそのひとつを開けた。
「何だ、これ。……『ターゲット調査報告書』?」
クロードはその書類をジョーイとカッシアの元に持って行った。
「報告書が入ってた」
カッシアはクロードが持ってきた書類を受け取ると、その中を読み進めた。そして、とあるページで手を止め部屋備え付けの机の上に置いた。
「ここ、俺らの軍部のことが書いてある。俺の名前は書いてあるだけだが……もう1人兵器がいる、との記載がある」
ジョーイが眉をひそめながら口を開いた。
「待て待て。待ってくれ。兵器ってあの?」
カッシアは涼しい顔で頷いた。
「俺聞いたことないんだが……軍にいるって」
カッシアは少し目を逸らした。
「そうだろうな。いたとしても幹部しか知らない……俺は元兵器だ。今はなんの力も持たないただの人間だ。能力が使える方の眼はもう機能してないからな」
クロードがその言葉に反応をした。
「機能してない?」
カッシアは少し焦ったように笑った。
「あ。これ……話すなって言われてた気がする……ま、まぁ、口に出したが最後だ。教える、俺の能力のことと機能していない理由を」
カッシアは右側の前髪を軽くかきあげた。そこには開いてはいるものの、ワルデンと同じ生気のない目があった。
「俺が幼少の頃、この目のせいで家族を危険に晒したことがある。……かなり遠い距離だったり、壁を隔てていても敵の動きがわかってしまうこの『チカラ』があったことで俺は盗賊や裏社会の商人に狙われた」
カッシアは髪から手を離すと、近くの椅子に座った。どこか遠くを見つめ、すぐに視線を足元に落とした。
「その時に、親父に伝えたんだ。全て……そしたら……俺の家には薬が作れるよう代々伝えられていて、その毒を右目に使われ、暫く部屋から出るなと言われた」
淡々と語るカッシアをクロードとジョーイは途中で口を出すことなくただ静かに、聴いているだけだった。
「最初の2週間程は死ぬほど痛みが強く、辛かった。でも、痛みが治まるにつれて気づいたんだ。『チカラ』が使える方の眼が死んだことに。それで、俺の『チカラ』は消えたわけだ」
話を聞き終えたクロードは資料に目を通していた。
「でも、何でヘルツォークの奴らがそれを知っているんだ?」
ジョーイはクロードの横から資料を覗き込んだ。
「あいつらは色んな施設や組織の情報を高額で買い取ってるんじゃないか?そんな噂が確かあったんだ。まあ、当人たちは否定しているが」
カッシアは顎に手を当てながら口を開いた。
「でも、どうやって俺以外の兵器がいるかもしれない、なんて思ったんだろうな。何か裏がありそうだ」
3人はしばらく考え込んだが、答えが導き出せなかった。そんな中、ジョーイがカッシアに向き直った。
「そういえばお前、さっき俺の事つついてたよな」
カッシアはサッと目を逸らした。
「さぁ、なんの事だか」
ジョーイは深々とため息をついた。
「お前なぁ……とりあえず、ほかの箱を漁ってはみたが特に何か手がかりになるもんはなさそうだったぞ。で、この先は何がある?」
カッシアはワルデンから受けとった地図を開いた。
「今俺らがいるのはこの地下保管室ってやつか。このまま進めば……研究室があって、その中に上に通じる梯子?階段?らしきものがあるみたいだな。そこに辿り着けば、この地下通路から出られるかもしれないな」
カッシアは地図を畳むとポケットに仕舞った。
「少し休んでから進もう。もうすぐでカルダーノのいる施設に着くかもしれないし、この先の研究室で誰と出会うか分からないから」
クロードは自分の銃に装填されている弾倉を確認しそれを胸元に抱えた。ジョーイはショットガンの弾をリロードし、カッシアはハンドガンを取り出した。
「……そろそろ行く?」
クロードはそう言うと2人の方を見た。カッシアたちは黙って頷き、部屋の奥の扉を開け先に進んだ。少し進んだところで、通路奥から誰かの走る音と化け物たちの呻き声が響いてきた。
「他に人がいるのか?……助けに行こう」
クロードは銃を握る手に力を入れると音のする方へ走っていった。それを見たカッシアとジョーイも後に続いた。向かった先には灰色の髪の青年が化け物に通路の行き止まりに追い詰められていた。
