時の宝珠~どうしても死んだ娘に会いたい~

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7、覚悟

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ここは、人族の国チャオの首都マグナ 王宮の謁見の間である。
入り口から入ると、30m四方の部屋であるが、派手な装飾はなく、床は絨毯ではなく、
部屋を半分にした右側には、50cmの四角いタイルが敷き詰められており、
左側の真ん中には、直径10mほどの円形の台があり、まるで、そこで仕合をするかの
ような舞台であった。下張は石である。

右側の丁度、真ん中あたりには、がっしりとした椅子が1脚台座していた。
そこに、王冠は被らず、マントもつけず、剣を両手で目の前の床に立てて持っている、
アプスタッド王が鎮座していた。
その右側には、宰相マルーン、左側には、第1部隊隊長 バニスタが威風堂々と立っていた。

エルフ国王・クペランテと副国王・アミシャスは、
そのアプスタッド王の前で、片膝をつき、頭を下げていた。

宰相マルーンが、
「エルフ王クペランテ、アミシャス殿、両名とも頭を上げられよ」
そう言われて、両名は頭をあげ、
クペランテが、
「アプスタッド王、この度は、会談を受け入れてくださり有難うございます」
と言い、
「出来れば、エルフ国メディオクリスとチャオの同盟を結びたく、ここに参りました」

すると、アプスタッドは、
「クペランテよ、何か勘違いしておるな、同盟などは存在しない
そなた達は、我が配下に下るか、それが嫌なら、戦いしかない」
と力強く言った、更に

「ただし、我が条件を飲むならば、属国として、生き延びる道はあろう、マルーン」

マルーンは、
「クペランテ殿、条件は3つ 
1つ目・エルフの農作物生産量の半分を税として納めること
2つ目・姫 バルチャームをアプスタッドに側めとして差し出すこと 
3つ目 年間500名の労働力をチャオに差し出すこと 内訳は男女半分ずつ 」

「この3つの条件をのむならば、メディオクリスを属国として認めよう
返答は如何に?」

クペランテは、以前から、アプスタット王が、我が娘“バルチャーム”を狙っていた事は知っており、交渉の材料とは考えていた。
また、その苦渋の決断を娘に伝えては言たが、
半分だと・・エルフの生活が、立ち行かなくなるではないか、
更に、年間500名だと、我が国の1割を差し出せというのか・・

「マルーン殿、我が娘を差し出すのは、やむをえまい。それが、国民を守る王族の務めである。
だが、年間500名のエルフ国民を差し出せば、生産力はおちてしまう。とても。生産量の半分の税は提供できない、国民が困窮してしまう」

「エルフの国民がどうなろうと、我が国の関知することではないが、偉大なるアプスタット王は、
そなた達に、大いなる慈悲を与えると仰せだ」
マルーンはそう言い、更に、
「副国王 アンミシャス殿は、名に聞いた魔法の使い手と聞く、ここに控える第1部隊隊長 バニスタと仕合をして、勝利したならば、条件を付けず、属国としてだけ認めよう」
「王は、強い物(・・)が好きなのだ」
「我が国は、どちらでもよろしいが、返答は如何に?」

「それは・・・」
何か言いかけたクペランテを、右手で抑え、アミシャスは立ち上がり、一言、
「仕合を受けましょう」と言った。

「アミよ、ここでは(・・・・)、魔法は使えないぞ、」

「王よ、私は副国王、自分の力で、国民を助ける事が出来る機会があるのなら、挑戦しなければ、後悔すると思います」

「決意は固いのだな」

「宰相・マルーン殿、確かに、私が勝てば、条件は無いのだな」
「この仕合、受けて立ちましょう」

「それでは、両名、その丸い仕合場に入られよ」

エルフ国・副国王アミシャスとチャオ・第1部隊隊長 バニスタは、王座の横にある、
仕合場の両側に立った。

「両名、宜しいか?」
マルーンが訪ねると、

バニスタは、自分の身長以上ある件を抜き、頷いた。

アミシャスは、自分の愛剣を抜いたが、
細身の剣であり、長さもバリスタの剣の半分程であった。
「アマール神よ、我にご加護を」
そう言い、剣を構えた。

エルフの命運をかけた、仕合が始まろうとしていた。


チャオ西の砦は、騒然としていた。
北に偵察に出た3部隊(16番隊、13番隊、3番隊)が、
定刻になっても、帰還していなかった。
1人もである。

1番隊の隊員である、リーンは、帰って来ない僚友 ロクエイを心配しつつ、
ロクエイ、無事であればよいが、もし、彼が帰って来なければ、俺はユンと・・
俺は何を考えている・・ロクエイは、俺の大事な幼馴染・・しかし、居なくなれば、
俺はユンと・・

その時、物見の塔の見張りが、ドラを鳴らしながら叫んだ。
「北の方より、獣人の大群が向ってきます、その数、数万かと」


「各部隊長は集合せよ」
現時点で、砦に有る守備隊は、17隊。
17名の部隊長が集められた。

西の砦・守備隊長 ランスロットは、沈痛な面持で、皆に語りかける。
「あのような大群が押し寄せてきたことは、過去に一度もない」
「物見によると、多種多様な獣人たちが集っているようだ、誰かがまとめたのかもしれんな、
だが、問題はそこではない。現在、この砦の勢力は、17分隊の8500名だ。」
「敵の勢力は、およそ3万、人数で言えば、1対3だが、獣人1人が、人族10人に値すると言われているのを考えると・・しかし、食い止め無ければ、マグナまでの道のり、全ての集落は被害に遭ってしまうだろう」

「1番隊の騎兵100人は、マグナまで、この襲撃を伝えるのだ、途中の集落にも知らせる事」
「他の部隊は、全て打って出るぞ、皆、覚悟を決めろ」
「獣人たちは、全て檻の中に入れろ、いかに制限の腕輪があると言え、何が起こるか見当もつかん」

「しかし、それでは、戦力が落ちます」

と、1人の部隊長が言ったが、

「仕方あるまい、人族だけで戦うぞ」

「全ての部隊、騎兵は騎兵、歩兵は歩兵、魔術兵は魔術兵で集まれ、
真ん中に歩兵部隊、両側に騎兵部隊、歩兵の前に魔術部隊、魔術を放ったあと、
歩兵の後ろに移動すること、但し、私が命令するまで、魔術を放つな、騎兵も同様、
私の命をまて、また、伝令隊は直ぐに出発だ、急げ、時間との勝負だぞ」

ランスロットの号令の元、各部隊は速やかに行動を開始した。


俺こと、シュウは、今、エルフの皇女・バルチャームと親衛隊長・フォルティ、
それに、ルトとセレティスの5人で、人族の国チャオを目指している。
どうなるかは、分からないが、とにかく行って見ない事には、様子が分からない。
他のエルフ国民は、神聖な場所と言われている、森の最深部に避難している。
元・祭壇のあった場所だそうだ、今は、無くなっているらしいが。
クペランテ王、それに、アプスタット王と宰相のマルーンか
覚悟を決めろ、必ず、香織に会って見せる。

海人修ことシュウは、決意を更に固めた馬上の旅であった。
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