「あれは……司令官と話してた奴だ。何かカルダーノについて分かるかもしれない……助けよう」
クロードは銃を構えると化け物の足を撃ち、地面に転ばせるとそれをジョーイが仕留める。カッシアはその音を辿ってくる化け物が居ないかクロードたちの背後を警戒していた。
暫くして全ての化け物を倒したクロードは青年に手を差し伸べた。
「大丈夫か、お前」
青年はクロードの手をとると立ち上がった。
「まあ。なんとか……その、助けてくれて……ありがとう」
青年はクロードたちの方を見ると小さく息を飲んだ。
「君たちは……シュラハトの」
クロードは頷いた。
「そうだ。俺たちは精鋭部隊の幹部だ。お前はその服を見る限りではここの研究員かなんかだろ?」
青年は頷いた。
「う、うん。僕はケール・ヴェルナ。この施設の研究員。でもなんで、君らがここに?」
ジョーイがため息混じりに答えた。
「何も知らないわけがないだろ?お前は。副司令官がここの施設にさらわれたと情報を貰ったんだ。だからきたんだ。ついでに聞くと、あの化け物はなんだ?」
ケールは視線を泳がせつつも、口を開いた。
「君たちの副司令官がここにいることは間違いない。でも……化け物が何なのかは僕は知らない。僕は上司の命令で……その、地下通路を調べに来ただけだから。と、とりあえずこの先にある研究室に行こう。もしまた襲われでもしたら……」
ケールの言葉にクロードは頷き、ついて行った。進むこと数分。重々しい鉄製の扉が見えてきた。
ケールはそれを開けるとクロードたちを中に入れ、自分も入った。
そこには別の研究員が2人いた。
「遅かったな、ケール。何が……」
1人の男がケールの方を向くと言葉を切った。
「すみません、リンドウさん。この人たちに助けられて……それで」
リンドウと呼ばれた男は隣で作業をしている男の肩を叩き、何かをその男に伝えていた。もう1人の男はクロードたちの方を見ると立ち上がった。
「……その身なりからして、シュラハトの軍人だな。ちょうどいいところに来た。大事な話がある。客人に立ち話は不躾だ。その辺の椅子に座ってくれ。少し長くなる」
カッシアは静かに口を開いた。
「座ったら俺らを捕まえるつもりか?」
座るよう勧めた男は首を横に振った。
「そんなわけないだろ。お前らの存在は少し前に予測できていた……何とかして接触したかったんだ。お前らの副司令官様の話がしたくてな」
カッシアはジョーイたちの代わりに聞いた。
「どんな話だ。まず結論から言ってくれ。話を聞くか聞かないかはそれからだ」
男はため息とともに頷いた。
「わかったよ。話す。あぁ、まだ名乗ってなかったな。俺はコレウス・ホープ。隣のヤツはリンドウ・ミスティン。ここの研究員であり、専務だ。結論から言おう。お前らの副司令官が危ない。」
クロードは眉をひそめた。
「何がどう危ないんだよ」
コレウスは手に持っていた紙を机に置いた。
「何が、と言われたら困るが……ピンと来るかは分からないが副司令官、カルダーノ・ミカエラに『支配』のチカラが作用する日が近づいている、とでも言っておこう」
クロードは構えていた銃を降ろした。
「『支配』のチカラ……?それを受けたらどうなる?助かる方法は?」
コレウスが答えるか悩んで黙っていると横からリンドウが口を挟んだ。
「もし支配されたらカルダーノは確実に自我も何も無くなる。対処法はあるが、その薬がまだ完成してない。今はその薬の研究を最終段階まで持って言ったところだ」
ジョーイはなにかに気づいた。
「自我を失う……今まで崩壊した都市の原因の暴徒がそうだ。自我がなく、ただの殺人兵器だだった……まさか」
コレウスは頷き、ケールにケースに入った薬を渡した。
「あぁ。その通り。この世界が崩壊を始めたのもそのせいだ。……ケール、それを捕まえてある変異途中のやつに投与してくれ。多分大丈夫だと思うが……」
カッシアは首を傾げた。
「少し不思議に思ったんだが……なぜお前らはここで研究をしている?もっと立派な施設があるだろ」
コレウスが答えようとした時、リンドウがコレウスを止め小さな声で話した。
「待て。今はまずい。『支配』のチカラを一瞬感じた。恐らく、あいつが警戒している」
コレウスは頷き、黙り込んだ。暫く沈黙が場を支配していたがようやくリンドウが口を開いた。
「大丈夫だ。消えた。問題は無い」
リンドウの行動にカッシアが薄ら笑いをうかべた。
「お前、持ってるんだな『チカラ』を」
リンドウは満更でも無い様子で頷いた。
「また珍しいチカラを持っているんだな。『探知』というやつだったか……」
リンドウは頷いた。
「お前はカッシアだったか。『偵察』のチカラを持つスナイパーだと聞いたが、チカラはもうなさそうだな」
カッシアは頷いた。
「目を失ってもうチカラは使えないとは言っているようだが……いや、なんでもない。とりあえず、先の質問に答えよう。俺たちのこの研究は極秘なんだ。ある人物にバレると……殺される」
リンドウはコレウスの代わりに答え、クロードは頷きながら聞いていた。
「タイミングがいいのか、仕組まれたのか……何にせよこれは何かの縁だ。それに……カルダーノを助けたければ完成した薬を持って行く必要がある。しばらくここで待って欲しい」
コレウスの提案にクロードは頷いた。
「闇雲に突っ込んだところで、カルダーノを助けるためにはしっかりと手順がある。それを無視したら無駄だってことだな」
コレウスの提案でクロードたちは研究室で暫く待つことし、その間薬品の実験のために何体か化け物を捕まえる協力をした。
コレウスは部屋の中が静かになったのに気づくと顔を上げた。クロードたちは寝る間も惜しんで進み続けていたため、座ったまま仮眠を取っていた。
その様子を見たコレウスは少し困ったような笑みを浮かべたが、すぐに資料へと向き直った。
「なぁ、リンドウ。あいつらにこの3枚見せとくか?多分必要な情報だ」
リンドウはコレウスが持っている資料を覗き込むと頷き、ファイルに入れクロードの前にある机に置いた。
「いずれは知ることになる。見せてやればいいさ」
リンドウたちが作業を再開してから5時間。
クロードたちは目を覚ました。
「仮眠のつもりが普通に寝たわ。睡眠時間削るもんじゃねぇな」
カッシアは軽く伸びをしながら苦笑した。
「非番の前日毎回徹夜してる奴の言うことじゃないだろ」
クロードはカッシアのほうをちらっと見たが、何も言い返さなかった。
リンドウはパソコンから顔を上げることなくクロードに資料のことを伝えた。
「そこにお前らが知ってる奴らの資料置いといた。遅かれ早かれ知ることになると思うから先に読んでおけ。内容は何であれ、しっかりと把握しておけ。対処がしやすくなるだろう」
クロードは頷きファイルを手に取ると中を確認した。それを横からカッシアたちも覗き込んだ。
「これは、カッシアとカルダーノ、バルトの資料?」
クロードはそう呟くと資料に目を通した。そこには各個人の詳細情報が明記されていた。
「裏社会にいたら調べきれないと思っていたが……そんなことは無い、ということか」
カッシアも暗殺者家系の者として素性を隠して生きることが多かったが、資料の内容を見て驚いていた。
「まあ……とある優秀な情報屋のおかげだ」
コレウスはそう言うと、パソコンの画面へと向き直った。
「優秀な情報屋?……え、あいつじゃないか?優秀だけど、ボッてくるやつ」
ジョーイはそう呟いた。
クロードとカッシアも頷いていた。
「だろうな。あいつなら余裕だろう、この程度」
クロードはそんな会話を聞きつつ、資料をめくった。次の資料にはバルトの情報が載っていた。
「先輩、この資料見ます?」
クロードはジョーイにそう言うと資料を手渡した。バルトの資料には任務前に聞かされていない情報まで載っていた。
「思ったより酷いな、これは」
クロードはジョーイの言葉に資料から顔を上げた。
「なんて書いてあるんですか?」
ジョーイはクロードに資料を返した。クロードは資料を受け取ると目を通した。
資料には……
『バルト・ルディアス。ルディアス家の長男で常に家族思いの青年だった。兄弟、2人の弟が産まれ、彼らが武術や勉学の方で秀でた才能があると親が気づいた時、彼はペットのように扱われるようになった。弟たちからも酷いイジメにあっていたようだ。その弟たちが高等科に進学する直前、その環境に耐えきれずずっと隠されていた『チカラ』が覚醒。聞いた話では2、3分程度で家族全員を惨殺したとのこと。それが事実かは不明だが、短時間で全滅させたことに間違いはないだろう。事件が発覚するとバルトは殺人罪として警察に追われる身となったが、裏社会の住人たちによって設立されたフリューゲル市へと流れ着き、人並みの生活ができるように。しかし、政府からの命令を受けたシュラハトの軍人によってこの市は制圧。その際、重罪人としてリューゲ収容所に送られる予定だったが、シュテルベン研究所所長の申し出により引き取られる。その後、政府の命令により捕縛され8月末処刑される』
と、記されていた。しかし、ジョーイは資料の左下を指さした。クロードはその先を見ると小さな文字で『処刑されたのは身代わりの盲目の青年。余命わずからしく、本人の意思により身代わりになった。バルト本人は生きている。僕の情報網はごまかせないよ by.ワルデン』とあった。クロードは資料を机に置くと、カッシアの方を向いた。
「バルトも『チカラ』を持ってる。それに、惨殺なんて……危険なんじゃ?」
カッシアは頷いた。
「その資料の内容的にあいつのチカラは『殺戮』だろうな。仮に、出会ったとしても変に刺激しない方がいいかもしれない」
クロードは頷いた。
「しかし、バルトの家族も殺されたことは可哀想だとは思うがやったでたことを考えると自業自得だよな」
ジョーイは資料をもう一度手に取り、口を開いた。
「秀でた能力があったとしてもそれを誰かのために使わないと意味がない……しかもその差を理由に家庭内で争いを起こした、なんてなぁ……」
クロードとカッシアは頷いた。
「あぁ。まったくだ」
クロードは手元の資料に再び視線を落とした。そこには『カルダーノ・ミカエラ』と書かれていた。資料を開こうとしないクロードにジョーイは声をかけた。
「クロード、どうした?」
クロードは少し困惑したような表情をした。
「この先を読んでもいいのかって悩んでて……その、カルダーノが何でシュラハトにいるのかは理由は知っていますがその他のことは何も知らないので」
カッシアは首を傾げた。
「カルダーノがシュラハトにいるのは親に捨てられたからだろ?軍部のみんな知ってると思うが……?」
クロードはその言葉に首を横に振った。
「確かに、カルダーノの件は軍部に人と見た目が違う『バケモノ』として捨てられた、と伝わってはいるが……本当は違う。カルダーノは父親に『売られた』んだ。理由は……分からないけれど」
3人のやり取りをずっと無言で見ていたリンドウが口を開いた。
「軍部で高額で引き取られたのであれば『チカラ』があったからだろうな。しかも、そいつが持っているの軍にとってプラスになるような『チカラ』ということだ」
クロードは目を伏せた。大体の予想はついていたが、ただの噂であって欲しかったからだ。重苦しい沈黙が流れる中、ケールが戻ってきた。
「コレウスさん、先程の薬品の結果出ました」
コレウスは椅子から立ち上がるとケールの方へ近づいた。
「どうだった?効果は」
ケールは手に持っていたスマホの画面を見せ、口を開いた。
「念の為、証拠がいると思って撮影しました。効果はしっかりありました。完成だと思います。効力としては変異してから半日程度であれば変異は治まり元の姿に戻ります。更に、『チカラ』への抵抗力が上昇したことを確認出来ました。ですが、数日たっていると治療どころか変異値の歯止めすら効きませんでした。そして、『チカラ』への抵抗力の上昇も確認できました」
コレウスは報告を聞き終わると、パソコンにコードを入力し作れるだけの薬品作成した。完成した薬品の本数は4本。1本はコレウスが持ち、残りの3本をケースに入れ、クロードに渡した。
「俺はとあるやつを守るために1本必要だ。あとの分は全部お前らに渡す。うまく使え」
コレウスは薬品をケースに仕舞い、パソコンを閉じると研究室を出ていった。それに続くようにケールとリンドウも出ていった。
研究室に残された3人はワルデンから貰った地図を確認した。
「この先が研究施設だ。何があるかわからねぇ。装備の確認をしてから行こう」
ジョーイの提案にクロードたちは頷き、手持ちの装備を机の上に広げた。装備の確認をしていると、自分たちが入ってきた扉に何かがぶつかる音がし、クロードはハンドガンを構えるとそっと扉を開けた。
そこには誰もいなかったが、不自然に真新しい血溜まりが残っていた。クロードは扉を閉めようとしたが、血溜まりの中に何か光るものを見つけ手を伸ばした。血塗れのそれを研究室内にあった布で拭き取るとクロードは驚きのあまり、それを机に取り落としてしまった。
「これって……」
クロードの手から落ちたものは、情報屋のワルデンの右耳にいつも引っ掛けられていた通信機だった。それにはヒビが入り半壊しており危険な状況だったのを直ぐに察することが出来た。
「ワルデンに何かあったんだ。ついさっき」
カッシアは通信機を手に取るとそれを調べ始めた。
「これは落とした時にできたヒビじゃない……な。なにか強い衝撃によるものだ。恐らくさっきの音が……原因だろう」
暫く3人が押し黙っていると、扉の外からなにか金属を引き摺るような音が少しずつ近づいてきた。それに合わせて不規則な足音も近づいてきた。
「まずい……装備を急いで片付けて身を隠せ」
クロードたちは持ち物を素早く纏めると大きめの棚の影に身を潜めた。少しして扉が開き、ひとつの人影が入ってきた。その正体はワルデンだった。彼の姿は、少し前とは全く違っておりミリタリーベストは血に濡れ、髪も血でところどころ赤く染っていた。クロードは助けようとも思ったものの、状況がただ事ではないと思い、その場で待機することにした。
ワルデンは左の脇腹を抑えつつ、入ってきた扉の方を向いた。閉じられていなかった扉の外には大鎌を引き摺っているバルトが立っていた。
「お兄さん、逃げちゃダメだよ。だって、あの人に怒られちゃうよ」
ワルデンは後退りしながら余裕が無いことを隠すために軽く笑って見せた。
「はっ、お前人の顔色伺うんだな。僕は絶対にあいつのところには行かない。絶対だ」
バルトはワルデンの答えにため息をつくと、大鎌を構えた。
「殺しちゃダメって言われてるんだけど、抵抗するから仕方ないよね」
そう口にしたバルトの目は狂気に満ちていた。ワルデンはバルトの様子が変わったのを見ると、血に濡れた手袋を外した。
「僕だって、ここは大人しく捕まる訳には行かないんだ……悪いけど、僕は逃げさせてもらう」
ワルデンはそう言うと指をパチン、と鳴らした。すると、バルトの目の前で空間が弾けた。しかし、それに対する反応速度がバルトの方が速く掠りもしなかった。バルトはワルデンの左横に来ると大鎌を振った。ワルデンはそれに反応が遅れ、受身を取ったもののクロードたちが隠れている棚とは反対側の壁に叩きつけられた。傷口にも大鎌の柄当たっていたため、体制の立て直しが思うようにできない。先程よりも開いた傷によりワルデンは崩れ落ちた床から立ち上がることを諦めた。
「殺すなら殺せば……いい。お前の『チカラ』がここまで厄介なのは誤算だった……」
ワルデンはそう言うと、ギリギリ保っていた意識を手放した。
バルトはワルデンの近くにしゃがみこむと、自分より小柄なワルデンを背負い、元来た道を引き返した。もちろん、大鎌を引き摺りながら……。
大鎌の擦れる音が聞こえなくなるとクロードたちは物陰から出た。
「あれが『チカラ』……勝ち目がない……」
クロードは小さく呟いたが、カッシアはため息混じりに口を開いた。
「クロード。バルトの『チカラ』はあの程度じゃ終わらない。1割も能力を出していないんじゃないか?俺の見た感想だ」
クロードは震える手を隠すためにぎゅっと銃を持つ手に力を入れた。
先程の光景にいつもは脳天気なジョーイまでも黙り込んでしまっていた。暫く3人はそのまま佇んでいたが、クロードが短く息を吐き出すと意を決したかのように顔を上げた。
「この程度でビビってられるかよ。行こう、カルダーノを助けに」
クロードの言葉に2人は頷いき、研究室を出ていき施設内部へと向かった。
研究室から人がいなくなってから数分。
クロードたちが出ていった扉を見つめるひとつの影があった。その影は研究室にある壁の中に姿を消した。
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